「分かっているのが当たり前」が一番キツい
新月の夜樺くんも書きたいけど、同級生との絡みも書きたい…
なぜ新月を明日に設定してしまったんだ私…
まあいいや、先生と友達との関係を深める時間だと思えば。うん。
暫くすると、菅原先生と…………
………あと……………誰だっけ、ピンク髪の人…
「あ、あきちゃんとシャナーさんだ。」
そう、シャナーさん。シャナーさんが扉を開けて戻ってきた。
菅原先生は扉をくぐって横にはけた後、シャナーさんが教壇に上り…
「どうも~、さっきはお騒がせしたね!私はシャナー·バガン。シャナーが名前でバガンがファミリーネーム!今日からこの学校で働く先生だよ!シャナー先生でもバガン先生でもいいよ~」
…自己紹介をした。
なんとなく察してはいたが、先生になるらしい。
静まり返った教室で、バガン先生はピースサインを目元でウィンクと共にきめながら、「これからよろしく!」と言い放った。
「それじゃ!私は他のクラスにも挨拶しに行くから、またね~!」
バガン先生が菅原先生の横を通り過ぎ、扉から教室を出ていった。
「…というわけで、シャナー…先生は、今日から皆の先生になるから、よろしくやってくれ。それじゃ、今日は先生あんまこの教室来れないけど、静かに自習してろよ。」
扉の近くに立っている菅原先生が付け足すようにそう言った後、バガン先生の後を追うように教室を出ていった。
…嵐が去ったように静かになった教室は、数秒後にはヒソヒソ声から普通の話し声になるまで、時間はかからなかった。
数分後、隣のクラスへの自己紹介が終わったのだろう。扉の開閉音が廊下から聞こえてきた後、隣の教室からもざわつく声が聞こえてきた。
「…秋雨先生の同級生でチンピラで、クソダサ赤ジャージ着てピースにウインク…おまけに一人称【私】だと…?」
静かにぶつぶつと飯嶋さんが呟きながら涎を垂らしているのを見て、心の中で合掌した。きっとこの先、様々な(主に飯嶋さんからのセクハラによる)苦難が待ち受けているだろうバガン先生に向かって。
自習しようと席について、うっかりうたた寝をしていれば、あっという間に二限目は終わっていたらしい。…寝過ぎた。
「ほら明くん。二限目終わったよ、もう帰ろ。」
黒板には、時程と一緒に「今日は二限目終わったら即帰宅!帰りの会無し!」と書いてあった。
つまり今日は凄く早く帰れる…!
「…試験会場行かなかったの、どう説明したらいいと思う?」
荷物を鞄に詰めながら、無言で待たせるのも申し訳ないので、雑談代わりにそう言った。
「……正直に言うしか…」
「だよねぇ…」
「…あのさ」
それまで黙っていた菅原くんが切り出してきた。
……声音からしてお説教とか正論ぶつけられる気がする。
「そもそも試験会場にちゃんと行けばよかった話だよね?忘れるって何?大事な事だよね?カレンダーにメモしておかなかったわけ?」
ミスった。
「玲帑く…」
「どう説明したらいいって何?誠心誠意謝るべきだよね?そういう事は言い訳せずに全部言うってさ、基本だよね?分かるでしょ?」
言うんじゃなかった
「玲ど…」
「大体さ、自習時間に寝る時点で誠意とか反省の欠片も見られないんだけど。先生いないけど授業中だったんだよ?異界学園入っても入らなくても座学はあるし、教科書とかワークとか開いて勉強するべきだったよね?」
喋るんじゃなかった
「れ」
「記憶力無いならそれ相応の対策が必要だったよね?影の使うルール覚える時とか今だって、自分では考えずに直中くんに丸投げじゃん。自分でちょっとは考えないの?」
一緒にいること自体が、間違いだったのかも
「玲帑くん!一旦ストップ!!」
「直中くんも直中くんだよ。夜樺くん甘やかしてばっかじゃん。」
菅原くんが、荷物を背負って扉を開け、そのまま出ていってしまった。
慌てて原石くんも、続くように教室から出ていく。
いつの間にか、教室に人はいなくなっていて、僕だけが一人残っていた。
「…おはなしするんじゃなかった…」
なんだか今日は、とても情緒が不安定な気がする。
Noside
直中は玲帑を追いかけながら、先程の続きをしていた。玲帑は合わせる気がないのか、スタスタと長い足で先に先にと進んでしまうので、直中は思わず走る羽目になった。
「それは今関係ないだろ!話題ズレてんだよ、どう親に説明切り出すか聞いて来ただけなのにあんな言い返し方しなくても…!」
