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海風の声40




 さて、次はジェイクか。ワーグは予想以上の結果を見せてくれた。兄として、恥ずかしい所は見せられねえぞ。


「どう動くと思う?」

「突撃して指揮官狙いか、土嚢を利用して数を減らすか、どっちかっすね」

「ああ、ジェイクは近代戦も興味あったもんな」

「はいっす。ゲリラ戦は、イーハ軍の手本とするべきだって言ってたっす」

「それは見ものだな」


 イーハ軍は、五百に満たない少数の軍。だが、そのすべてが二神殿の印持ち。現在の夫婦三組六人の一小隊が五十も散ってゲリラ戦を挑めば、十倍の敵も相手に出来るかもしれない。


(ジェイクさん土嚢で階段作って上って、弓で斥候隊を撃破。魔法使いを最後にしてたから、誘ってるのかも)

「誘いか」

「多分そうっす。ペルデさんが策敵してるっすから、今のジェイク兄ははぐれ魔獣より厄介っす」

「土嚢で階段は魔獣じゃねえよな」

「魔人か跳躍力の凄い魔獣って事でいいっす」


 それでいいのか。まあ、手強くなければ訓練にならない。それなら好きにやってもらおう。


(斥候が三隊で固まって、盾を構えながら接近。わ、盾と盾の隙間を通して二人倒したよ)

「残り十六か。本隊と合流されたら面倒だな」

「今は八っすね。ジェイク兄、百を狙ってるかもしれないっす」

「百人斬りかよ。遠距離武器が弓だけでやれんのかなあ」

「ジェイク兄、土嚢で陣地とか作ってそうっす」

「それもう対魔獣訓練じゃなくて、対ゲリラ訓練だろ。止めっか?」

(土嚢を利用して背後に回った。仕掛けるみたい)

「これはこれで、いい訓練っす。止めるのはもったいないっす」

「マレーヌ陸軍の魔法使いは、索敵しねえのか?」

「レベルが違うんじゃないっすか。汚れ取りの魔法すら、サクラ様に教えてもらったくらいっすから」


 そういえばそうだった。なら、マレーヌ陸軍の魔法使いは、火力担当なんだな。良い事を聞いた。


(背後から強襲。二人、わっ。止まらない。三小隊が半壊。いえ、まだやるみたい。残り五、三、一、全滅。凄いねえ)

「さすがにやるな、次男」

「ジェイク兄は、兄様の次に強いっす!」

「やる前から負けを認めんのか?」

「はいっす!」


 即答かよ。ホント、仲良いなあ。


(陣地から六十が出撃)

「中隊を出すか。たった一人に」

「ニーグ兄貴の美点はそこっす。臆病と言われても相手が強ければ、何倍だって兵を出すっす」


 それは悪くない。いや、マレーヌ軍としてはそれでいいのか。ニーグさんって人がマレーヌを守り、イーハ軍との共同作戦にはローグ艦長を派遣する。それが理想かも知れない。


「ニーグさんって大将が常にマレーヌを守り、イーハ軍に援軍を出すならローグ艦長が兵を率いる。それでどうだ?」

「いいっすね。勇敢さだけでも、頭が良いだけでも、マレーヌ軍はイーハ軍の足を引っ張るっす。ローグ兄貴だけなら、だいぶマシっす」

「相変わらず、マレーヌ人には評価が辛いな」

「故郷っすから。いい所も、悪い所も知ってるっす」


 その故郷を、ワーグは離れる決心をした。させたのが俺だとは言わない。だが、出会えて良かったと思ってもらっている自信はある。なら、共に行くだけだ。


「な、なんっすか兄様。子供じゃないっすよ!?」


 無意識に、頭を撫でてしまったらしい。自分でちょっと驚いたが、そのまま乱暴に撫で回す。


「もー。耳はダメっすよ?」

「そう言うのは嫁だけにしとけっての。キモいぞ」

「にゃは。六十が相手で、ジェイク兄はどうするっすかねえ」

「そろそろ接敵だろ。俺なら狭い通路を作って誘い込むがなあ」

「ワクワクっすね」

(姿を晒した。六十が離れずに追ってる)


 誘いか。どうやって散らすつもりなんだ。


「はじまったっすね」

「ああ。お手並み拝見といこう」

(うわ。迷路に誘い込んだ。マレーヌ陸軍は相談中)

「完璧にゲリラ戦じゃねえか。エグい罠とか仕掛けてねえだろうな」

「やりそうっすねえ。ま、死ななきゃ大丈夫っす」


 いや、はぐれ魔獣に発見されたらどうなるのかって訓練だぞ、これ。罠とか発想すらねえだろ、マレーヌ陸軍。


(そのまま六十で進むみたい。わあっ。これは楽しそう。広場まで、三、二、一、ドーン!)

「何しやがったんだ、ジェイク・・・」

「え。広場に入った途端、軽い木の枠が落ちてきたらしいっす。半数が戦闘不能判定らしいっすよ」

(罠で二十八人が戦闘不能。斬り込んでは逃げてを繰り返してる。残りは十人)

「ノリノリでゲリラ戦とか、何やってんだか」

(追いかけた十人の先頭が、ドアみたいな木枠に激突。三人が戦闘不能。おお、土嚢の壁から飛び降りて急襲。もう終わり。六十人、食べちゃった)

「最後までゲリラ戦をやらかすんじゃねえだろうなあ」

「試してみたかっただけだと思うっす。罠を作る練習はしても、使った事はないっすから」


 ならいいが。顔に泥とか塗ってたら笑ってやる。盛大にだ。


(おお。最後は魔獣らしく、斬り込んで死ぬって。男だねえ。ペルデさんから念話で、練習してごめんなさいだって。気にしないでって言っといたよ)


 いや、気にしなきゃダメだろ。



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