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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第5章 西征編

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45話 石門の激闘

 桟道の補修が終わった。夏軍は二度と焼かれまいと、昼夜を通して水魔法の部隊を待機させ警戒していた。カクレンは進軍を命じる。


 石門。漢中へと続く石のトンネルであった。ここを崩しても侵入は出来なくなるが、長年の土魔法による補強でその硬さは金剛石以上となり、とても崩せるものではなかった。


「来たぞ」


 ドウサイはショカツとテイゴに声を掛ける。額に汗が滲む。カクレンに手も足も出なかった記憶が蘇る。


 石門の幅は狭い。同時に攻めて来れるのは100人が限界だ。局地的には100人対100人の戦いではある。だが、敵は入れ替わり立ち替わりで押し寄せるのに対して、こちらの数は限られている。


「激戦になるぞ......」


 ショカツは大剣を抜いた。テイゴもコウビも矛を構えた。だが、夏軍はすぐに突入して来なかった。石門の入り口で部隊が何やらブツブツ唱えている。


「魔法がくるぞ!」


 ドウサイは慌てて大盾を構えろと叫んだ。水魔法部隊による水弾魔法が襲ってきた。無数の水弾が大盾に当たり、ズドドドドドと激しく打ち鳴らす。


「耐えろ!長くは続かない!」


 どれだけの水弾を浴びせられたか分からない。水弾が止んだ時には、鉄の盾はボコボコに変形していた。何とか耐えた。手が痺れ、足もガクガクしていた。


 ドウサイが顔を上げると、夏の騎馬隊が突撃してきた。


「固まれ!衝撃に耐えろ!」


 狭い石門の中で、騎馬と歩兵の肉体がぶつかり合う。鈍い金属音が石門に鳴り響く。騎兵と歩兵の体が吹き飛ぶ。


「立て直せ!次が来るぞ!」


 騎馬隊の波状攻撃。ドウサイはそう思ったが、その姿を見て驚愕した。


 カクレンが早くも突入してきた。


「デカブツが増えたな!者ども狩り取れ!」


「くっ!ショカツ、テイゴ、コウビ!俺たちでカクレンを止めるぞ!」


「他の者たちは、周囲の騎馬の相手をしろ!」


 水弾と最初の騎馬の攻撃で、歩兵団の1段目は崩れかけている。2段目と入れ替わり、夏の騎馬隊とぶつかり合う。


 カクレンはこの狭い中でも馬を乗りこなし、縦横無尽に駆けた。鉄鞭を振るうと歩兵たちが吹き飛んでいく。ショカツの大剣も、テイゴとコウビの矛も巧みに避けた。


 ドウサイも殴りかかるが翻弄され、カクレンを捉えることが出来なかった。


「ははは!どうしたデカブツども!所詮はウドの大木か!」


 カクレンは返り血を浴びる度に狂乱する。鉄鞭がますます鋭くなっていった。


「あいつ、前に戦った時より強いぞ!」


 以前はもっと冷静な感じであったが、今のカクレンは別人のようであった。顔が紅潮している。


「もっと!もっとだ!もっと我に血を浴びせよ!」


「まずい......このままでは崩される......」


 ドウサイは何とかカクレンの馬の脚を止めようと、地面を土魔法で崩そうと試みた。だが、石門の床はビクともしなかった。


「テイゴ!回り込め!」


 コウビとテイゴがカクレンを挟み討ちにしようとする。だが、鉄鞭は光の輪を放ち、2人の矛を二つにへし折った。


「くそ!3列目!行け!」


 ドウサイは叫んだ。歩兵の3列目が入れ替わりで前に出る。夏の騎馬隊も第三波目が来た。


「はあ、はあ、俺たちではカクレンを止められないのか!」


 ショカツの大剣が空をきる。カクレンの鉄鞭が激しくショカツの体を打った。


「ぐあああああああ」

 

 ショカツが吹き飛ばされる。起き上がることが出来なかった。


「そろそろ、お前たちの顔も見飽きた。首を貰うぞ」


「ドウサイ!下がれ!」


 ドウキの石礫がカクレンの視界を塞ぐ。シャカイとモウシュウシの歩兵が援軍に来た。ドウサイたちの劣勢を聞きつけ、なんとか味方の歩兵を掻き分け100人ほどを連れ、前に出てきたのだ。


「このチビ!また邪魔するのか!」


 カクレンの狙いがドウキに移る。ドウサイはその隙に大斧を薙いだ。カクレンが鉄鞭で受け止め、弾き飛ばす。ドウサイは大斧ごと吹き飛ばされた。


「化け物か!あの女!」


 モウシュウシは初めて見るカクレンの戦いぶりに驚いた。


「このままではまずい!モウシュウシ!やれ!」


「し、しかし......」


 シャカイはモウシュウシのズボンを下ろした。モウシュウシは渋々、尻をカクレンに向け気張る。


「貴様!妾を侮辱する気か!」


 カクレンは顔を真っ赤にし、モウシュウシに襲いかかった。


 爆音が石門の中で響いた。硫黄の匂いで充満する。


「おのれ!妾に向かって屁をするとは!許さぬ......はっ!まずい下がれ!」


 屁は引火し爆発した。敵も味方も巻き込み、吹き飛ばした。それでも石門はビクともしない。


 煙が晴れるとカクレンの姿は無かった。夏軍は後退していた。


「どうだ.......俺の屁の威力は......」


「......助かったぞ」


 歩兵団の負傷者がとんでもない数であった。馬に轢かれ骨折している者や、鉄鞭に打たれ、肉が裂けている者、火傷を負っている者もいた。ショカツが担架に運ばれてくる。体に痛々しく鉄鞭の跡があった。


 アイの後方支援部隊は大忙しであった。初日から激戦であった。


「ショカツは大丈夫か」


「命に別条は無いわ。でも、この戦いでは復帰できないかも」


 俺はアイがショカツの胸に手を当て続けているのを見ていた。


「お前も無理するなよ......戦はまだ始まったばかりだ」


「分かっているわ」


「くそっ。妾にこのような屈辱を与えるとは」


 肉体的、精神的な屈辱は何度も受けてきた。それは女として得た物もあり耐えられた。だが、屁を浴びるというのは人としての尊厳を踏みにじられた気がして、腹が立って仕方なかった。


「石門に入る度に爆発されてはたまったものでは無い。何か手を考えよ」


「今日のは初めての事で面食らいましたが、分かっていればどうとでもなります。ここは我にお任せを」


 リョヘイという将軍が言った。カクレンは頷き、自分の軍営の中に入った。


 侍女に湯を運ばせた。カクレンは血を浴びた鎧を外す。鎧の汚れを侍女が丁寧に拭いていた。


 カクレンは裸になり体を拭かせる。このところ興奮を抑えきれなくなっている。魔法で体を改造した副作用なのであろうか。以前は大男のような体も萎んできて、今では美女といっても差し支えないくらい変わってきている。そして周りの者も恥じらうくらい妖しい気が漂っているのも自覚した。


 血を浴びると顔が紅潮し体が熱くなる。そしてリュウユウの事を思うと同じことが起きた。褥が濡れる。侍女は慌ててそれを拭き取り、新しい下着を用意するのであった。


 リュウユウを従わせたい。その願望が日に日に強くなっていくのを感じていた。








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