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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第6章 集結

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70話 思いたったら吉日

 リンシとチョウセキがギエイに案内され俺のところにやってきた。リンシは薄っすら汗をかいており、体についた草を払っていた。朝露で湿った草が体に貼りつき、少し苛立っていた。


「ずいぶんなところね......酷い道を歩かせられたわ」


「潜伏しているのだからな。簡単に通れる道だと意味ないだろ。それより、シュクユウとジンキが世話になって助かっているよ」


「礼には及ばないわ。あなたが立ち上がった時に必要な軍よ」


 リンシとチョウセキと話し合った。このところ、カンゲンの軍が活発に動いており、北府の残党を追っているという。シュクユウとジンキの軍はうまくかわしているが、いつまでも逃げられるわけでは無い。


「カンゲンの世になって状況は悪くなる一方だわ」


「儲かっているのだろ?」


「まだ何とかね。でも本当に儲かっているのはカンゲンに繋がる商人だけよ。民は困窮しているわ」


 俺は路地裏で物乞いする子供たちの姿を思い出した。重税に苦しみ、民の生活はますます厳しくなっている。リンシたち、カンゲンとの繋がりが薄い商人たちに課せられる税も重くなっているという。


「ところで.......また美しい女性をお仲間にしたようね」


 俺はドキっとした。エンとは何度、顔を合わせても言葉に詰まってまともな会話にならないのだ。エンのいる部屋の扉が開いており、書を読む姿が見えた。


「あの人はやめておきなさい......」


 リンシはそれだけ言い、他に何も言わず立ち去った。


 翌日、リンシは荷物を抱えた男たちを連れ、再びやってきた。


「また来たのか....その荷物はなんだ?」


「アイを呼んで」


 俺は意味が分からず、とりあえずアイを呼んだ。アイは部屋に広げられた物を見てハッとしていた。


「...まさかこれって」


「そのまさかよ。ユウ、アイ。今から婚礼の儀を行います!」


「え!?婚礼!?」


 俺もアイも目を丸くして驚いた。


「な.....なによ、急に!今ここで式を挙げると言うの!?」


「そうよ。告白したんでしょ!もう一緒に寝たの!?あなたがささっとしないから、ユウが他の女に目を奪われるのよ!」


「いやいやいや、そんなことないって!」


「ふん。それはどうだか。昨日もエンさんを見てドキドキしていたじゃない」


「はあ!?ユウあなた!そんな目でエンさんを見ていたの!?」


 俺は汗が止まらなかった。本当にリンシの女の勘は鋭い。俺とアイはリンシが連れて来た侍女たちのなすが儘に、着替えさせられ、髪形を変えられ、化粧を施された。


 あっという間であった。


「こういうのは吉日というのを選ぶのではないのか......」


「この戦乱の世に関係ないわ。思いたったら全て吉日よ」


「なんだ、なんだ、何が始まるのだ」


 みんな集まってきた。そして俺とアイの姿を見てドッと噴き出した。


「ようやく式を挙げる気になったのか!ユウ!似合っているぞ」


 ボクシは腹を抱えて笑っていた。


「ボクシさん。あなたが媒人するのよ」


「え!?俺が!なんでよ!」


「あなたしか適任いないでしょうに」


 ボクシは辺りを見渡したが、みんな同意の顔をしていた。


 本当は小難しい手順があるのであろう。だが、リンシはほとんど省いたようだ。流暢に祝いの口上を述べると、俺に「さあ」と促してきた。


 俺は何をしていいか分からなかった。アイの方を見ると何か待っているようであった。


(そうだな。結婚式だしな。こうするしかないよな)


 俺はアイの方を見ると、顔をこちらに向け接吻した。アイの目が見開かれた。


「馬鹿!何してるのよ!」


 俺は分けがわからずみんなの方を見ると、驚愕の顔を浮かべていた。リンシもボクシも固まっていた。


「....ユウ。ここは杯で酒を飲むところだぞ......」


「おい!先に言えよ!」


 俺がそう言うと、みんな爆笑の渦に包まれた。エンもクスクスと笑っていた。ドウキは泣いていた。もともとアイの家人なのだ。感極まるものがあるのであろう。


 俺はもう一度、アイに接吻した。今度はアイは驚かなかった。拍手が湧く。俺は幸せでいっぱいであった。それがいつまでも続けばいいと思った。



 夜は酒宴になったが、それはそれほど長くもなくすぐに散会した。


 初めてアイと寝室を共にした。アイの顔は赤かった。俺もどうしてよいか分からなかったが、手を肩にかけ押し倒した。


「ユウ....愛しているわ」


「俺もだ...」


 俺はおもむろに立ち上がり、扉を開けた。部屋の外には、ボクシたちが聞き耳を立てていた。


「お前ら何しているのだ」


「いや、これも儀式の一環だろ」


「いい加減な事を言うなよ!あっちいけ!」


 何というかよくある話すぎて笑えた。そんなに俺たちがまぐあう声を聴いて楽しいのかよと思った。


「まったく....本当に騒がしい連中ね」


 アイは呆れながらもクスクス笑っていた。


「では、改めて.....」


 燭台の灯りを消した。初めての夜は甘酸っぱく、あっという間に終わったと感じた。



 その後、何日か昼夜問わず飲み会が続いた。今度は誰が結婚するんだと騒いでいた。男の方が多いとはいえ、なんとも下品な話で盛り上がっていた。


「エ、エンさん。俺と付き合ってくれ!」


 なんとシャカイがエンに告白した。みんな歓声を上げる。酔った勢いとはいえ、あの冷静なシャカイが顔を真っ赤にしている。


「興味ないわ。ごめんなさいね」


 爆死であった。モウシュウシがシャカイの肩を叩き笑いながら慰めていた。エンの周りには男たちが集まり、あれやこれや聞き出そうとしていた。エンは困った顔を浮かべながらも、ニコニコしていた。


「あの女....変わったな」


 セキカは一言呟き、酒もそこそこに立ち上がった。ギエイもフコウシもこの拠点を探られないように警戒している。酔っぱらうわけにはいかないのだ。


 馬鹿騒ぎが終わり、リンシも戻っていった。俺たちの新婚生活は特に何かが変わったわけではない。ただ、夜は一緒に寝て、朝は一緒に起きるだけだ。それだけでも幸せであった。


 だが、その幸せも吹き飛ぶ事態が起きた。


 リュウロウシがカンゲンに対して反旗を翻したのだ。

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