「だけって…そもそも言って謝るだけなのにやり方聞いてくる方がおかしいんだけど。中学三年生にもなって分かんないわけ無くない?」
「分かるって決めつけてやんなよ!分かんないかもしんないだろ!?」
「中学三年生にもなってそれなら、救いようないな。」
「~っなんだよその言い方!」
息を荒げながら、直中は玲帑の後頭部を平手で打った。
「った!?だってそうだろ!14歳とか15歳になってまで何小学生みたいなこと聞いてきてんだよアイツは!何でお前はそこでキレてんだよ!?」
玲帑はさすがに少し痛かったので、立ち止まって、直中の手首を掴んで荒ぶる直中の右腕を封じ込めた。
「明くんの話もちょっとは聞いてやれって言ってるんだよ!」
玲帑は夜樺が「どうやって説明するか」を聞いてきたから答えたのだ。話を聞いて、答えてあげただけなのに、なぜキレられなければならないのか、それも夜樺ではなく、全く関係ない直中からキレられているというのが納得いかなかった。
「喋られたから返しただけだろ!?」
「分かってて当たり前、みたいな態度取る前に、相手に寄り添えって言ってんだよ!相手の境遇を聞くとか、何で知らないかとか、わざわざ【分かるでしょ】とか言わずに教えてあげるとか、いっぱいあるじゃん!」
対して直中は、玲帑が相手をわざわざ傷つけるような物言いをしたからキレている。私情を少し挟むなら、過去に救ってくれた恩人かもしれない夜樺が、あんな顔をしていたからこそ、口を挟まざるを得なかった。
「そうやって精神ダメージ少ない方を選択してきたから、何も印象に残ってないんだろ!?ちょっとは頭捻れよ!」
玲帑は玲帑で、傷つける物言いにも意図があったらしい。
「はぁ!?」
意図せず傷つけたのではなく、ハッキリ自覚した上で傷つけたのだと知った直中は、掴まれていない左手で玲帑の首目掛けて手刀を振りかざす。
玲帑はその前に、首の横を右手でガードして、直中の左手を防ぎ、すぐさま直中の左腕を掴む。体格は玲帑の方が圧倒的に上だ、あまりに直中には部が悪い。
玲帑も頭に血が上っているのか、二人の言い争いは、次第に暴力を伴うものとなっていき…
「お二人さん、何やってんの?」
教室の施錠に来た秋雨が二人に話しかけるまで喧嘩沙汰は続いた。
「…なるほどねぇ…」
数分後、秋雨はなんとか言い争うのを止めない二人からことのあらましを聞き出し、にっこりと笑った。
「でもそれ、どっちにせよ暴力はダメだよ、直中くん?」
「…はい」
その件に関しては申し開きのしようもないので、直中はバツが悪そうに俯いた。
「ほらみろ」
「うっせぇな…!」
「ほらほら、玲帑も煽らない。直中くんも挑発に乗らない。」
また喧嘩しそうな二人を宥めながら、秋雨はどうやって解決しようか悩んだ。正しいことを教えたのは玲帑で、でもその正しさを教える過程で放った言葉遣いが人を傷つけかねないものなのは間違いない。
言葉とは凶器だ。時に精神疾患へ追い込み、時に自殺へ追い込む。
「…キツい言葉遣いだった自覚はあります…ですが、そうでもしないと覚えないじゃないですか、あの人は!」
「玲帑くん…悪者役を買って出てくれるのは嬉しいんだけど、同級生相手に、わざわざ嫌われる構造作らなくても良かったんじゃない?私に言ってくれれば、少なくともこういう暴力沙汰は免れたでしょ?」
「…ですが、それでは叔父上の仕事が増えてしまいます…」
「こうやって喧嘩宥める方がお仕事増えてるなー?」
ぐ、と言葉に詰まって玲帑は黙った。確かに、秋雨が言い争う生徒を放置する筈がない、どちらにせよ、喧嘩の仲裁という苦労役を買わせてしまっているというのは、冷静になってきた玲帑なら、すぐに分かったからだ。
「とにかく、直中くんは玲帑に謝ること。」
「…玲帑くん、殴ったりして…ごめん…」
直中は、意外にもあっさりと折れた。暴力はダメだったということは、さすがに自覚があったらしい。
「……うん…」
玲帑も、冷静になれば直中には大して怒っていなかったのか、あっさりと許した。
玲帑の右腕には、ガードした時にできた痣が、直中の両腕には、玲帑が強く掴んでいた時にできた痣がついていた。
互いが互いに傷つけたという負い目から出た、潔さだった。
中途半端な所で区切っちゃった…次回は夜樺くん仲直りできるのか…!?




