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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第9章 落日の長安

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91話 手紙の内容

「フリョウ、いったいどうやって宛を攻略するのだ」


「んー。どうしようかなー。お前さん、最近俺にたいする尊敬の念が足りないのではないか」


 面倒くさい男だ。それにもともと俺はフリョウを尊敬しているわけではない。


「......そこを頼みますよ先生。きっとエンさんも喜びますよ」


「そうか、そうだよな。よし策を授けてあげよう」


 俺はフリョウの策を聞き、思わず無理だと言ってしまった。


「よいか、よく聞け。城と言うのは、どんなに固めようと必ず外に繋がる通り道があるのだ。水を引き入れる道、排泄を出す道などだ。宛は大きな街だ。そこの民を支える水路が必要なのだ」


「それは分かる。だけどその道は人が通るには狭いのでは」


「狭い。だが、特別に訓練された者ならば通れるはずだ」


「特別に訓練された者......」


「お前さんの諜報部隊は何の為にいるのだ。ただの伝令か?もっと上手く使ってやるのだ」


 セキカを呼んだ。ギエイはやはり伝令の方に向いている。こういった潜入はセキカに頼らざるをえない。


「何の用だ。まさかまた裸で誘惑しろと言うのか」


 セキカはコハンがいるのを見て、顔を赤らめながら言った。


「ほー!お前さんたちはそんなお色気戦法も出来るのか!そっちの策でもいいな!」


「そんなことはしない!」


 フリョウは少し残念そうであった。コハンは扇で口元を隠しクスクス笑っている。


「呼んだのは他でもない........」


 策を伝えると、セキカはスッと消えて行った。フリョウは物音もたてずにいなくなったのを見て、ぶるっと震えていた。


「......気を付けろよ、フリョウ。セキカを怒らせるとお前なんて瞬殺だぞ」



 すぐに異変が起こった。

 宛の守将は、兵や民がバタバタと倒れていくのを呆然と見ていた。みんな泡を吹いて倒れている。毒だと思った。だが、どうやってここまでの被害が出たのか、皆目見当もつかなかった。


 守将はいったん落ち着こうと水を飲んだ。


「ぐっ!しまった.....水か.....」


 守将は泡をふき、のたうち回り絶命した。


「申し上げます!井戸にこのようなものが!」


 兵が駆け込んできたが遅かった。すでに守将はこと切れている。兵の手には紫の札があった。


 セキカは排水路から忍び込み、井戸という井戸に、フリョウが作った札を貼っていった。毒の符術である。たちまち水は汚染されていく。だが、水の見た目は毒が入っているとは思えない程、透明なままであった。


「効果てきめんだな...」


 セキカは家屋の上から、バタバタと倒れる兵を見下ろし、狼煙の合図を出し、その場を離れた。


「合図だ!ドウサイ始めろ!」


 城壁に梯子がかかる。一部、水を飲んでいない兵が抵抗したが、守将が死んだことが伝わり降伏していった。門が開き、俺は入城した。


 中の様子は地獄絵図であった。何千、何万という人が苦しみ悶えている。泡を吹き既に絶命しているものも少なくない。


「ボクスウというやつは酷いやつだ!魏は後秦を見限った挙句にこんな酷いことをする!」


 フリョウは叫んで、解毒剤を配って歩いた。俺はボクスウがやったことにするには無理があるよなと思いながらも、フリョウを真似て、一緒に解毒剤を配った。


「どうだ、ユウよ。上手くいっただろ」


「ああ......でも今回だけだぞ。これは民の恨みを買う」


「ふん。そういうものか。まあ、同じ手に引っかかるやつは、そうはいないだろうさ」


 

 ボクスウは宛に東晋の旗が上がるのを信じられない思いで見ていた。肩の傷はさほどでもない。包帯を巻き終えて、これから出撃するつもりであったのだ。それが朝のうちに東晋が宛を落とし入城してしまっている。


「いったいどんな魔法を使ったのだ......やむを得ない。邯鄲に援軍の要請をしろ」


 東晋の次の目標は潼関だ。その手前で迎撃する。その為には兵が足りなかった。宛の後秦の軍と連携を取るべきだったのだ。だが、国が長安明け渡しを強く要求した為に、宛とボクスウとの間の連絡が途絶えてしまっていた。


「弘農まで下がるぞ。そこで援軍の到着を待つ」


 弘農のあたりはゆるやかな丘陵地帯でボクスウの騎兵も動かせる場所だ。東晋の軍は6万だ。援軍が来れば、打ち砕くことが出来る。ボクスウは馬腹を蹴り、即座に弘農に向かった。


 

 宛が落ち着きを取り戻すまで何日か時間が掛かった。それでもまともに攻めては、まだ落とす事は出来ていなかったはずだ。宛の兵たちは毒を使い民を巻き込んだことで、俺のことを恨んでいた。このまま東晋に軍に組み込むことは出来ない。俺は宛の兵たちの武器を没収し、路銀を与え解散させた。


「そろそろ使者がカクレンのところに着くことかな......本当に俺たちと手を組むと思うか」


「手を組むさ。断る理由はない」



 カクレンはリュウユウから届いた手紙を読んでニヤリと笑った。


「リュウユウが手を組みたいと言っている」


 カクレンはアリに手紙を渡した。


「こ...これは、まるで恋文みたいですが.......」


「ははは!リュウユウがこんな甘い文句を書けるものか!本人が知らないうちに勝手に書かれたんだろうよ」


「で、どうするので」


「長安で会ってやる。あの男とは戦ではないところで話がしたい。それに提示された条件は悪くない」


 手紙に書かれていた条件は、

 東晋の長安攻めに対して介入しないこと、

 共闘し魏を討つこと、

 魏の太原を共に攻め、夏の領土とすること

 東晋は夏に対し、金五百斤を支払うこと


 そして、リュウユウがカクレンと一夜を共にしたいと書いてあった。


「アリ。出陣せよ。潼関を内側から攻め、共に戦うのだ」


 アリは五万の軍で出陣した。渭水を通って潼関に向かった。


 カクレンは何度も手紙を読み返して興奮していた。本人が書いたものではなくても、その姿を想像せざるとえない。体の奥が火照るのを感じ、ゆっくりと指を差し入れた。



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