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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第5章 西征編

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57話 阿鼻叫喚

 セキカは屋根裏に潜み、シュクユウと長老たちのやり取りを見ていた。シュクユウは弛んだ部族長を斬り、綱紀粛正しようとしていた。だが、長老たちの反対にあい断交できなかった。


「......操り人形か」


 屋根裏を伝い、シュクユウの自室まで来た。鎧を外し、寝床に横になっていた。もっとも鎧と言っても、その意味をなさない程、肌を露出している。肌は小麦色で滑らかである。美しい瞳から涙が溢れていた。


 セキカは持っていた短刀をしまい屋根裏から出た。



 一昨日の軍議の後、コハンに呼び出された。


「セキカさん。どう?これからわたしと夜を過ごさなくて?」


「なっ.......馬鹿なことを言うな。女同士だぞ」


「ふふふ。何も珍しいことではないわ。この間、あなたの可愛い胸を見て、ちょっと興奮しちゃったの」


 セキカは狼狽した。コハンのチャイナドレスの姿を思い出してしまった。迂闊にもあの時、セキカもコハンを美しいと思ってしまったのだ。


「可愛い反応をするわね。そんなので暗殺者として務まるのかしら」


「そ、それとこれとでは話は別だ。いったい何の用だ」


「まあ、守将を討った腕前は確かだわ。それを見込んで頼みがあるの」


「なんだ」


「シュクユウの暗殺......」


「そうか。下らない冗談など言わず、はじめからそう言え」


「あら?冗談ではないわよ。この任務受けてくれるかしら」


「受ける。お色気で敵を誘い出すよりマシだ......」


 こうしてセキカは成都に侵入した。城は軍で守られ、鼠が侵入する余地もないように見えたが、用水路など内に繋がるものは必ずある。兵が通るのは不可能であるが、セキカにとっては造作もない。


 シュクユウはシバチョウを散々に破った猛将という印象があったが、近くで見ると噂先行であったようだ。確かに腕は立つ。だが、カクレンのような圧力を全く感じない。寝込みを襲えば暗殺は容易であろうと思った。


