メンバー
衛兵に門を開けてもらい館へ進んで行く二人は、緊張も相まって言葉を交わすことは無かった。
館の扉が開きホールに通されると、そこには駆除人達が立ち話をしながら待っていた。
ザロは魔弾と仁を見て、すぐに駆け寄ってきた。
「ダン、俺の兄貴。シトだよ。」
魔弾が紹介されたザロの兄へ目を向けると、そこには中性的な若者が立っていた。
腰が細く身長も魔弾より少し低い、それでいて肩や足はアスリートのような筋肉が服の膨らみから見て取れた。
何より驚いたのはシトの顔がシラそっくりで、女性として紹介されても違和感が無い程だった。
「シトだ、よろしく。」
外見とは裏腹に、低く男らしい太い声に驚きながらも魔弾は挨拶を返した。
「俺はダン、よろしく。」
ーー声出さなきゃ王子様じゃん!圧倒的すぎるビジュアルが眩しい…
「ジン、久しぶりだな。元気だったか?」
「うん、シトも元気そうで良かったよ。これからはずっとレテで駆除人するの?」
「親父はそうして欲しいみたいだけど、落ち着いたら俺はまたレテを出たいと思ってる。」
「そっかー。まぁ、まだ若いし時間はあるからじっくり考えてみればいいよ。」
魔弾とザロは静かに二人の会話を聞いていた。
シトの言葉を聞いたザロは少し落ち込んでいるように見えたが、魔弾がザロに小声で耳打ちすると表情が少し明るくなっていた。
ーーしかしザロとシトは全然似てないなー…ザロなんて親父さんの血をもろに受け継いでますって感じだもんな。
しばらく雑談をしていると、タキリの部屋の扉が開いた。
全員が入室し終わると扉が閉ざされ、中にはタキリと呼ばれた者達だけになった。
「奴が出たそうだ。前々回の収穫祭からは全く見なかったが、一昨日の早朝、養殖場に向かう船の従業員達が海岸で見たそうだ。」
ゴウが表情を強張らせながら、質問する。
「大陸から応援は来るのですか?それとも我々だけで?」
ーーちょっと待って…“奴“って誰よ?みんな知ってる程で話進んでるけど…
「要請はするつもりだ。だが時間がかかるだろう。」
「そんな…。」
サキが絶望した表情で呟く。
魔弾は仁に助けを求めるように視線を向けるが、どうやら仁も話についていけない様で壁に飾られた絵画を眺めている。
「応援が来るまで、街に入れないようにすればいいのでしょうか?それとも…駆除ですか?」
ゴウはタキリと視線を合わせないまま質問した。
ーー“奴”って化け物の事か?雰囲気的にヤバそうな感じ?勝ち目薄い感じなの?
「柵で食い止められるならそれで構わん。だが最近補強したとはいえ、完全には安心できん。街に被害が及ばないようにする事を第一に考えて欲しい。」
ザロの父親は黙って話を聞いていたが、あまり納得している様には見えなかった。
「見回りはどうするのですか?奴が出るなら、危険すぎる!」
ゴウが怒りを抑えながら意見する。
「今回は君達兄妹とシトの三人で見回りを行い、ザロとジンとダンの三人が見張り小屋で柵の監視を行う。ただし、見回りは柵の外周だけで構わない。本来なら海岸付近も見回ってもらいたいがね。」
ーーえ?なんで俺たちメンバーに入ってるの?それより親父さんいいのか?あの二人とシトを組ませたくないって言ってたのに…。
魔弾が不満に思いながらも、何とか納得しようと思っていた矢先だった。
「俺とゴウの二人で行きます。サキは見張り小屋に回してください。」
黙って話を聞いていたシトが口を開いた。
シトの言葉を聞いてサキの表情は、先程の絶望した表情から怒りに満ちた表情に変わっていた。
「ああ、それは構わんよ。だが二人で大丈夫なのか?」
ーーちょっとおおお!厄介押し付けるのやめよーよおおお!あの人どう見てもさっきの一言でキレ寸だよ?どう見ても納得できないって顔してるよ?
