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二つの報

魔弾の緊迫した表情を見ても、シトは状況が上手く飲み込めない。

「どうした?何か問題か?」

ーー何言ってんの?それとも俺が考え過ぎなの?だって化け物は化け物を襲わないんでしょ?これって明らかに奴に襲われて喰われた後じゃね?え?俺がおかしい?

魔弾はなるべく落ち着いて説明しようと、ひとまず深呼吸した。

「前に、ザロから聞いたんです。なぜディーは襲われなかったのか、それは化け物は化け物を襲わないからって。この死骸はおそらく、昨日俺達が駆除に失敗した化け物です。しかも明らかに喰われてます。化け物の生態に詳しい訳じゃ無いですが、これは異常事態だと思います。」

魔弾は真面目な表情で続ける。

「一度街へ戻って、タキリ様や親父さんに報告しましょう。詳しい話は戻りながら話します。」

最初は怖気付いた魔弾を呆れた表情で見ていたシトも、魔弾の表情から事態の深刻さを読み取りすぐに馬を待たせている場所に戻る事にした。

馬に跨がると、シトは行きよりも速い速度で走り始めた。

魔弾は道中に詳しく説明するつもりだったが、本気で走る馬上ではあまりの速さに振り落とされないようにしがみつくのが精一杯で口を開くことすら出来なかった。

ーー本気で走るとこんなに速いのか…すごいな、これなら港と柵の行き来も速攻じゃん!

魔弾が感動していると、二人はすでに柵まで戻って来ていた。

「柵を開けろー!」

シトが大声で叫ぶと、出てきたのはサキではなくシトの父親だった。

柵を開けてもらい、すぐに二人は中に入る。

「親父、一人?サキは?」

「中に居るぞ。どうした?ずいぶん早かったな。」

「ちょっと話があるんだ。すぐに港に行こう。」

そう言ってシトは乗ってきた馬を父親に譲った。

「シトは来ないの?!」

魔弾の驚いた表情を見て、シトはニヤリと笑みを浮かべながら答えた。

「港までだろ?走ってもそんなにかからないだろ。」

ーーハハッ…若さアピールかよ…羨ましいぜその体力!

「親父さん、一旦ジンの店に寄ってもらってもいいですか?」

シトの父親はすぐに馬に跨がり、魔弾を街へと先導した。

ーーすげー…まじで本気走りじゃん…体力凄すぎ!

二頭の馬を追いかけるように、シトが走る。

その表情はとても涼しげで、魔弾の嫉妬心を大きく揺さぶった。

門を抜けトリカブトの前まで来ると、魔弾はすぐに馬から降りた。

「お二人はすぐにタキリ様に報告に行っていただけますか。罠が大量に必要になる事と、監視に衛兵の協力を得たい旨をお伝えください。」

シトと彼の父親は詳しい話を聞いていない為、魔弾の焦りの理由が不思議でならなかった。

「分かったよ。でも化け物の共食いをそこまで気にする必要があるか?」

シトは魔弾から詳しい話を聞き出そうとしたが、すぐに父親に遮られた。

「タキリ様はいねぇぞ?今日出航の船で大陸に行っちまったよ。直接出向いて助力を乞うって、貢物いっぱい持って行ったぞ。」

ーーなんですとぉー?!?!

魔弾はあまりの急展開にしばし言葉を失う。

「何人かは衛兵も残ってたと思うから、館へ行って声はかけてくるが…罠はちと時間がかかるかもしれねぇな。」

シトはすぐに馬に跨がり、行動を開始する。

「じゃあ、館には俺が行ってくるよ。親父は大工と鍛冶屋に話しに行ってくれよ。」

「ありがとうございます。とりあえず声をかけていただいて、港に集合でお願いします…。」

魔弾の弱々しい言葉を奇妙に思いつつも、急いで二人は出発した。

残された魔弾は、トリカブトの扉を開ける。

魔弾は中へ入ると、無愛想な店番を無視してすぐに奥の作業所に入って行った。

「あれ?ダンどうしたの??」

まだ何も知らない仁の表情は、やる気に満ち溢れていて魔弾には眩しかった。

「悲しいお知らせと不安になるお知らせどっちから聞きたい?」

魔弾の暗い表情を見て、仁が少し笑いながら答える。

「何それ、どっちも聞きたく無いんだけどー!じゃあ悲しいお知らせから!」

「タキリが逃げました。親父さん曰く貢物持って嘆願に行ったらしいけど、俺は確実に逃げたと思ってます!」

「えっ…マジ?何それ酷くね?因みにもう一つは?」

「昨日の毒が効かなかった化け物が、頭潰されて喰われてました。“奴”がやったのか決定的なものは無かったですが、十中八九“奴”で間違い無いと俺は思います。」

「えー…化け物が化け物を喰うってどういう事?」

「俺も確かな事は言えないけど、森で餌が枯渇して仕方なく共食いって場合…森の次は街が襲われると思う。ただ、匂いを嗅いで傷舐めてたから毒くらってるの承知で喰らったって思うとなんか腑に落ちないんだよなぁ…他にも化け物はいるじゃん?わざわざ毒を喰らうかね?」

魔弾の疑問に仁が真面目に返す。

「思った以上に知能が高かったりして…ほら、狼の化け物も結構賢い行動してたじゃん?“奴”が浜辺で目撃された時も、街への侵入経路の偵察中だったのかもしれないし。今回の共食いも、何か理由があるのかも…毒耐性の為とか…ってすごい怖いんだけど!」

魔弾も思い当たる節があったのか、同意しながら話を進める。

「とにかく、最悪を考えて行動した方がいいと思って、衛兵に監視の協力依頼と職人さん達に罠の大量製作をお願いしに行ってもらったよ。」

魔弾は仁と不安要素を共有した事で、ようやく落ち着きを取り戻した。

「じゃあ、もう毒の生成いらないかな?効かなかったら意味ないもんなー。てかさっきから気になってるんですけど、その槍はもしや…。」

仁の羨むような眼差しを受け、魔弾は自慢気に答える。

「フフ…やはり気になるかね?これは真槍ロンギヌス、伝説の鍛冶屋から託された最強の槍!」

「えー!!俺も欲しいんだけど!後で行くしかないじゃん!!防具も売ってた?」

「あっ…防具は見てない…。武器見てテンション上がりまくって、防具の事普通に忘れてた…。」

魔弾が少年の様に恥じらう仕草を見せると、仁は笑いながら言った。

「じゃあ後で一緒に来てよ!俺場所分かんないし!」

「そうする!まずは、港でみんなで作戦会議したいから、その後案内するよ!」

一旦話がまとまると、仁は2階の自室に戻り荷物をまとめ始めた。

仁を待つ間、魔弾は罠について色々と考案していた。

ーー落とし穴は深く掘れば有効だよな?あと、網で動き封じるのもありか?本当は檻に閉じ込めるとかやりたいんだけどなー…

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