第15話 お披露目2 聖別洗礼式 前編
このお披露目は長くなりそうです。
俺は聖別洗礼式のために大神殿に向かっている。
王都は大きく、王宮を中心とした王宮区、貴族たちが居住する貴族街、そして商人や職人、一般市民が暮らす平民街に分かれている。
その境界にあるのが――貴族門だ。
高い石造りの門と城壁によって貴族街と平民街は明確に分けられている。
門には王国軍の兵士が常時配置され、夜間には閉鎖される。
貴族や王族は当然のように通行できるが、平民が貴族街へ入る場合には身分証や通行許可が必要になる。
この貴族門の左右、貴族街と平民街の境界に大神殿と士官学校、第二軍団司令部~第五軍団司令部がある。
今回行くのは貴族街から見て右側にある大神殿だ。
そうこうしていたら貴族門が見えてきた。
「……大きいな」
馬車の窓から外を見る。
高い石壁。
その中央に設けられた巨大な門。
その右側に設置されている貴族門より少し小さなきめ細かな装飾がなされた門を通っていく。
大神殿に到着した。
門をくぐった瞬間、空気が変わった。
「……すごい」
思わず声が漏れる。
「……これが大神殿か」
思わず呟いた。
そこには――巨大な建物があった。
白い石材で造られた巨大な大神殿。
王宮にも負けないほどの規模を誇り、その中央には空へ突き刺さるような巨大な塔がそびえ立っている。
塔の頂上には、グラシエル教の象徴である黄金の聖印が掲げられていた。
その周囲には、大神殿を囲むように高い石壁が築かれている。
ただの宗教施設というより、一つの都市に近い。
「広いな……」
馬車を降りる。
大神殿の正門は、俺の身長の何倍もある巨大な門だった。
門の両脇には神官だけではなく、武装した神殿騎士が立っている。
その姿を見て、俺は少し驚いた。
「神殿にも騎士がいるのか?」
「はい」
ゼバズが答える。
「大神殿を守護する神殿騎士団です。教会の重要施設や高位聖職者の護衛を担っております」
「なるほど……」
門をくぐる。
すると、そこには広大な中庭が広がっていた。
中央には大きな噴水。
その周囲には整然と並べられた白薔薇。
さらにその外側には、色とりどりの花が植えられている。
「白薔薇が多いな」
「グラシエル教の聖花ですから」
確かに。
大神殿の至るところに白薔薇が植えられている。
白い花と白い石造りの建物。
その組み合わせが、妙に神聖な雰囲気を作り出していた。
中庭の左右には、いくつもの建物が並んでいる。
神官たちが暮らす宿舎。
礼拝や儀式に使われる建物。
神学校。
病人を治療する施療院。
そして、巡礼者や遠方から来た信徒が宿泊する施設まである。
「大神殿って、礼拝するだけの場所じゃないんだな」
「はい。グラシエル教における最大の宗教施設ですので」
ゼバズが説明する。
「ここには神官の養成施設や施療院、神官寮、孤児院などもございます」
「正に一つの都市だな。」
俺たちは中庭を進んでいく。
やがて正面に、ひときわ大きな建物が姿を現した。
大神殿の中心――大礼拝堂だ。
その正面には巨大な階段があり、その左右には白い柱が何本も並んでいる。
柱の間にはグラシエルの神話を描いた彫刻が施されていた。
そして、その最上部。
巨大なステンドグラスが朝日を受けて輝いている。
青。
金。
白。
赤。
色とりどりの光が石壁へ落ちている。
「…………」
思わず立ち止まる。
すごい。
前世の日本でも、歴史的な建築物を見るのは好きだった。
だが、これは違う。
俺が今いるのは――
本物の異世界に存在する、千年以上続く宗教の総本山。
そう考えると、胸が高鳴った。
「殿下」
ゼバズに声をかけられる。
「はい」
「お時間でございます」
「……分かった」
俺は大礼拝堂へ向かって歩き出す。
巨大な扉の前まで来る。
神殿騎士たちが左右へ移動した。
そして――。
「第一王子殿下、ご入堂!」
重厚な扉が、ゆっくりと開いていく。
その先には――。
大勢の人々が待っていた。
俺は一度だけ深呼吸する。
そして。
アンティクイランド王国第一王子として、大神殿の中へ足を踏み入れた。