「俺とゴウなら問題ないと思います。」
シトが微笑みながらタキリに答えると、すんなりと了承された。
「話は以上だ、ジンとダン以外は下がってくれ。」
そう言われると、駆除人達はタキリの部屋から出て行ってしまった。
部屋に残った魔弾と仁は、顔を見合わせて苦笑いした。
「今回、大陸からの応援は恐らく来ない。大陸にとってレテは然程重要ではないのでな。だが、私はなるべく犠牲を出したくない。二人にとっては迷惑な話かもしれないが、どうか力を貸して欲しい。」
ーー確かタキリって大陸から派遣されてるっていってたよな?普通にいい奴じゃん…。
よほどタキリの言葉が胸に響いたのか、魔弾は仁よりも早く返事を響かせた。
「分かりました!」
「私も協力いたします。」
「あぁ、それとダン。バルには話を通しておくから、明日から頼んだよ。」
二人の返事を聞き、タキリは満足げに部屋を出ていった。
「もう帰っていいのかな?てかさー、俺何すればいいの?ジンは分かるよ?でも俺は??」
「俺もてっきり、毒をもっと作れ的な話だと思ってたからちょっとびっくり。何だろうね、二人で駆除したって実績があるからなのかな?よく分かんないけど、とりあえず防衛戦みたいな感じなんでしょ?」
「防衛戦とか言われるとちょっとテンション上がるんだけどー!明日朝一で武器屋行こう!俺、全財産持って行くわ!」
「じゃあ俺も明日一緒に行くわ!ところで腹減んない?とりあえず広場行く?!」
行きとは反対に帰りの足取りはとても軽く、雑談に花を咲かせている間に広場へ到着した。
いつも通り屋台で注文し、酒を飲みながらテーブルで待っていると、そこにゴウが現れた。
「ここいいか?」
「ゴウが広場に来るの珍しいね。もうすぐつまみも来るからこっち座んなよ。」
魔弾は辺りを見回し、サキが居ないかを確認した。
「ゴウさん、お一人ですか?」
「俺一人だ、サキは見張り小屋にいる。」
ーーもう任務開始?!やるじゃん…。
しばらく無言のまま、三人は酒を飲んでいた。
それはつまみが運ばれてきてからも続き、とうとう沈黙に我慢できなくなった仁がゴウに話しかける。
「なんか俺たちに話があって来たんじゃないの?」
ゴウは酒を一口飲むと、ようやく話を始めた。
「サキの事、よろしく頼む。ジジイに何度も言われてたんだ、サキを連れて行くのは間違ってるって。俺がちゃんと忠告を聞いてれば、ジジイの足も無事だったんだ…。」
ゴウは少し酔っているのか、思いを一気に吐き出した。
「親父さん、二人のこと心配してたよ。もう戦えないから…二人を守れないから余計にね。」
深い後悔を感じ取った仁が、ゴウを慰めるように話す。
「ジジイは俺達兄妹を戦えるように鍛えてくれた。それは感謝してるんだ。だが、サキの気持ちも俺には痛い程分かる。化け物を根絶やしにしてやりたい…それは俺もサキと同じだ。」
ここで、酒を飲みながら二人の話を聞いていた魔弾が突然反応する。
「でもそれを優先した結果が、親父さんの負傷じゃないですか。何度も忠告を無視して、仲間を危険に晒した訳ですよね?次はシトを危険に晒すんですか?その次はザロ?」
優しい仁とは反対に魔弾は厳しい口調で話に加わった。
「大丈夫だ。これ以上仲間を危険に晒す事は無いと誓う。」
今までの行いを反省するかのように、ゴウは言った。
「失礼な物言いでした。ごめんなさい。」
酒の勢いもあり、熱くなりすぎた魔弾は我に返って謝罪した。
「ダンの言ってる事は正しい、謝る事はない。今回は、正直言ってサキは足手纏いだ。シトが言わなかったら俺がタキリ様に言っていた。二人には色々と迷惑をかけると思う、でももし危険な状況に陥ったらサキを守って欲しい。頼む…。」
魔弾と仁は互いに視線を交わした後、ゴウの肩を任せろと言わんばかりに叩いた。




