第26話 第三学年
十一歳になってからの一年は、思っていたより早く過ぎていった。
王立貴族学院では、相変わらず第一王子派と第二王子派の生徒が互いを意識していた。露骨な喧嘩こそ少なかったものの、席順や共同課題、学院行事で誰と組むのかといった小さな場面で、両派閥の違いが見えることは増えていった。
俺は、そうした場面に必要以上に首を突っ込まないようにしていた。まだ子供同士の争いが中心で、俺が一言口を出せば、それだけで余計な意味を持たせられるからだ。
一方で、王都では大人たちの派閥争いが少しずつ激しくなっていた。
人事。
予算。
地方官の任命。
王都で開かれる会議の席順にまで、第一王子派と第二王子派の思惑が絡むことがある。
特に領地貴族の大半と法衣貴族の過半数を押さえている第二王子派は、人数の多さを生かして王宮での発言力を強めていた。
父上から見せてもらう書類を読むたび、俺の後ろ盾が決して大きくないことを実感する。
だからといって、焦るつもりはなかった。
俺には俺のやることがある。
学院では勉強を続け、魔法と剣の訓練も続けた。
前年の学院狩猟大会では上位に入ったものの優勝には届かなかったため、今年は少しだけ成績を上げた。
社交界にも何度か顔を出した。
相手の家名と顔を覚え、誰がどの家と親しいのかを見る。
そうして少しずつ、自分の周囲にいる人間が分かるようになっていった。
そして、ルキウスとも学院で何度か顔を合わせた。
取り巻き同士が嫌味を言い合うことはあったが、俺たち自身が正面から争うことはほとんどなかった。
話をする時もある。
意見が違う時もある。
だが、今のところはそれだけだ。
ルキウスが十歳から十一歳へ。
俺が十一歳から十二歳へ。
一年の間に、互いに少しずつ成長した。
そして――。
十二歳の春。
俺は王立貴族学院の三年生になった。
入学したばかりの頃と比べれば、学院のことも随分と分かるようになった。
誰に何を言えばいいのか。
どこまで踏み込んでいいのか。
そして、どこから先が大人たちの問題なのか。
まだ知らないことは多い。
それでも、以前よりは自分の立場を理解できるようになっていた。
今年からは、俺たちの学年にも新しい後輩が入ってくる。
そして十歳だったルキウスも、二年生になった。
俺は三年生の教室へ向かう。
窓の外では、新しい一年の生徒たちが教師に案内されている。
また一年が始まる。
十二歳の俺にとって、王立貴族学院で過ごす三年目の春だった。




