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理想の落とし穴

ゴウが松明を等間隔で並べるなか、魔弾は紐を使って坂道の幅を測っていた。

仁は少し遅れて、魔弾に合流する。

「ダン、俺は何を手伝う?」

幅を測りながら、魔弾は“奴”の大きさを思い出そうとしていた。

「アイツどれぐらいデカかったかジンは覚えてる?正確な大きさが思い出せないんだよね。とにかくデカかったってレベルの認識。」

仁が思い出しながら話しだした。

「えーっと、俺が覚えてるのは…まず立ち上がった時ザロの頭が“奴”の前足の付け根より少し低かった。ロンギヌスを長めに持たないと届かないなって思ったんだよね。んで、四つん這いになった時高さは荷車より高かった。多分だけど奴の前足は車輪の直径より長いと思うよ。」

ーーそんなじっくり見てたの?!なにその余裕…。

「すごいな…俺なんて恐怖で頭の中真っ白だったよ…。」

魔弾は仁を素直に尊敬し、自身の不甲斐なさを口に出した。

「俺とザロは場所的に離れてたからね…ダンの位置でかち合ったら、多分俺も恐怖で動けないよ。」

仁は未だ恐怖心が拭い切れていない魔弾を気遣うように続けた。

「だから落とし穴は、完全に“奴”の動きを制御できるよう深めに掘ったほうがいいよね。ザロの身長の3倍くらい?」

「3倍か…さっき地面ちょっと掘って見たんだけどさ、結構硬いんだよね。だから出来上がったら、多少奴が暴れても大丈夫なような気はするけど…時間がかかりそうだな。」

「理想は後ろ足から落っこちてくれて、上から槍で攻撃できる感じがいいよね!でも四つん這いだとまぁ前足から落ちちゃうか…。」

魔弾も仁の意見に同意する。

「そうなんだよ、結局穴に落ちても額を狙えなきゃ意味ないし…。最悪登ってきそうだからなー…。」

仁も地面を触りながら、難しそうに考え込む。

「フィット感抜群で深めの落とし穴か…でもそうすると狭すぎて落ちる確率も下がる…うーん、難しいなー…。」

「しかもある程度穴同士の間隔がないと強度が保てないんだよな。だからピンポイントで踏み抜きそうなところに掘っておく…それぐらいしかできないかな。」

仁は立ち上がって魔弾を見て笑いかけた。

「まぁ、落ちてくれたら良いなくらいで考えとこ。とりあえず、穴の位置と大きさ決めて掘る準備といきますか!」

仁の明るい表情に、魔弾もつられて明るく返す。

「そうしますか!じゃあ、俺ちょっと広場で車輪の大きさ測ってくるよ。それ参考に大きさは決めよう。」

そう言って、魔弾は広場に向かって走って行った。

残された仁は、坂道の途中に三箇所落とし穴候補の場所を決めた。

しばらくすると、魔弾が穴掘り用の道具と大量のロープを持って戻り、二人はすぐ作業に取り掛かる事にした。

魔弾は1m程の長さに切られたロープの両端を足で踏み、輪っかの部分に木の棒を通してコンパスのように地面に円を描いた。

「これが車輪の大きさだった。こう見ると結構狭いよね…深く掘るのキツそう。」

仁も想像以上の狭さに苦笑いする。

「マジか…。この狭さだとある程度二人で掘って、その先は一人が掘ってもう一人が上から土を引き上げる…みたいな感じにするしかないね。あ、掘る場所決めてる?俺ちょっと下見しておいた!」

「すっごい助かる!」

魔弾の素早い反応に仁は喜びを隠せない。

「ゴウに聞いたら、坂道にも松明設置するって言ってたから、松明の場所も考慮して三箇所ね。あと土の硬さも確認済!」

ーーえっ?!あまりの有能さに嫉妬なんですけど!!

「じゃあすぐ作業に入れるって事?!めちゃくちゃ助かる!」

魔弾は嫉妬しつつも、要領の良い仁に素直に感謝した。

仁の候補地は坂道の浜寄り、中盤、キオの倉庫近くの三箇所でキオの倉庫近くは一番地面が硬い。

二人はまず、比較的地面の柔らかい浜寄りの場所に穴を掘る事にした。

予定どおり最初は二人で穴を掘り進めたため、日が暮れる頃には穴の深さは魔弾の腰くらいまで進んでいた。

松明があるとはいえ、薄暗い波止場は視界が悪く二人の恐怖心を煽った。

「そろそろ倉庫に戻ろうか?暗いと怪我とか危ないし。」

魔弾は仁の提案に即同意する。

「そうしよ!明るくないと作業は厳しいね!」

倉庫に戻る途中、坂の下を振り返ると先程掘った穴が良く見えた。

ーーすごいな。完成まで時間がかかる事を考慮して、あの場所なら夜間に間違って落ちないだろうって場所を選んでるのか。

「ジンてやっぱりすごいよね!頭の中見てみたいわー!」

突然褒められた仁は訳が分からず、困惑していた。

「いきなり褒められてびっくりなんだけど…なんの話??」

「段取りが良いって言うのかな、常に俺の行動を予測した上で動いてる感じ!なんかジンと一緒なら安心できるって思うレベル!」

「なにそれー!でもさ、なんか協力プレイしてるって感じですごい楽しんでる自分がいる。ぶっちゃけ楽しくない?」

「確かにちょっと楽しんでる!協力プレイ最高って感じだわ!」

二人が倉庫に戻ると、サキを除いた駆除人メンバーはすでに待機していた。

「衛兵と職人は問題ない。鐘の件も衛兵に伝えた。そっちはどうだ?」

二人が椅子に座ると同時にシトが話しかけてきた。

「今、一個目の穴を掘り始めたところ。あと二箇所掘りたいから四人くらい男手が欲しいかな。」

仁が答えると、ゴウが思い出したように伝える。

「そういえば、明日からキオのとこの働き手が手伝ってくれるって言ってたぞ。ダンを手伝うってよ。」

ーー港の人達来てくれるの?!待って…嬉しすぎて今すごい泣きそう…。

「うわ!それすっごい助かる!手伝ってくれるなら早めに完成できるし!」

魔弾の嬉しそうな表情を見て、仁も嬉しそうに返す。

しかし次の瞬間、和やかな雰囲気が漂う中ザロの言葉で空気が凍りつく。

「ちょっと、誰か来て。暗くて良く見えないんだけどさ、あれ動いてない?」

ザロの指差す方向に目を向けるが、魔弾と仁には真っ暗な海としか分からず、何かが動いていると言われても何も見えなかった。

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