 だが、気が変わった。シュクユウは南蛮の長老の操り人形であり、お飾りであった。殺したところで代わりが立つにすぎない。そして何より、セキカは可哀想に思えた。



「シュクユウは討ちましたか?」


「......いや、任務は失敗だ」


 コハンはセキカが嘘を言ったと分かった。どこか目が泳いでいる。もしかしたらセキカは暗殺者としては不向きなのかもしれない。


 セキカはなぜ失敗したのかを話した。失敗では無かった。セキカが躊躇ったに過ぎない。


「つまり、セキカさんはシュクユウが可哀想だから殺せなかったというのですか」


「........」


「セキカさんは暗殺者の割に優しいですね。ますます好きになりましたわ」


 セキカは顔を赤らめた。コハンは、こうも簡単に顔に出てしまうのも暗殺者には不向きだと思った。


「リュウユウ将軍に伝えましょう。ご一緒に来てください」


 俺は軍議を開いた。昼間に騎馬隊で敵を立ち割ったことから士気があがっていた。だが、このまま南蛮が黙っているとも思えない。


「敵はユウを包囲しようとして広がったのが裏目に出た。明日はもっと固まるだろうな」


「やはり漢人の兵を突撃させてくるか。初日のように対処するしかないか」


 ボクシとシャカイが話し合っていると、コハンはセキカを連れて入ってきた。


「遅いぞ。コハン」


「ふふふ。女性にはいろいろあるのですよ」


 みんな軍議の場に何故セキカがいるのかという顔をしていた。俺もセキカを呼んでいない。軍議に参加するのは、ドウサイやカンシュクなど部隊長に限られている。


「セキカのお話を聞いてください」


 コハンに促されセキカが口を開いた。


「.......コハン、勝手に暗殺など指示しては困る」


 俺はセキカの話を聞き終え、コハンを窘めた。コハンはクスリと笑うだけであった。


「シュクユウの立場は分かった。仲間にしたい」


 みんな驚いていた。


「同情か」


「違う。南蛮は非道な奴らの集まりだと思ったが、本当に酷いのは長老とその一味だけだろう。討つのはそいつらだけでよい。シュクユウまで討つと怨念だけが残る」


「心を攻めるのですね。ショカツリョウのように」


「コハン、ユウにそんな例えを出しても無駄だぞ」


「ボクシ、お前失礼なやつだな。もっとも本当のことだが」


 俺がそう言うと、笑いが起きた。俺は咳払いして場を制した。


「と、とにかくシュクユウは殺さない。南蛮の長老たちは捕らえ処断する。それでよいな」


 みんな頷いていた。その後は配置の再確認や、補給の状況など細かい話をして散会した。


 翌日。

 前面にいた漢人の部隊が左右に開いた。奥から南蛮の兵が出て来る。そして真ん中から異様なものが出てきた。


 象兵だ。シバチョウは20体の象兵に踏みつぶされ混乱に陥り壊滅した。南蛮が繰り出してきた象兵は50体はいた。その巨体を悠々と揺らし、地面を鳴らしながら近づいてくる。


 象兵は俺の方ではなく、レイセキの方に向かってきた。象兵が止まる。


「あれが象兵か。弓隊構えよ」


 象兵が一気に加速し突進してきた。大地が揺れていた。


「斉射!」


 レイセキ軍から無数の矢が放たれる。だが、象兵の分厚い皮膚に矢は刺さらなかった。


「次!火矢を放て!」


 動物は火に弱い。レイセキは火魔法による攻撃を命じた。無数の火矢が飛んでいく。だが、象兵は怯まなかった。長い鼻を振り回し、矢を叩き落とし前進を続ける。


「弓隊下がれ!全軍後退!」


 矢が通じない。勢いが落ちない。レイセキは危険を感じ、歩兵隊を後退させる。まともにぶつかっては壊滅する。そして騎馬隊を繰り出し、象兵を横から襲撃した。騎馬隊は槍を象に向かって投げる。それも通じなかった。象兵の方向を変えようと、騎馬隊は左右に走った。


 だが、象兵は騎馬隊の陽動に乗らなかった。真っすぐに歩兵目掛けて突進してくる。歩兵の後退より先に象が飛び込んできた。何百という兵が衝撃で宙に舞った。


 象兵は歩兵たちを踏みつぶす。長い鼻先には刃がついており、歩兵の体を串刺しにし、高々と持ち上げ、放り投げた。阿鼻叫喚であった。


 長老たちはその光景を見て、手を叩いて喜んだ。レイセキの軍が下がっていく。


「ははは!どうだシュクユウ!これが南蛮の戦いだ!」


「よく見ろ!力で蹂躙する!積年の怨念を晴らすのだ!」


 長老たちの熱狂を尻目に、シュクユウは馬に乗った。象兵でいくら崩しても最後は歩兵と騎兵による白兵戦だ。出撃の指示を待った。


 軽騎兵1万が突撃を開始した。レイセキの中央が下がったことで、左翼と右翼が飛び出したようになっている。軽騎兵は左翼の横腹を抉ろうと進んでいった。漢人の軍も前進を開始する。


 南蛮は左翼に集中した。ここで3万を葬ることが出来れば、戦局は大きく南蛮側に傾く。レイセキは中央を後退させながらも、横に移動し左翼の援護に入った。


 左翼は乱戦になった。象兵は暴れ終わり戻っていく。漢人の兵も乱戦では自爆は出来ない。


「いまこそ我らの力を示す時だ!西府の兵たちよ!奮起せよ!」


 レイセキは檄を飛ばした。力と力の殴り合いで負けるわけにいかないのだ。左翼の戦いは激戦になった。俺はレイセキを援護しようと出撃を命じた。


 ボクシが指示を送る。


「ドウサイ!シャカイ!歩兵隊は敵の側面を突け!」


「カンシュク!モウチョウ!弓隊と騎馬隊は歩兵隊の援護!」


 成都の城門が開いた。

 シュクユウだ。2千の騎馬隊で出てきた。


 戦場を横切り移動する歩兵隊を突こうとしている。俺はモウチョウ、カンシュクと共にシュクユウの迎撃に向かった。


「戦だ!決して油断するなよ!」


 ボクシが出撃する俺に向かって言った。俺は頷き馬腹を蹴った。



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