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ディー捜索隊

「この荷車貸して!サキの傷が酷くてすぐ街に戻りたいんだ!」

ーーはぁー???またぁ???どんだけ怪我すんの?

ザロの必死な表情を前に、仕方なく魔弾と仁は協力を申し出て荷車を見張り小屋の方向に急がせた。

見張り小屋に向かう途中サキを背負って歩くゴウを見つけると、仁はすぐにサキを荷台に乗せるようゴウに指示した。

サキの背中には大きな傷があり、仁は簡易的な止血を施すとゴウへすぐに出発を促した。

荷車を見送った後、一人で見張り小屋に戻るザロを不憫に思った二人は、ゴウが戻るまで見張り小屋で待機することにした。

「あの傷、やっぱりあの熊の化け物かな?俺ぶっちゃけあいつ怖いんだけど。」

魔弾が少し怯えた表情を見せた。

「俺もアレは無理。また足竦んじゃうと思う。なんだろ、爪がさ…怖いんだよね。嫌でも想像しちゃうんだよ…。」

仁も隠すことなく恐怖を口にした。

二人の怯えが伝染したザロもまた、不安で仕方がなかった。

「ちょっと金属用意しとこ。毒の在庫まだあるよね?ナイフにも塗っておこうかな。」

仁が落ち着きなく行動し始めるのを見て、魔弾もすぐに火炎瓶の用意を始めた。

防衛の準備が整うと、三人は少し落ち着きを取り戻した。

魔弾が毒を塗った金属を一本ずつ仁とザロに渡した。

「ジン、君にはこのロンギヌス零式を授ける。君なら間違いなく使いこなせるはずだ。」

笑いを堪えながら仁は跪いて金属を受け取る。

「これが伝説の…なんと神々しい…。」

ただの金属をあたかも神から授かったかのように振る舞う仁に、魔弾も笑いを堪えながら頷くのが精一杯だった。

「ザロ、ちょっと長くて使いづらいかもしれないけどナイフよりマシだから。」

ザロには普通の説明で手渡したのを見て、仁が吹き出した。

「ちょっと、期待しちゃったじゃん!」

ザロにギャグは通じなかったが一気に場の緊張が解け、三人は柵を眺めながら果物を齧っていた。

果物を食べ終え、柵の外を眺めながら仁がふと疑問を口にした。

「ねぇ、そういえばディーは牧場戻ったの?」

「え?ディーがどうしたの?」

ザロは何の話かさっぱり分からないといった表情を仁に向けた。

二人のやり取りを見ていた魔弾がすぐさま立ち上がる。

「俺、ちょっと牧場見に行ってくるよ。」

二人の返事を待つことなく、魔弾は走り出した。

ーーサキさんが連れてったってジンが言ってたよな?柵の外に置いてきたなんて事はないよな?!

魔弾は先日の一件を思い出し、ザロの父親を置いてきた二人ならあり得る話だと怒りを抑えながら走った。

牧場に着きすぐに飼育員に確認すると、予感は的中しさらに怒りが増した。

ーー俺が馬鹿だったわ、人間じゃないもんな!マジであり得ねーよ!

怒りを堪えながら走ったせいか、全力疾走並みのスピードで見張り小屋へ戻った。

戻った魔弾の怒りに満ちた表情を見て、仁はすぐに理解した。

仁は魔弾が呼吸を整える間に、すぐに出発できるよう道具を集めた。

仁の行動を見ていた魔弾は、すぐに状況を判断し協力的な仁の姿に大きく心を震わせた。

「ジン、ありがとう…。」

「いいってことよ。」

二人の会話を聞いていたザロは、一体何が起きているのか全く把握できていなかった。

呼吸が整った魔弾は、すぐに金属を片手に柵に向かって歩いて行った。

仁もまた、当然のように魔弾と並んで歩く。

「ザロ、俺達が外に出たらすぐ閉めてな。」

魔弾の口調は少し強張っていた。

「俺も行くよ。」

ザロの返事に少し驚いた二人は、顔を見合わせた。

「柵は誰が閉めるの?」

仁の質問にザロは得意げに答える。

「俺が閉めて、柵を登ってそっち側に行く!」

任せろと言わんばかりの表情を見て、魔弾と仁は少し不安になった。

「いや…気持ちはとてもありがたいけど…。親父さんの気持ち考えると連れて行くのはマズイと思うんだよね。化け物に出くわしたら危険だし。」

仁が優しく説得を試みたが、ザロには効果が無かった。

「俺、兄貴みたいにちゃんと駆除人になりたいんだよ。もう親父を危険な目に遭わせたくないんだよ。だから連れて行ってくれよ!」

ザロの家族を守りたいという必死の訴えは、魔弾の心に突き刺さった。

「俺たちが危険だって判断したら、一番最初に逃げるって約束してくれ。俺達だってお前を危険な目に遭わせたく無いのは分かって欲しい。」

ザロは仁のように対等に扱って欲しい気持ちがありながらも、実力不足を弁え悔しそうに返事をした。

「分かった。約束する。」

魔弾から許可を得たザロは、すぐに柵を開き二人が外へ出るとすぐに柵を閉めた。

手だけの力で器用に柵を登るザロを見て、魔弾と仁は少し嫉妬した。

「若いっていいね。羨ましいわ…。」

魔弾の漏らした言葉に、仁も同意する。

「俺も小学生くらいだったらまだ出来たわ…。」

柵を軽々と登り、結構な高さから軽々飛び降りるザロを見て二人は自身の若き日々を思い出し切なさに浸っていた。

「俺が道案内するよ。見回りの場所って決まってるから、多分すぐ見つけられると思う!」

そう言ってザロは何事もなかったように、先頭を陣取って歩き出した。

先頭は危険だと分かっていながらも、前回迷って街にすぐ帰れなかった経験がある二人は、渋々先頭を譲った。

川沿いのあぜ道を15分程歩いたところで、ディーを見つけることができた。

可哀想なことに、ディーはひっくり返った荷車に繋がれたまま動けない状態で放置されていた。

「可哀想に…すぐ解いてあげるからね…。」

魔弾と仁が近づくと、ディーは驚いて荷車を引っ張る勢いで暴れた。

仁がディーを抑え、魔弾が素早く繋がれた紐をナイフで切った。

紐が切れたディーは仁を勢いよく振り払い、距離をとって二人を見ていた。

ーーやっぱり触らせてはくれないのね!それでこそ俺のディー!

魔弾の不気味な微笑みに、仁は少し困惑していた。

「ねぇ、荷車どうするの?紐切っちゃったし置いてくの?」

ザロが純粋な疑問を口にした。

辺りを見るとディーは何やら運んでいたようで、木材や革袋やらが散乱していた。

「これどっかに運んでたのかな?それならもう一回ディーを繋いで運んだほうがいいよね?」

仁がザロに確認した。

「多分上流の水車小屋に運んでたんだと思う。」

「じゃあとりあえずそこまで運んで、街に戻るとしますか。」

魔弾と仁が散乱した荷物を集めていると、ザロから逃げるディーが二人の目の前を横切って何かに体当たりした。

ーーうわー…マジか。出ちゃったよ。

生い茂った草むらに潜んで仁を狙っていた熊の化け物に、どうやらディーは捨て身の攻撃を仕掛けたようだ。

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