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海風の声29




 久しぶりの調達。誰の目も輝いている。町で書類仕事をする方がいいとは、エルスさんでさえ思っていないらしい。それでいいのか、文官。

 マレーヌから直接門を出て、車に乗りながら群れを狩る。


「やはり外は良いのう。この頃では、街に暮らすと息が詰まるのじゃ」

「海もいいが、陸もいいよなあ」

「うむ。悩みが地平線まで飛んで行くようじゃ」


 アイエスさんが残した天秤の事も、悪しき神の欠片とやらの意味も数も、何一つわかってはいない。わかっているのは、一刻も早くマレーヌとイーハの協力体制を整え、天秤神の国に赴かなければいけないという事だけだ。

 千年前の謎に迫るため、千年前の悲劇を繰り返さぬため、神子の連携は重要になるはずだと意見は一致している。


「羊の群れ発見、狩るよ?」

「おう。好きにやれ。ただ、草食なら狩り尽くすなよ。半分は残せ」

「了解。ほっ」

「サクラが結界展開、1頭を両断。・・・食べませんね。草食と判断します。半数を解放」


 痛みが残るうちは戦闘を禁止と言われている。ジェイクとワーグも俺が出ないので戦闘禁止だ。屋根の隅に座って、煙草を吸いながら茶飲み話くらいしかする事がない。


「あれほどの群れならば、だいぶ各家庭に配給されますね」

「みんな喜ぶっす」

「おお。エルスさんも魔法で倒せるんだな。こないだイーハ行った時、印持ちになったんか」

「なってないっすよ?」

「そうなんか。魔獣を倒せんなら印持ちじゃねえんかな」

「ワシ達も不思議でのう。神に聞いたが、答えてくれんかったのじゃ」

「エルスはエルスっす。おいらは気にしてないっす」

「だな。ウイト、お菓子を食い過ぎると昼ごはん食べらんねえぞ?」

「あーい」


 今夜はジンギスカンにするとして、昼メシはどうするか。


「昼メシどうする?」

「にくっ!」

「晩ゴハンは羊の焼き肉だから、昼は重くねえもんにしようぜ、ウイト」

「ならワシが魚介スープでも作るかのう。あれはパンに良く合うのじゃ」

「フウリのメシか。マレーヌ風もたまにはいいな。じゃあ頼む」

「了解じゃ。ウイト、ねえたんのお手伝いをしてくれるかのう?」

「あいっ」


 ウイトをだっこしてリビングに下りるフウリを見送り、男三人で煙管を使う。


「夕方にはマレーヌに戻るとして、明日はなんかあったっけか?」

「会議もありませんし、陸軍演習は明後日からです。休日ですかね」

「また猿みてえな休日か。そういえば、嫁さん達が酔っ払った日あっただろ。あの時は上手くいったんか?」

「・・・翌朝に変態と罵られましたよ」

「うちもっす。しばらくキスもさせてくれなかったっす・・・」

「ぶはは。自分でした、いやさせた事だ。誰にも文句言えねえよな」


 二人が何かを考えているようだ。おいワーグ、顔が緩んできたぞ。


「ま、まあそうですね」

「だいたいお前ら、たまには嫁さんにプレゼントとかしてんのか?」

「いや、某はまったく」

「おいらもしてないっすねえ」

「花の一輪でも、安いアクセサリーでも服でもいい。たまにはプレゼントくらいしてやれ。そしたらご褒美に、またしてくれっかもしんねえぞ」

「兄上はそうしてるんですか?」

「ああ。たまに順番に二人っきりで外食すんだがな、そん時に渡したり買ったりするぞ」

「二人で外食なんて、結婚してから一回もないかもっす・・・」

「おめえなあ、エルスさんが優しいからって甘えてばっかだと、愛想を尽かされんぞ」

「ジェイク兄はしてるっすか?」

「いや、うちもしていないな・・・」

「バカどもが。明日、おしゃれして買い物行って嫁の好きなもん買ってやって、とびきりの店でメシ食ってこい。小遣いねえならやるぞ?」

「いえいえ。馬以外は買い物もしてないので金はあります。そうですね、たまにはペルデに贅沢をさせてやりたいと思います」

「おいらもそうするっす」

「そうしろそうしろ。ガス抜きは大事だ」


 屋根は狭いので、嫁さん連中にも話は聞こえていたらしい。ペルデさんをファルが、エルスさんをサクラがからかって笑っている。

 俺はこっちの文字でも習うかな。ウイトと一緒なら、楽しく勉強できるだろ。


「では、フウリ様と料理を交代してきます。車を動かしてもらわないと」

「そうだね。お願い、エルス」


 エルスさんがリビングに下りて、フウリが上がってくる。


「フウリ、羊を回収しながら西に向かってもらえる?」

「それはいいが、なんであのようにエルスの機嫌が良くなっておるのじゃ。鼻歌なんぞ歌っておったぞ」

「明日はワーグっちと、おめかししてデートなんだって。ペルデさんも」

「ほう、感心じゃな。二人は寝室でしか嫁を喜ばせておらぬじゃろう。たまにはカイトを見習って、外でも女として嫁を扱う事じゃ」


 バツが悪そうに二人が頭を下げる。そんな仕草も似てきたな、お前さん達。


「もう少しで昼食じゃ。それまでに羊の回収を終わらせようかのう」

「そうね。ご飯を食べてもう一つ群れを片付けたら、マレーヌに向かいましょ。夕方には家につきたいわ。ジンギスカンだもの」

「それは美味いのかのう?」

「食べても太りにくい、それがジンギスカンよ!」

「夢の食べ物なのじゃー!」



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