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魔力ゼロで追放された書記官、実は世界最高の諜報員でした 〜ゴミ箱の機密を拾うだけで、俺を捨てた王国が戦わずして自滅する件〜  作者: 桜庭ユウト


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第22話:勝負は、剣を抜く前に決まっていた

燃え上がる帝国情報省の屋上。

 逃走用の魔導飛空艇を背に、一人の男が立ち尽くしていた。

 帝国情報省長官——そして、隣国のスパイ『フェンリル』。


「……ここまで来るとはな。資料室のネズミめ」


 フェンリルが右手をかざす。その指先には、一撃で城門を消し飛ばす『特級殲滅魔法』の術式が展開されていた。

 対する俺——アルスは、魔法も武器も持たず、ただ一通の「報告書」を手に、ゆっくりと彼へ歩み寄った。


(観測:右手の術式、魔力収束率は98%。……だが、彼の左の眉が微かに震えている。……恐怖ではない。……『後悔』の兆候だ)


「撃てばいい、フェンリル。……君がその魔法を放った瞬間に、隣国ゾルダンの聖域にある『救貧院』の地下が爆破されるようにセットしてある」


 フェンリルの動きが、凍りついたように止まった。

 

「……何を、言っている」


「君が情報省のトップにまで上り詰め、私欲を貪る悪役を演じてきた理由。……すべては、魔力を持たず『欠陥品』として廃棄された、君のたった一人の娘を守るためだったな」


 俺は報告書の一枚を、風に乗せて彼の手元へ飛ばした。

 そこには、帝国が「処分」したはずの少女が、シオンの手によって安全な場所へ移送されている写真(魔写機による記録)が写っていた。


「……彼女は今、俺のエージェントが保護している。……君が魔法を放てば、彼女を支える魔導生命維持装置が停止する。……君が守りたかった唯一の『真実』を、君自身の手で殺すことになるぞ」


「……貴様……貴様あああッ!!」


 フェンリルが咆哮し、膝をついた。

 その指先から、魔力が霧散していく。

 どれほどの魔法の才能があろうと、心の「急所」を握られれば、人間はただの無力な生き物に過ぎない。


「君は、世界を観測しているつもりだった。……だが、君自身が俺の資料室フォルダの一部に過ぎなかったんだ」


 俺は動けなくなったフェンリルの横を通り過ぎ、飛空艇のハッチを開けた。

 そこには、彼が持ち出そうとしていた帝国の「全金庫のマスターキー」と「軍事暗号の原本」が詰まっている。


「……さようなら、フェンリル。……君の娘は、俺が責任を持って『有能な工作員』に育て上げるとしよう。……君のような、悲しい嘘をつかなくていい世界でな」


 俺はハッチを閉め、背後で泣き崩れる「かつての英雄」を置き去りにした。


 勝負は、剣を抜く前に決まっていた。

 

 燃える帝都の夜景を眼下に見下ろしながら、俺は次の、そして最後の仕事を始める。

 世界から「戦争」という名の無駄なゴミを片付けるための、最終工作を。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。桜庭ユウトです。


最強の敵を、剣一本触れずに「絶望」で制圧する。

スパイアクションの極地、いかがでしたでしょうか。

自分の守りたかったものが、自分を縛る鎖に変わる……。

これこそが、アルスが仕掛けた最も残酷で、最も効率的な「ざまぁ」です。


さて、物語はいよいよ最終話へ。

帝国が滅び、王国が変わり、世界が「情報の王」によって統治されるエピローグ。

無能な書記官が辿り着く、最後の景色をどうぞ見届けてください。


「フェンリルの折れ方が最高にゾクゾクした!」

「アルスの非情さが最後まで徹底してていい!」

そう思っていたいただけましたら、ぜひ最後の評価、ブクマをお願いします。

皆さんの「観測」のおかげで、この物語は完結まで辿り着けました。


最終話、ようこそ、情報の地獄へ(完結編)をお楽しみに。

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