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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第6章 集結

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60話 心変わり

 北府に帰還した。激闘で多くの命を失ったが、将軍になって初めての戦で勝利した。俺は凱旋した気持ちで堂々と北府の門を開けた。


「あれ?誰もいない......」


 北府の中は閑散としており、使用人が掃き掃除をしているだけで兵の姿はなかった。俺は館に入り、政務室に行ったがリュウロウシも不在であった。


「出征でもしたのか......」


 俺は使用人を捕まえ何があったか聞いた。使用人は困った表情を浮かべ言い淀んでいた。


「そ、その......リュウロウシ様は建康に召喚されました」


「召喚だと?どういう事だ」


 俺は使用人に問い詰めても、これ以上のことは聞き出す事が出来なかった。


「ユウ!戻ったか!遅いぞ!」


 ケイシャンだった。リュウロウシの息子である。


「親父が...親父がカンゲンについた......」


 俺は驚愕した。ケイシャンが言ったことを理解できなかった。カンゲンについたとはどういう事だ。ケイシャンは事の経緯を説明してくれた。



 俺が益州に向けて出発した頃であった。リュウロウシの元にカンゲンの腹心のシュカが訪れた。


「リュウロウシ将軍。ご無沙汰しております。襄陽での戦以来ですね」


「......何しに参った」


「そんな怖い顔しなくてもいいではありませんか。今日は我が主、カンゲン様のお言葉をお伝えに来ました」


「カンゲン殿が何の用だというのだ」


 シュカは政務室の中をゆったりと歩き、すぐには話そうとしなかった。棚に飾っている皇帝から北府に与えられた感謝状を眺めていた。これまで北府の軍は数々の戦功を上げている。中でも淝水の戦いで秦の符堅を打ち破ったのは、長い中華の歴史の中でも類を見ない程の戦果であった。


「シャアン様というのは偉大だったのですな」


「今更、何を当たり前の事を言っているのだ」


「この感謝状の多くはシャアン様に与えられたものだ。リュウロウシ将軍、あなた宛てのものは少ないですね......おや?これはリュウユウ将軍のものですか。彼は若いのに大したものだ」


「何が言いたい。ワシも暇では無いのだ。そろそろ本題に入ってもらおうか」


「これは失礼しました。単刀直入に言います。カンゲン様の元に来て欲しい」


「......」


「カンゲン様はあなたの手腕を高く評価しています。中華は秦が滅び、魏が台頭してきています。かつての淝水のような戦になった時、東晋は団結して戦わなければなりません」


「......当然の事だ。北府はその為に存在している」


「そうです。北府が西府がと争っている場合では無いのです。カンゲン様は二つの府が一つになり、共に魏と戦うことを望んでおります」


「ぬけぬけと言いおる......カンゲン殿の野望を知らないとでも思ったのか」


「それは誤解です。カンゲン様は誰よりも国の事を憂いています。陛下の身を守る為に将軍のお力が必要なのです」


「......」


「それにこの感謝状......いずれリュウユウ将軍のものに塗り替えられるのではないですか?あなたの北府の総帥の座も安泰ではありますまい」

 

「リュウユウが育つなら問題ない。シャアン様の願いでもある」


「......本当にそうお考えですか。あなたは焦っているのでは」


「黙れ!お主にワシの何が分かる!帰ってもらおうか!」


「......分かりました。非礼はお詫びします。ですがご自身の気持ちをよくお考えください」


「帰れと言った」


 シュカは一礼し立ち去った。リュウロウシは椅子に深々と腰掛けため息をついた。シュカの言うことを反芻した。



 リュウロウシは息子のケイシャンに相談しようか悩んだ。だが答えは分かっている。あの息子は裏切り者と罵るに違いない。棚の感謝状を見た。これが全てリュウユウのものだけになる。想像すると、どこか寂しく、そして悔しくもあった。


(ワシはあの男に嫉妬しているのか......)


 五十をとうに過ぎていた。後身を育てるのが余生と思ってもいたが、戦に出た時の高揚を忘れていなかった。まだ戦える。まだ戦功を上げられる。そして大将軍になる機会はまだある。


(己の欲望の為にカンゲンについてよいのであろうか)


 シャアンは許さないだろう。長いこと共に戦ってきた。シャアンの皇帝に対する忠義心は本物であった。簒奪を狙うカンゲンは排除する。それがシャアンの晩年の目標であった。だが、その前に寿命が来た。その想いはリュウロウシ、そしてリュウユウに託された。


(いや、正確にはワシではなく、リュウユウだけに託された......)


 その実、リュウロウシはシャアンほど皇帝に対する忠義心は無い。皇帝アンテイは知的障害を持っており、話すこともままならない。シバ一族による近親婚の弊害であった。血が濃すぎるのだ。東晋にはアンテイに代わる皇帝が必要であった。


 シュカの訪問から二週間後、リュウロウシは建康に赴くのであった。


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