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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第9章 落日の長安

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89話 激突 魏の猛将

 フリョウの降伏勧告の手紙は届けられているはずであったが、宛は開門する様子が無かった。


「まさか効かなかったのか」


「そんなはずは無い。俺の符術は完璧だ。読んだら必ず、書いてある通り行動する。あるとすれば、読まずに破り捨てたのだ」


 俺は長安まで次々と開城していくことを期待していたが、そう簡単にはいかないようであった。


「......手紙の表紙に必ず読めと書けばよいのでは」


「それだ!お前はアホだが、なかなか賢いな。次はその手で行こう!」


 だが、フリョウが再び送った降伏の使者が手紙を渡す前に斬られてしまった。


「......どうやら、新野から逃げたやつが宛の守将に手紙に警戒しろと伝えたようだな」


「仕方ない。やはりここは正攻法で攻城しよう。敵は2万だ。力攻めすれば落ちる」


 俺は6万の兵を広げ、宛を包囲しようとした。だが、その時、土煙を上げながら騎馬の一団が近づいてきた。魏の旗を掲げている。ボクスウだ。


「もう宛を包囲しているだと!?新野が陥落したのか。このまま突撃する!大将首を取る!」


 コハンが即座に迎撃の構えを指示する。広がろうとした兵は、そのままボクスウを包囲しようと鶴翼に動いた。右にエンの2万、左にドウサイとケイシャンの1万、中央に俺の3万が位置する構えになった。


「敵は3万だ。囲って袋叩きにするのよ」


 ボクスウは鶴翼に対して、円形に陣を組んだ。そして回転を始め、俺のいる中央に向かってきた。


「ほう。車掛かりか。これは珍しい」


「感心している場合か。どう対処する」


「知らん。実戦はお前たちで頑張れ」


「おい!それでも軍師かよ!」


「じゃあ、まともに受けるな。広がってかわせ」


 俺はフリョウの言葉に舌打ちして、合図を送った。シュクユウの二千の騎馬隊と、ジンキの一千の騎馬隊が一斉に飛び出した。俺も馬に乗り麾下の五千を率いて前に出た。


 ジンキが真っすぐに回転しているボクスウの軍に突撃していく。だが、一瞬で回転に飲み込まれた。そしてジンキの首が飛んだ。


「ちっ!」


 シュクユウは飛刀を立て続けに投げた。ボクスウは炎が噴き出た矛を回し、飛刀を弾き飛ばす。シュクユウとボクスウが交錯した。


 シュクユウの体をボクスウの矛が捉えた。シュクユウは何とか剣で矛の横薙ぎを受けたが、剣は真っ二つに折れ、馬ごと吹き飛ばされた。


「きゃあああ!」


 投げ出されたシュクユウに回転する騎馬が襲い掛かる。南蛮兵たちはシュクユウを守ろうと必死に盾になった。


「ツノっち!飛ばせ!」


 俺は馬腹を蹴り、シュクユウの方に駆けた。南蛮兵たちが次々と弾き飛ばされている。俺は後続を引き離す形で単騎で飛び出す。


「シュクユウ!」


 魏の騎馬に轢かれる前に、何とかシュクユウの手を取り馬に引き上げた。


「ありがとう......危うくあなたの子を産めなくなるところだったわ....」


「え!まだそんなこと言ってるのかよ!しっかり掴まっていろよ!」


 俺は反転して本陣に引き返した。シュクユウの息が荒い。俺の背中がシュクユウの血で滲んできた。


「逃がすな!あれが敵将だ!」


 ボクスウが俺に向かって突撃してくる。シュクユウを背負ったままでは戦えない。とにかく逃げた。南蛮兵も、俺の麾下の兵もボクスウに蹴散らされ散り散りになっている。俺は何とか本陣に駆け込み、シュクユウをフリョウに託した。


「符術で血を止めてくれ!」


「だから、まともにぶつかるなと言っただろ!この馬鹿者!」


 俺はジンキを討たれた怒り、シュクユウを傷つけられた怒りがこみ上げてきた。再び、馬に乗りボクスウに向かって駆ける。


「ボクスウ!」


 棍棒と矛がぶつかる。ガキーンという激しい金属音が鳴り響く。体躯では俺の方が大きい。だが、ボクスウの力は尋常でなかった。


「つ、強い......!」


「なかなかやるではないかリュウユウとやら」


 何度も交錯し、その度に激しい音が響いた。手が痺れてきている。この感覚はカクレンと戦って以来であった。更に数合打ち合い、俺は棍棒を空振りし距離を取る。


「逃げる気か!」


 ボクスウが追う姿勢を見せたところで、俺は振り返り棍棒を振った。グンっと棍棒が伸び、ボクスウの脳天目掛けて落ちていく。


「くっ!伸びる魔道具か!」


 ボクスウは咄嗟に矛を掲げ、棍棒を防いだ。


「これも受けるのかよ!」


 想定外の攻撃であったはずだ。それでもボクスウは対処して距離を詰めてきた。俺は棍棒の長さを元に戻し、再び打ち合う。お互い汗をびっしょりかき、ひたすら武器を振るった。


 隙を見出すことが出来ない。俺は魏の騎馬に包囲されていることに気が付いた。魏軍はなおも回転を続け、近づく俺の軍を弾き飛ばしている。俺一人だけが、回転の中に取り残されてしまった。


「ふん。逃げられないぞ。貴様らの軍では魏に勝てないのが分かったか!」


「舐めるな!カクレンと比べれば、お前などひよっこだ!」


 ボクスウは俺の言葉に更に火が付いたようだ。一撃、一撃が更に重くなっていく。ボクスウの矛が纏う火がじりじりと俺の肌を焼いた。


「終わりだ!リュウユウ!」


 俺も棍棒を持ち直し、魔力を手に集中した。


 バキーン!という音と共に、お互いの武器が割れた。同時に俺もボクスウも衝撃で弾かれた。


 その時である。回転を続けるボクスウの軍にいきなり水流が亀裂を入れ、外からエンの軍が突入してきた。


「貴様!生きていたのか!」


「ボクスウ!その方から離れなさい!」


 エンの水流剣がボクスウを襲う。


「この裏切り者め!ただではおかないぞ!」


 ボクスウは折れた矛では水流剣を受けることが出来ず、逃げ出した。回転が止まり、一つの塊になって後退していった。


「エンさん......助かった」


「あの男と互角に打ち合うなんてたいしたものね」


 俺はエンに聞きたいことが山ほどあった。裏切り者と言ったボクスウの言葉が気になった。もともと魏の将軍であったのか、ボクスウとはどういう関係なのか、次々と疑問が頭をよぎった。


「......後で答えるわ。今は陣形を整えて」


 俺の考えていることが分かったのか、エンは俺が口を開こうとするのを制した。エンと目が合った。俺は返り血を浴びたエンの姿を思わず美しいと感じてしまっていた。






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