サポーター
魔弾は倉庫内に用意してあった火炎瓶をかき集め、急いで坂を下った。
仁とザロは掘ってある穴に誤って落ちないよう、坂を下りきった砂浜に陣取っている。
二人に合流した魔弾は、ふと口にする。
「海ってさ、火炎瓶どうなんだろうね?」
仁は少し考えて、返答する。
「俺の予想だと、ほんの一瞬だけ着火してすぐ消える…中身がガソリンだったとしても海じゃ厳しいと思う。」
「マジかー…じゃあ、“奴”が浜に上がってきてもしばらく使えないのか…。」
魔弾がガッカリした様子で用意した火炎瓶を地面に置いた。
「ザロ、“奴”ってまださっきの位置にいる?暗すぎて俺には全然見えないわ。」
魔弾の問いに、ザロは真っ暗な海を睨みながら答える。
「うん、いる。でも近づいてくる訳じゃないし、何がしたいんだろ?なんか投げてみる?」
「ナイフならあるよ!毒塗ってあるから気をつけてね。」
仁が腰袋に入れてあるナイフをザロに渡すのを見て、魔弾が心配そうに言った。
「待って。投げる前に、ゴウとシトに確認したほうが良くないか?二人には作戦があるのかもしれないし。」
ーーあくまでも俺達はサポート…メインの二人の邪魔になったらまずい。
「そうだね!俺確認してから投げるよ!当たるか分かんないけど!」
そう言ってナイフを片手に、ザロはゴウの元へ駆けて行った。
“奴”を視認できない二人は、すぐに防御態勢に移れるように盾を手に持ち警戒した。
「流石に浜に上がって来るまで、俺達は見てるしかできないよねー。」
仁はこの状況に退屈しているような素振りを見せた。
「暗くて見えないしな。そもそも俺達はサポートだし、あんまり近づいて邪魔になるのもなんだし、火炎瓶使えないのはマジで痛い。」
「あれ?ザロ戻ってくるよ…。なん」
仁が何か言いかけた時だった、波の音を一瞬でかき消す程の大きな咆哮が浜に響いた。
それと同時にザロが物凄い速さで、魔弾と仁の元へ戻ってきた。
「倉庫の近くまで下がれだって!」
息を切らしながらザロが二人に伝える。
「分かった、行こう!」
魔弾と仁はなんの迷いも無く倉庫まで戻ろうとしたが、ザロはその場から動かなかった。
ザロを心配する二人は、仕方なく少し離れた坂の上から様子を見る事にした。
二度目の咆哮が浜に響き、砂浜にいるゴウとシトがすぐに動く。
ザロの目には何が起きているのか見えているのか、武器と盾を構え少しずつ後ろへ退がった。
ーーえ?マジで何が起きてるの?ヤバイ感じなの?せめて実況してくれよ…何も見えないからこえーよ…。
「来る!」
ザロの一言と同時に、“奴”は突然、暗い海から砂浜へ飛び出してきた。
ようやく視認できるようになった二人は、“奴”の顔を見て戸惑った。
「あの顔に刺さってるやつ、矢だよな?誰が射ったんだ?」
「弓使いいんのー?!テンション上がってきたー!」
姿が見える事で、二人の精神的な不安はかなり軽減されたようだ。
砂浜では、“奴”を挟み込むようにゴウとシトが陣取っている。
次の瞬間、シトに向かって威嚇をしていた“奴”は、首に矢が刺さり大きな咆哮を放った。
仁は矢の飛んできた方向から、すぐに倉庫から放たれたと気付き振り返る。
その間、魔弾は一度も視線を逸らす事なく“奴”と戦う駆除人たちを見ていた。
ゴウとシトは互いに完璧なヘイトコントロールで攻撃をし続けていた。
「外皮硬いのかな?ダメージはあまり入ってないような気がする。」
魔弾の一言に、仁が反応する。
「ゴウは火炎放射のやつ持って無いのかな?やっぱ外皮燃やさないと厳しいよね。」
「ゴウさん持ってるはず!確か、サキさんと二人で化け物の死体燃やしてた!」
そう言いながら、すでに魔弾はゴウに向かって走りだしていた。
魔弾は近づいてみて、改めて“奴”の大きさに恐怖する。
ーーおいおい…デカすぎないか?これじゃあロンギヌスでも急所届かないだろ…。
魔弾は一瞬怯むも、すぐに気を引き締めゴウに向かって叫んだ。
「ゴウさん!外皮燃やせませんか?前に化け物の死体燃やしたやつで!」
ゴウは腰袋に手を入れ、中身を漁り始めた。
視線が逸らせない為、なかなか見つけられないようだ。
「代わります!」
魔弾は自分でも信じられないくらい、自然にゴウと交代し攻撃を始めた。
ーー何やってんの俺!?ここしゃしゃるとこじゃねーよ?
そのまま順番に攻撃の手を休めず、交互に切りつける。
ーー真槍ロンギヌスでも結構厳しいな…もっと深く刺せないとな…。
怯えからか、魔弾は少し多く距離をとっていたため思い通りに攻撃することはできなかった。
そこへゴウが戻り、火炎放射をお見舞いした。
しかし、ゴウの放つそれはサキの放つものとは違い、随分と火力が低いようだ。
ーーマジかよ!?性能に差があるとか考えてもなかったわ…。
火力が低い上に燃やせる範囲も狭い為、ゴウへの負担は計り知れない。
「何回か燃やせばいいのか?クソ、濡れてたからか?!」
途中シトにも意図が伝わったのか、ゴウに背を向けさせようと執拗に攻撃を入れる。
ーーシトは本当にすごい奴なのかもしれん…爪全避けで未だ涼しい面構えって…。
シトの立ち回りに震えながら、魔弾も化け物への攻撃を緩めずに刺し続ける。
なるべくゴウの邪魔にならないように、尚且つシトへのヘイトが集中しないように魔弾もチクチクとロンギヌスを刺す。
10分程経ったあたりで、ようやく体毛の焦げる匂いが辺りに漂った。
ーーあと、少し!火傷レベルまでいったら速攻離脱しなきゃな!
まだかまだかと、魔弾の手にも力が入る。
その一撃は、体毛の薄くなった皮膚を軽々と突き破り、勢いよく刺さった。
“奴”の大きな咆哮が再び浜に響き渡る。




