第5話 夕食会 1
主人公無双ではありませんが、そう見える描写がしばらく多く出てきます。本編に入るのはまだ先です。主人公が5歳になれば物語が動き出します。今後登場する第二王妃のおかげで無双気味の主人公が5歳で絶望します。無双系というイメージが粉々に砕け散ると思うので乞うご期待!
8月9日~8月11日午前までにこの作品を読んで頂いた方にご連絡です。チャットGPTを直接使用することで、大幅に文章構成を修正しました。ご確認いただければストーリーがわかりやすくなると思いますので、任意で再度ご確認ください。
今日は何の日
~離乳食卒業の日~
いや。
正確には――
今日から俺は、王族の正式な食事に参加することを許されるらしい。
「…………ついに、か」
小さく呟く。
三歳。
思えば、長かった。
前世の記憶を持ったまま生まれ変わった俺にとって、食事というのは数少ない楽しみの一つだった。
なのに、この三年間。
俺の食卓に並ぶものは、年齢に合わせて柔らかく調理されたものばかり。
柔らかい。
食べやすい。
消化にもいい。
――だが。
「味が薄い……」
俺は切実に思っていた。
そろそろ普通の肉が食いたい。
前世では普通に食べていた肉。
焼いた肉。
煮込んだ肉。
できれば香辛料の効いた肉。
それが今夜――
ついに解禁される。
「……長かった」
俺がそんな感慨に浸っていると、前を歩く一人の男が目に入った。
白を基調とした軍装。
肩には幾重にも重ねられた飾緒。
腰には一振りの剣。
背中には、中央軍第一軍団を示す紋章。
――アトラシート伯爵。
アンティクイランド王国中央軍第一軍団軍団長。
王国軍の中枢を担う人物である。
そんな大人物が――
三歳児である俺の夕食会の先導を務めている。
なんというか。
「……物々しいな」
思わず口に出してしまった。
「何か仰いましたかな、殿下?」
前を歩いていたアトラシート伯爵が振り返る。
「なんでもない」
「左様ですか」
伯爵はそれだけ言うと、再び前を向いた。
その歩みに、一切の乱れはない。
背筋は真っ直ぐ。
足取りも一定。
軍人としての威厳が、その背中から滲み出ている。
俺はそんな背中を見ながら、少しだけ苦笑した。
王族というのは、本当に大変だ。
三歳児の夕食にまで、軍団長が付き添うのだから。
白大理石の廊下を進んでいく。
高い天井を支える巨大な柱が、一定の間隔で並んでいる。
柱と柱の間から差し込む夕暮れの光が、磨き上げられた床に長い影を落としていた。
窓の向こうには王宮庭園。
その中央には噴水があり、そこには氷雪の女神グラシエルの像が立っている。
白銀の女神像は夕陽を受け、淡い金色に染まっていた。
……綺麗だ。
三年前。
目もまともに見えなかった頃には、こんな景色を想像することすらできなかった。
俺は歩きながら、胸元へ視線を落とす。
そこには王家の紋章が刻まれたブローチ。
白銀の地金。
中央には雪晶。
そして、その中心には――
泉のような碧い宝石。
三歳児の身体には少しばかり大きいそれが、歩くたびに小さな音を立てる。
「……」
なんとなく指先で触れてみる。
これが王族の証。
前世の俺には、想像すらできなかったものだ。
そんなことを考えていると――
「殿下」
アトラシート伯爵が足を止めた。
俺も立ち止まる。
気づけば、目の前には巨大な扉があった。
両脇には近衛兵。
扉の上には、王家の紋章。
「こちらが王族食事室でございます」
「……ここが」
思わず見上げる。
……デカい。
扉だけで俺の身長の何倍あるんだ。
さすが宮殿。
俺が扉を見上げていると、アトラシート伯爵が俺の前に跪いた。
先ほどまでの厳めしい軍人の顔が――ほんの少しだけ柔らかくなる。
「本日は殿下の離乳食卒業の日。誠におめでとうございます」
……。
絶対に面白がってるだろ!
俺は伯爵の顔を見る。
しかし、表情からは何も読み取れない。
「……ありがとう」
「本日より殿下も、正式に王族の食卓へ加わられることとなります」
その言葉に、俺は再び扉を見る。
この向こうには――父上がいる。
母上もいる。
そして。
今日から俺が食べることになる、正式な王族の食事が待っている。
王族の食事。
つまり――
肉。
確実に肉もある。
俺は知らず知らずのうちに、拳を握っていた。
「……楽しみだ」
その言葉に。
アトラシート伯爵が一瞬だけ目を丸くした。
そして――
口元が、ほんの僅かに緩む。
「それは何よりでございます、殿下」
……やっぱり笑ってるだろ。
そう思った瞬間。
巨大な扉が、ゆっくりと開いていく。
ギィィィ……。
扉の向こうから、暖かな灯りが溢れ出す。
そして――
料理の香りが、俺の鼻を刺激した。
「…………!」
肉の匂い。
香草の匂い。
焼いたもの特有の香ばしい香り。
胃が反応する。
「……!」
これは――
本物だ。
俺は思わず一歩前へ踏み出した。
三年間。
長かった。
本当に長かった。
そして今日。
俺はついに――
「離乳食を卒業する!」
三歳児の身体とは思えないほどの決意を胸に。
俺は王族の食卓へと、一歩を踏み出した。卒業の日だった。
主人公無双ではありませんが、そう見える描写がしばらく多く出てきます。本編に入るのはまだ先です。主人公が5歳になれば物語が動き出します。今後登場する第二王妃のおかげで無双気味の主人公が5歳で絶望します。無双系というイメージが粉々に砕け散ると思うので乞うご期待!




