表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/229

海風の声22




「よーし。探査雷撃魔法・改、いっきまーす」

「おう。遠慮なくやれ」

「たあっ!」


 石と木材を上手く組み合わせた異国風の元商館に、サクラの魔法が放たれる。


「ところでファル、改ってなにをイジったんだ?」

「魔法を波状にして、探査、殺傷、収納、清掃、滅菌と五段階の手順を一回の魔法で済ませられるようにしました。魔力の消費が激しいので、サクラと私にしか使えませんね」

「さらに俺達の仕事が減るなあ。お、もう終わったのか、サクラ?」

「完璧。このまま北斗号の乗員の宿舎に使えるよ」

「二十五も部屋数あるんか?」

「五十以上あるよ。ここから見るとオシャレな洋館だけど、高い場所から見たら学校っぽいもの」

「まずは拠点確保、か。倉庫もはじめよう。結界も張ったんだろ?」

「はい。城壁内にはまだまだ魔獣が残ってますので、建物ごとに結界を張ります」

「面倒だろうが、よろしく頼む。フウリ、車を倉庫街へ。一棟ずつ片付けよう」

「任せるのじゃ。ウイト、しっかり掴まっておるのじゃぞ。全速前進!」


 車が動き出す。マレーヌの西に出かけた頃より、明らかに速いスピードだ。

 冥護が強まっているのかどうか、魔法神も鍛冶神も答えなかったらしい。わからない事ばかりの状況にも慣れた。それが良い事なのかすら、わからないままだ。

 車が止まると、屋根の上からサクラとファルの魔法が飛ぶ。しっかりと区分けされた倉庫街で助かった。左右の倉庫を片付けながら、本人達はおしゃべりを楽しんでいる。


「兄上、煙草でもどうですか?」

「おお、貰うよ。ありがとな。ジェイクもたまには辛いの吸いな。ほら、ワーグも」

「ありがたくいただきます」

「いただきますっす」


 ジェイクの軽めの煙草が詰まった小さな革袋を受け取り、イーハで一番辛い俺の煙草を渡す。


「むう。辛くて濃い。やはりうまいですね。肺に悪くないなら、某もこれにするのに」

「辛いー! 大人の味っす」

「軽めのもうまいさ。はっきりと葉の旨味が感じられる」

「町中では出番はなさそうですね」

「どうだろうな。緑の少ない小さな島だ。あの岩山に暮らすより、屋内のが居心地がいいなら出番はあるさ。それより、問題は階段だろ」


 拳状の島のほとんどが、結構な標高の岩山だ。活火山でないのは神が保証してくれたが、あの岩山をぐるりと回りながら登る階段の事を考えると今から憂鬱になる。


「ウイト坊も連れて行くのですか?」

「階段削る覚悟で、車で行くのも考えたんだけどな。うちの三人が交代でだっこして登るらしい。徒歩だから、泊まりになるかもな」

「山頂には神殿があるらしいっすから、巡礼の旅っすね。昔話の主人公みたいっす」

「アルテュル山に登る証騎士の話か」

「ジェイク兄、アルテュル山の神殿に巡礼するのは証戦士グラムっす」

「いやいや、証騎士セデルだろう。魔法神殿の大神官様が、某が子供の頃に話して聞かせてくれたぞ」

「ないっす。武神殿一の証戦士でありながら、民のために魔獣を屠る旅に出た英雄グラムっす」


 よくわからんが、伝説上の人物はここで生まれた、いいえこっちで生まれたんです、的なくだらない話のような気がする。


「地域によって、昔話は微妙に違うもんだぞ。地球でもそうだったからな。それより、昼メシは餃子でも焼くか?」

「大賛成っす!」

「いいですねえ。前はツマミにしましたが、あれは麦飯にも合うでしょう」

「ぱぁぱ。ぎょーじゃ。ういとくうー!」


 ちょっと離れた場所で、エルスさんにだっこされているウイトまではしゃぎだした。相変わらず、メシの事になると敏感だな。


「おおっ。ついに新しく作った、餃子用フライパンの出番なのじゃ。一度に二百は焼けるぞ!」


 なに作ってんの鍛冶神の神子。ありがてえけど。


「私、お酢が多めの辛子醤油でー」

「邪道ですよ、サクラ。ラー油に土下座して謝りなさい」

「ああっ、あのパリっとした皮とあふれる肉汁がまた味わえる。自分は幸せですっ」

「美味しかったですよねー。うふふ。いっぱい焼いちゃいます」


 なんでこんなに好評なんだ、餃子。


「日本人としては、なんか悔しいな」

「いやいや。和食の普及率もの凄いからこの世界。それに、おかずにするのが日本の餃子で、主食の代わりにするのが本場の餃子でしょ」

「ああ、そういえばそうだったな。米と香辛料、それさえあれば天下を取れるのにな、和食」

「カレーかあ・・・」

「カツカレー、食いたすぎて辛い・・・」

「サクラもカイト様も、ないものねだりはいけませんよ」

「ファルはなんか食いてえもんねえのか?」

「わ、私は・・・」

「言っちゃいなよ。カイトなら作れるかもしんないよ?」


 たじろぐファルをサクラが揺さぶる。てか、俺が作るんかよ。


「・・・グラタンが恋しいです」

「なんだ。んじゃ、晩メシにポテトグラタン大皿で追加すんぞ」

「えっ・・・」


 なんだなんだ。なんで絶句してんのお前さん。


「グ、グラタンのソースはカレーのルーやシチューの素のような、スーパーで売っている製品ではないのですか!?」

「ちげえよ。バターで小麦粉を炒めて、ちょっとずつ牛乳で溶くんだよ。マカロニは手作りだと時間かかるから、マレーヌ帰ってからな。今日はポテトグラタンで我慢しろ」

「ああ、ああっ。ファルは幸せです!」


 日本を知っているだけの、ファルならではの勘違いか。食事は神様パワーで食べたい時に食べたい物が出せたらしいから、それも仕方ないのかもしれない。

 夕食が待ちきれないのか、倉庫と倉庫の間を進むスピードが上がった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