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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第5章 西征編

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44話 桟道の戦い

「ユウ。カクレンが怖いのか」


アイが俺の横に立って言った。アイ自身も不安げな顔をしている。


「こ......怖くなどない。俺がびびってどうする」


「そうだ。その意気だ。もしもの時はわたしをちゃんと守ってくれよ」


 アイはそう言うと俺の尻を叩き持ち場に戻った。


「......俺がアイを守る......」


 俺はアイを守るということを想像していなかった。そんな臭いセリフも思い浮かべただけで恥ずかしくなった。だが身震いは収まっていた。


 桟道。

 シャカイとモウシュウシは迫りくる夏軍の圧力を感じていた。道は木の杭が打たれて橋のようになっている。何とか2人が並ぶことが出来る程度の細さだ。


「やるぞー!」


 モウシュウシは元気よく叫ぶ。元気と勢いだけがこの男の取り柄でもある。


 おもむろにズボンを下ろし、尻を出して立った。


「お......お前なにしている」


 シャカイは突然のモウシュウシの行動に驚いた。戦場で尻を出して敵を挑発する気かと思った。


「俺の屁は引火するんだ。火魔法ならぬ屁魔法だー!」


 シャカイは絶句した。爆音が轟き、あたり一面を硫黄のような匂いが充満していく。カムキもリュウイも鼻を摘まんで顔をしかめている。


 そして本当に引火した。大きな火が立ち上る。


 シャカイは悪臭に耐えながら剣を振るう。火は風に煽られ、桟道を伝って登っていく。


「それ!2発目だー!」


「お前、どんだけ屁が出るんだ!」


 シャカイは悪態をつきながら剣を振るい続ける。カムキもリュウイも吐きそうな顔をしながら、矢の先端に火をつけ放った。木造の桟道に燃え移っていく。


「火だ!桟道が燃やされているぞ!」


 夏軍は進む先の道が燃えていくのに気づき慌てた。


「早く消せ!このままでは焼け落ちてしまう!うわ何だ!この匂いは!」


 カクレンは先頭の騒ぎに気づき顔をしかめた。火が見えている。


「何事か」


「どうやら敵が桟道に火を放ったようです」


「小癪な。急ぎ、水魔法を使えるものに対処させよ」


 夏軍の先頭集団は、火を放った一団に気づき矢を放ってきた。


「そろそろ頃合いだ。引き上げるぞ」


 カムキはシャカイとモウシュウシに下がれと言った。


「この屁将校め。覚えていろ」


 リュウイはそう文句を言うと盾を並べさせ矢を防いだ。


 ようやく水魔法を使う部隊が先頭に来て、桟道の延焼を止めた。だが、桟道は100メートルほどが焼け落ち、寸断されてしまった。


「.......桟道が焼かれることも想定内だ。急ぎ、復旧作業に入れ」


 カクレンは苛立ちながらも落ち着いてそう命じた。しばらくは道の上で足止めされる。リュウユウの姿を想像して興奮した自分を少し恥じた。


「うまくいったか」


「みたいだな。これで多少は時間稼ぎになるだろう」


 戻ってきたモウシュウシの顔は誇らしげであった。シャカイもカムキもリュウイも顔を曇らせている。


「どうした?何かあったか」


「い......いや、作戦はうまくいった。問題ない」


 シャカイはそう報告し、自分の部隊がいる山林に戻っていった。


「時間は稼いだ。これからどうする」


「カンキが戻ってくれば南鄭の守備は問題ない。だが奴はカンゲンの一族だ。必ずしも俺たちに協力してくれるか分からない」


「助けてやっているのはこちらの方だぞ」


「それでもだ。この際、お前とカクレンが相打ちになってくれたらと思っているに違いない」


 ボクシは腕を組んで考えた。


「レイセキに援軍を頼むか......」


「はたして出してくれるかな。襄陽も大事な場所なんだろ」


「ああ。だが5千でも送ってくれたら、この場は持ちこたえる事が出来る」


 俺はギエイに伝令を頼んだ。レイセキから貰った札を渡す。


「すまないが、全力で走って援軍を連れてきてくれるか」


 ギエイは無言で頷き札を受け取った。少し嫌そうな感じが顔に出ていた。荊州から全力で走ってきて、また戻るのだ。しかも札を付けて走るとなると相当な負担が体にくる。セキカの方を見ると既に居なかった。ギエイは軽く舌打ちし、足に札を貼ると風のように走っていった。


「ちょっと嫌そうだったな......」


「そうだな。戻ったら何か褒美でもやろう」


 桟道が修復するまで1週間はかかると思われた。


 俺は緊張で胸が押しつぶされそうであった。あの夜、カクレンはたった1人で夜襲をかけ、俺の部隊を壊滅させた。あの光景が頭から離れなかった。あの時と違って、カクレンは身動きできないと分かっているが、それでも不安であった。ずっと動かない夏の旗を見ていた。


 ボクシが俺の横に立つ。


「カクレンが攻めてくるまで時間がある。どうだ、酒でも飲むか」


「そんな気分ではないよ」


「総大将のお前がそんな感じだと兵たちに伝わるんだ。不安を払拭しろ」


 俺はボクシの言うことに従って酒を出した。兵たちはみんなホッとした様子であった。いつの間にか俺の不安が伝染していたらしい。


 酒が進むと大騒ぎになった。みんな愉快に談笑している。


「おい。ここで屁をこくなよ」


 リュウイはモウシュウシに向かって言った。すると爆音が轟いた。コウビが大きな屁をこき豪快な笑い声をあげた。するとそれに釣られてモウシュウシも屁をこいた。


「やめろ!」


 リュウイは逃げた。コウビとモウシュウシは「屁!屁!」と言いながら踊り出した。みんなそれを見て爆笑した。カムキもコハンも笑っていた。リュウロウシの軍は厳粛でこのような馬鹿騒ぎは許されないのだ。


 俺も一緒になって踊った。スロットしかやってなかった頃とは大違いだ。もうすぐカクレンが攻めてくる。だが、俺はこいつらとなら一緒に戦えると思った。



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