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氷の奇公子 ~変人王子の生存術~  作者: 佐藤湊
第1章 誕生と王国の影
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第9話 愛情の行き先

夕食会が終わった翌日、セドリックが第一王子宮を訪れた。


「アエテリアの大地に秩序をもたらす氷雪の女神、グラシエルの祝福を、恭しくも賜り、氷雪の女神が紡ぎし白銀の糸が、再び触れ合えたことに感謝いたします。


昨日ぶりですね。あなたとの再会が、グラシエルの御心に適うものでありますように」


俺も答える


「あえてりあのだいちにちつじょをもたらすひょうせつのめがみ、ぐらしえるのしゅくふくをうやうやしくもたまわり、ひょうせつのめがみのつむぎしはくぎんのいとが、ふたたびふれあえたことにかんしゃいたします。


さくじつびりだな。そなたとのさいかいが、ぐらしえるのみここころにかなうものでありあすように。これからよろしくたのむ。」


セドリックが口を開く


「本日より、本格的に学習を始めさせていただきます。まずはこの国の地理についてですね。」


こうして学習が始まった。


「アンティクイランド王国はアエテリア大陸南西部に位置しています。西側には帝国に次ぐ大国であるエクィトゥム王国、セパラーティオ川を挟んだ東側に世界最大の超大国、アエテリア帝国が存在しています。また、北側には山岳民族の小国、シルウァニア王国、海峡を挟んだ南側には交易によって富を得ている砂漠の国、カヴィーレスターン・スルタン国が存在します。」


「この国は大きく4地域に分けることができます。馬の生産が盛んな北部、ワインとオリーブの生産が盛んな中部、海峡と船の補給港がある南西部、世界最大級の湾岸交易都市である王都を中心とした南東部です。」


「さらに北部から南東部にかけて流れるセパラーティオ川は中央部のワインやオリーブを届けるために多く利用されていますが、帝国との国境でもあるためしばしば軍事衝突が起こっています。」


「また、王都レクィエリアを中心とした王領の南東部や主要街道では北部で生産された荷役馬を利用し王家独自の運輸業などによって交通網が整備されており、レクィエリア経済地域が確立されています。」


「この中で王国の総人口は約120万人。そのうち王都には15万人が在住しており、王都への人口集中が近ごろ問題になっています。というのも王都人口分の食糧を地方人口の105万人では到底支えられず、海峡の補給港の周辺都市や特産品の生産をしている地域では食料は生産しておらず、補給港への供給も必要なので、食料の膨大な需要に対し交易によって供給を行っている状況で戦争や海峡封鎖などによって国家経済が崩壊しかねません。」


どんどん情報が入ってくる...

俺は聞いた内容をどんどん高級品の羊皮紙にメモしていった。


________________________________________


翌日。


今日はセドリックではなく母上が来ている。貴族構成や派閥について教えてもらえるようだ。

ちなみに母上などの親しい人間は俺のことをレノと呼んでいる。


「レノ、あなたは私にとって最も大切な息子です。しかし、あなたは王族に生まれた以上、王族の責務を背負って生きていかなければいけません。そのなかで起こる権力闘争で生き残るには派閥や貴族構成、血縁関係を正確に把握していなければいけません。なので今日、私が教えることを必ず覚えておきなさい。」


そう、母は厳しい顔でそういった。母が自分のことを息子と思ってくれているようで嬉しい。前世の記憶がある俺が愛情を受け入れるのに少し後ろめたくなってしまう。美咲に向けていた愛情の行き先を転生によって失ってしまったことで人に心から甘えることができなかったのだ。それを自覚した瞬間、俺が今まで孤独だったことに寂しさを感じて後ろめたく感じながらも母上の愛情を受け入れている俺がいることにきずいた。そうして自分の感情をしっかりとゆっくりかみしめていく。

そして__


目からはらりと涙が零れ落ちた。


そんな俺に母がそっと頭をなででくれる。


そうだ、自分は誰かに甘えたかったのだ。

今世の母に向けられた親族としての愛情に安心を感じ、

『甘えたい』と自分の感情を出すことができたのだろう。


この安心感と愛情を与えてくれた母に俺は

愛情を返えしたいと思った。

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