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氷の奇公子 ~変人王子の生存術~  作者: 佐藤湊
第1章 誕生と王国の影
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第14話 お披露目1

このお披露目で事件が起こります!

俺は――五歳になった。


そして、俺には妹ができた。


名前は――サナティア。


正式な名は、


第一王女サナティア・ゲンス・デイ・アンティクイランド。


俺とは少し違い、プラチナ色の髪に、澄んだ空色の瞳を持っている。


「……可愛い」


つい、そう呟いてしまう。


まだ一歳だというのに、この可愛さ。


将来は美少女になる。


これは確定事項だ。


異論は認めん。


サナは人生勝ち組である。


父上と母上に愛され、祖父上にも可愛がられ、王宮の侍女や騎士たちからも愛されている。


そして、俺も当然ながらサナを可愛がっている。


親しい者たちは、みな彼女を「サナ」と呼んでいる。


まあ、それはそれとして、


今日は、俺にとって特別な日だった。


俺が五歳になって初めて行われる、王族としての正式なお披露目の日。


朝から王宮全体が、いつもとは違う空気に包まれている。


侍女たちは忙しそうに動き回り、騎士たちも普段より多く配置されている。


俺が自室で身支度を整えていると、ゼバズが入ってきた。


「殿下。本日の予定をご説明いたします」


「頼む」


俺が椅子に座ると、ゼバズは手にしていた書類を確認した。


「本日は第一日目です」


「まず、本日の主行事は――聖別洗礼式でございます」


「聖別洗礼式……」


俺は頷く。


アンティクイランド王国の国教。


グラシエル教。


その最高神官である、第一神座卿アウレリウス・セウェルス猊下によって執り行われる。


ゼバズが続ける。


「この儀式は、殿下をグラシエルの正式な信徒として迎えるとともに、王国の次代を担う王子として、王族・貴族、そして国民に正式に認めていただくための重要な儀式でございます」


「なるほど」


「王族の聖別洗礼式ですので、通常のものより大規模に執り行われます」


ゼバズは順番に説明していく。


「まず、大神殿へ移動していただきます」


「そこで王族、主要貴族、大商人などの参列者にお披露目を行います」


「その後、第一神座卿による聖別洗礼式が執り行われます」


俺は少し身を乗り出した。


「魔力測定もそのときか?」


「はい」


ファンタジーデビューの記念すべき日だ。


この世界には魔力が存在する。


五年間、この身体で生活してきたが、まだ自分の魔力量がどれほどなのか正式に測ったことはない。


正直、かなり気になる。


「その後、神への誓約を行い、グラシエル教の正式な信徒として登録されます」


「そして?」


「正式な王族として教会に登録され、殿下がアンティクイランド王国における王位継承順位第一位の王子であることが、改めて公に宣言されます」


……なるほど。


単なる宗教行事ではない。


俺が第一王子であることを、宗教的にも政治的にも公に示す場というわけか。


「かなり大事な日なんだな」


「はい。殿下にとって、非常に重要な一日となります」


ゼバズはさらに続ける。


「聖別洗礼式が終了しましたら、王宮へ戻り昼食となります」


「その後、親族の皆様から祝福のお言葉をいただく予定です」


「カシウス公爵家の皆様も?」


「もちろんでございます」


カシウス公爵家。


王家と非常に近しい親族だ。


ここでも、俺は多くの貴族と顔を合わせることになる。


「そして昼食後、湯浴みをしていただきます」


「湯浴み?」


「はい」


ゼバズが少しだけ微笑んだ。


「本日はグラシエル教の聖花である白薔薇を浮かべた浴槽をご用意しております」


「……白薔薇風呂」


王族らしい。


実に王族らしい。


「湯浴みの後は、第一王妃殿下とともに社交界の皆様へのお披露目となります」


「……今日だけで何人と会うんだ?」


思わず呟く。


「かなりの人数になるかと」


「だよな……」


五歳児にはなかなかの重労働だ。


だが、これも王子の仕事。


俺は小さく息を吐いた。


「分かった。最後までやりきるよ」


「ありがとうございます」


ゼバズは一礼した。


「なお、二日目にも重要な予定がございます」


「二日目?」


「はい」


ゼバズが新しい紙を取り出した。


「午前中は、年に一度開催される御前会議にご出席いただきます」


「……御前会議?」


「昨年度の国家収支をはじめ、各部署からの報告などが行われる会議です」


「五歳児が出席するのか?」


「第一王子として、正式にご出席いただきます」


「…………」


俺は黙った。


五歳児に国家収支報告を聞かせるのか。


この国、純粋無垢な少年に何を教え込むつもりだ?


「午後からは、第一王子派の主要な方々との顔合わせとなります」


「第一王子派……」


その言葉を聞いて、少しだけ空気が変わった気がした。


第一王子派。


つまり――。


俺を次代の王として支持する貴族たち。


今日の洗礼式は宗教的なお披露目。


明日の顔合わせは、政治的なお披露目ということだ。


「……なるほど」


俺は椅子から立ち上がった。


「つまり、この二日間で俺が王国中に『第一王子レノウィウス』として知られることになるわけか」


「その通りでございます」


ゼバズが頭を下げる。


俺は鏡を見る。


そこに映っているのは、五歳の少年。


プラチナ色の髪。


そして――泉のような碧の瞳。


前世の俺とは、何もかも違う。


けれど。


「……やるか」


今日は俺にとって――


この国で「レノウィウス・ゲンス・デイ・アンティクイランド」として生きていくための、最初の一日だ。


俺は王子としての顔を作り、部屋を出た。


――さあ。


高校デビューならぬ

5歳児デビューだ。

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