第9話 カイの本性
婚約が決まってから。
カイの様子が。
少しおかしい。
最初にそれに気づいたのは。
たぶん俺だった。
「カイ」
「はい」
「最近、変じゃないか?」
「何がです?」
「……いや」
本人は自覚していないらしい。
だが。
明らかに変わった。
以前のカイなら。
俺がどこへ行こうが。
多少無茶をしようが。
「殿下、ほどほどになさってください」
くらいで済ませていた。
ところが。
今では。
「殿下」
「何だ?」
「今日は寒いですから、外套を」
「いらない」
「いけません」
「……」
妙に細かい。
「殿下、食事は?」
「食べた」
「本当に?」
「本当だ」
「では、こちらを」
「何だこれ」
「菓子です」
「……」
完全に。
世話焼きのお兄さんになっている。もしかして...こいつロ..ゲフンゲフン
◆
原因は。
言うまでもない。
イザベラだ。
ある日。
俺たちが学院の廊下を歩いていると。
「カイ様」
少し遠くから声がした。
振り返る。
そこに。
イザベラが立っていた。
「あ……」
カイの動きが。
止まった。
「イザベラ嬢」
「こんにちは」
「……こんにちは」
いつも通りの挨拶。
ただ。
カイが頬を赤らめる
「今日は寒いですね」
「はい」
「ちゃんと外套を着ていますか?」
「大丈夫です」
「本当に?」
「はい」
「寒かったら、すぐ言ってください」
「……はい」
俺は。
横で見ていた。
そして。
なんとなく。
嫌な予感がした。
◆
その数日後。
「殿下」
「何だ?」
「イザベラ嬢は、今日どこへ?」
「……知らない」
「そうですか」
「何で聞く?」
「いえ」
カイは何でもない顔をしている。
だが。
その直後。
「イザベラ嬢は図書室にいるようですよ」
俺は。
思わず振り返った。
「お前」
「何です?」
「何で知ってる?」
「……たまたまです」
「嘘だろ」
「本当です」
「お前、最近イザベラ嬢の予定に詳しすぎないか?」
「婚約者ですから」
「そういう問題か?」
「そういう問題です」
妙に真顔だった。
◆
さらに。
「イザベラ嬢は、無理をしすぎる傾向があります」
ある日の訓練後。
カイが真剣な顔で言った。
「体力があまりないので」
「だから?」
「重い荷物を持っていたら私が持ちます。渡した奴を斬ります」
「……」
「寒そうなら外套を貸します。外套を渡さなかった奴を斬ります」
「……」
「困っているなら相談に乗ります。困らせた奴を斬ります。」
「……」
「危険な場所には近づけません。閉じ込めたいです。」
「カイ」
「はい」
「お前」
「何でしょう?」
「過保護すぎるぞ」
「……」
沈黙。
そして。
「……婚約者ですから」
「二回目だぞ、その言い訳」
「便利ですから」
◆
そして。
決定的な出来事が起きた。
学院の庭。
イザベラが小さな子犬を見つけた。
「かわいい……」
しゃがみ込み。
嬉しそうに微笑む。
それを。
少し離れたところから見ていたカイ。
「…………」
固まっている。
「カイ?」
「……はい」
「どうした?」
「いえ」
「何か変だぞ」
「……あまりにも」
「何が?」
「可愛らしくありませんか?」
「犬が?」
「イザベラちゃんが」
カイが少し興奮したような顔をする。
「そうです」
「今すぐお前を解任するべきだと強く思う。」
◆
だが。
その後。
イザベラがこちらへ走ってきた。
「カイ様!」
「どうしました?」
「見てください!」
腕の中には。
さっきの子犬。
「この子、すごく可愛いんです!」
「……そうですね」
「触ってみますか?」
「……」
カイが。
恐る恐る子犬へ手を伸ばす。
撫でる。
子犬が尻尾を振る。
「…………」
「カイ様?」
「……可愛いですね」
「でしょう?」
イザベラが笑う。
それを見たカイは頬を赤らめてもじもじしだした
俺は。
その光景を見て。
ようやく理解した。
こいつは
ロリコンだ!
逃げろイザベラ!




