三十杯目
新潟ダンジョン第一層。
「…ここがダンジョン」
頑丈そうな扉を開けて中を進むと下は岩場で空気が少し湿り気を帯びていた。
「ようこそ初めてのダンジョンへ。
ここが第一層よ。
第一層から第十層まではこういう岩場の空間になっているわ」
「そうなんですね。
十一層からは変わるんですか?」
「ええ。十一から二十層は草原になっているわ」
おぉーそれは楽しみだダンジョンって外とは全然違う世界なんだな。
「話はそれくらいにしてさっさと特訓を始めるぞ」
「はい!師匠!」
「じゃあまずはお前に質問だ。
拳士にとっての天敵はどんなモンスターだ?」
天敵?どういうことだ?
拳士は手足で攻撃するのが基本だからリーチの長い大きいモンスターとかかな?
「自分より大きいモンスターでしょうか?」
「違う。確かにデカいモンスターはやりにくいがそうじゃない。
もっと根本的なことだ」
根本的……。
「…打撃が効かない相手ですか?」
「そうだ。いくら攻撃が届いても相手に効かないんじゃ倒しようがない。
なのでまずお前には相手に効かせる攻撃を覚えてもらう」
なるほど。確かにそもそも攻撃が効かせられなければどんな相手でも倒しようがない。
「わかりました!」
いきなりそんな奥義みたいなものを教えてもらえるなんて最高だ!
「そこでまずはスライムと戦ってもらう。
スライムを素手で倒せるようになるまでは次に教えることはない。
いいな?」
「スライムですか?」
「なんだ?
不満なのか?」
「いえ。スライムならすぐに倒せると思ったので…」
「そういうならさっさと倒してみろ。
倒せたら次に進む。
ほらちょうどそこに一体いるぞ」
師匠が指を指した方を見ると水色で少し透明感のあるプルプルとした体のスライムがいた。
「わかりました。
ではやってみます!」
初めてのモンスターとの戦闘に少し力が入る。
「ハァッ!」
ポヨンッ
「え?」
俺は力一杯スライムに拳を当てたがまるで水でできたクッションみたいに衝撃は吸収されスライムの体がポヨヨンと揺れるただけで倒せなかった。
「おい倒せていないぞ。
それで終わりか?」
「まだまだ!」
「ハァッ!」
「セイッ!」
・
・
・
ハァハァハァ。
拳だけでなく蹴りを入れたり連続で攻撃してみたりしたがスライムの体はずっとポヨヨンとして結局倒せなかった。
油断すると体にまとわりつこうとしてくるしかなり体力を消費する。
「…師匠どうすればスライムを倒せるのでしょうか?」
「弥彦君本来スライムは打撃で倒すモンスターではないのよ。
ナイフでもないと倒すのは至難の業よ」
柊さんが衝撃の事実を教えてくれた。
「え、でも師匠は素手で倒せと…」
「そりゃあこれは特訓だからな。
ナイフを使えばスライムを倒すなんて誰でもできる。
スライムと戦ってみてお前はどう感じた?」
「…蹴っても殴ってもスライムにダメージが入っている感じがありませんでした」
「それはお前の攻撃が表面にしかダメージを与えていない証拠だ。
本当の打撃っていうのは相手の内部にもダメージを与える。
つまり…」
師匠がスライム近づいていく。
スッ
師匠が人差し指をスライム当てた瞬間。
パァーン!
「こうだ」
スライムが弾け飛んで飛散した。
いや全然わかんない…
なんで蹴っても殴ってもポヨヨンとしていたスライムが人差し指をつけた瞬間弾け飛んでるの?
「これができるようになるまで次には進まないからまぁ頑張ってくれ」
師匠は半笑いしながら俺に言ってきた。
スライムなんかと思っていたが俺はそれ以下ということだった。
俺は本当にできるようになるのだろうか…。
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