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散財

夜明け前、いつも以上に早く起きた魔弾は朝食の前に祈りの間で祈っていた。

ディーを助けてくれたであろう神へ、足が痺れるまでひたすら感謝をし続けた。

朝の祈りを終え満足気に外へ出ると、朝の祈りを捧げにきたシラと出会した。

「おはようございます、今日シトが帰ってくるそうですね。」

以前から祈りの間で見かけることはあったが言葉を交わす事は無く、会釈する程度だった魔弾の目に映るシラは熱心な信者だった。ようやく神への感謝に抵抗が無くなった魔弾にとっては、信者同士の軽い挨拶程度のつもりで話しかけたつもりだった。

「フフ、ザロからですか?あの子ったら昨日からずっと嬉しそうにしていて…私も会うのは久々で、今から夕食は何にしようかと考えてるくらいなの。」

シラが優しく微笑みながら話す姿を見て、魔弾は急に家族が恋しくなってしまった。

ーー俺の両親も、こんな風に想ってくれてるのかな…会いたいな…。

そんな事を思いながら宿舎に帰ると、すでに朝食は出来上がっていた。

「ダン、こんな朝早くにどこに行ってたんだ?」

バルが食事の手を止め、話しかけてきた。

「早く起きちゃったから、祈りの間に行ってたんだよ。」

「朝行くなら早いほうがいいな、日が昇ってくると混み始めるから俺はいつも夜だけどな。」

「確かに二人くらいしか居なかったな。なら明日も朝いちで行くとするか。」

「ハハ、熱心なのは良いがちゃんと体は休めろよ。」

「うん。あ、そうだ!今日船来るでしょ?キオの所に持ってく荷物とかあるなら俺が持っていくよ!」

「いいのか?じゃあカラに準備するように言っておくから、その時はよろしく頼むな。」

食事を摂りながらバルと会話をした魔弾は、先程の寂しさを吹き飛ばし陽気な表情に変わっていた。

大学卒業から独りで生活していた魔弾にとって、毎日一緒に食事をする仲間がいる事は何よりも嬉しい事だった。

朝食は宿舎で皆と、そして夕食は仁と広場に行く。この些細な幸福感が魔弾の寂しさを埋めていた。

食事を終えると、いつものように皆で農場へ向かい早速粉挽きを始めた。

今日の分が終わると、魔弾は荷車を引きながら急ぐように街へ戻り、カラに港へ運ぶ荷物は無いかと確認した。

船荷を荷車に積み、すぐに出発できるように準備を終えると、広場の屋台で昼食の物色を始めた。

ーー時間まだ大丈夫かな?武器屋さん行けるかな?!流石にそんな時間はないかな?

串焼きが焼きあがるまでの間、昨夜の話を思い出しずっとどんな武器が良いか考えていた魔弾は、とにかく一刻も早く武器屋で実物を見てみたいと考えていた。

ーーうーん…とりあえず今日は港への荷運びもあるし、しっかり休憩とって午後に備えるか!やっぱり大きい買い物はじっくり決めたいしな!

魔弾は屋台で串焼きを受け取ると、空いている椅子に座って食べ始めた。

ーータキリ様の所でどんな話するんだろ?ジンはともかく俺は何で呼ばれたんだ?謎だ…。

串焼きを食べ終えると、倉庫へ戻り船荷を積んだ荷車を受け取ってすぐに波止場の倉庫へ運んだ。

「ダン、それバルの所の船荷?」

マトは魔弾に声を掛けながら、出荷先ごとに分けられた船荷の確認作業をしていた。

「そう、大陸への船荷。これ今回の料金、あとこの書類ね。」

書類を受け取ったマトは、サインのようなものを書いて書類を魔弾へ返した。

「今日も多いな…運び甲斐がありそうで何よりだわ。」

「この量見て喜ぶのダンだけだよ…。もうすぐ船着くと思うからその辺の椅子に座ってなよ。」

マトの作業を眺めながらも、頭の中が装備の事で一杯の魔弾は武器だけではなく防具にまで想像が広がっていた。

ーー腕につける装備とか無いのかな?腕むき出しはちょっと怖いし、狼の化け物ぐらいなら払えるくらい硬い装備つければなお安心だよな。あぁ…もうダメ!明日ザロ誘って絶対行こう!てか、なんで駆除人は防具着けないんだ?流石に布一枚じゃ危なくないか?それとも素早さ重視的な?誰かさんなんかいつも怪我して運ばれてるんだから鉄の鎧ぐらい装備しろよって話じゃね?

魔弾が色々と考え込んでいると、いつの間にか船は波止場に着いており作業者集合の鐘が鳴り響いた。

集まった作業員達と挨拶を交わし、すぐに指示された場所への荷運びが始まった。

当初、息を切らしながら登った階段や坂も、今では会話しながら登れるくらいに体が慣れていた。

夕方、荷運びを終えて賃金を受け取ると作業員達は広場へ行こうと盛り上がっていた。

魔弾は広場に行きたい気持ちを抑えながら、次回は必ず行くと断って渋々公衆浴場へ向かった。

汗を流し、宿舎へ戻って持っている服の中で一番高価な服に着替えて仁の店に向かった。

店に着くと、すぐに奥から仁が現れた。

「おつかれー!今日ダブルワークでしょ?これ飲んで待ってて!」

仁が差し出したコップには冷えたジュースが入っていた。

「何これ?!冷たい!ジュース?!酸味と甘味が絶妙すぎてうっま!」

「ちょっと飲んでみたくて昼間に買ってみた!それと精製した毒を低温保存出来るように、氷作れる箱買ったんだよね!金18もしたから普段もガンガン使ってやる!って感じ。」

「氷?!マジで?!酒に入れたら完璧じゃん!」

「氷作るケースが無いから、コップに水入れて凍らせただけなんだけど、これでも全然いけるでしょ?!」

「いける!こんなキンキンに冷えた飲み物久々すぎて涙出そう!」

「これで、冷えた刺身もいけるってね。」

「何それ、最高じゃん。」

「明日早速広場で魚仕入れてみるつもり!」

「明日?!俺明日武器見に行きたいんだけど、ジンも一緒に行こうよ!んで、その後はお楽しみのお刺身タイムでどうでしょう?」

「親父さんが言ってた武器屋?行く行く!」

盛り上がりが最高潮に達し、二人はタキリの館へ向かって歩き出した。

そんな中、突然魔弾が切り出した質問は仁を困惑させた。

「あのさ、祈りの間に寄付したいんだけど。お布施っていうのかな?」

「えっ?!何で急に?どうしたの?」

「あ、いや…深い意味は無いんだけど。ディーを救ってくれた感謝もあるし…」

「祈りの間に広間があって、その奥が祭壇?みたいな感じになってて左右に居住者用の部屋と書庫があるんだけど、少額ならその祭壇っぽいところに壺が置いてあるからその中に入れればいいよ。ちなみに高額な寄付はタキリ様経由になるからやめたほうがいいよ。」

「壺ね、分かった!明日早速行ってみるわ!」

館に近づくにつれ、二人の会話は途切れていく。

「着いちゃったね…。」

魔弾が顔を引きつらせながら言うと、仁も切ない表情で同意する。

「はぁ…じゃあ、行きますか…。」

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