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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第5章 西征編

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40話 揺らぐ乙女心

 俺は建康を辞して京口へ戻った。カンゲンには将軍になったので編成を整えると言った。当然の理由であり、カンゲンもこれ以上、留め置くことはなかった。


 リュウロウシが出迎える。その顔はどこか疲れていた。慣れない政務をやるようになったからであろう。これまではシャアンがこなしていたのだ。


「カンゲンから送られた侍女を返したようだな」


「はい。アイが怖かったので......」


 俺がそう言うとリュウロウシは苦笑いした。


「どうだ。将軍になった実感は」


「ありません......」


「そうか......お前は全く正直な男だな......」


 リュウロウシはどこか寂し気であった。急に老けて見えた。実際、高齢なのだが戦場での働きぶりは、年齢を感じさせないものであった。


「将軍になったのだ。編成は考えているのか」


「いえ、これから考えるところです」


「北府の軍からお前に与えられるのは1万だ」


「ありがとうございます。できればカムキも付けてください」


「よい。カムキとはこれまでも共に戦ってきたからな」


 俺はボクシと相談しながら編成を考えた。ある程度、独立して行動できる部隊が欲しかった。将軍1人では指揮が行き届かないこともあるだろう。千人将に何人か引き上げることにした。ボクシとの話し合いは三日三晩に及んだ。


 最終的にリュウロウシに案を見せたところ、特に何も言わなかった。好きにやれということなのであろう。


 主だった者たちを集めて編成を伝えた。


 千人将にカムキ、ボクシ、シャカイ、ドウサイ、ショカツ、カンシュク、モウチョウを選んだ。


 3千の歩兵第1部隊として、ドウサイとショカツ、カムキを隊長とし、その下に将校としてテイゴ、コウビを付けた。


 続いて、同様に2千の歩兵第2部隊を、シャカイを隊長とし、フコウシとモウシュウシを付ける。


 弓隊1千をカンシュクが率いる。


 騎馬隊は1千をモウチョウが率いる。俺自身も1千の直轄騎馬隊を率い、ボクシを参謀とした。


 残りの1千は、ギエイとセキカの諜報部隊と、アイの後方支援部隊であった。


「各自、次の戦に備えよ」


 俺がそう言うと、それぞれが各部隊の訓練に入った。大枠を決めたが、戦で機能するかはこれからの訓練にかかっている。


「それにしても将軍とはな......」


 俺は感慨深く言った。ただのチンピラだった。ついこの前までパチ屋に開店前から並びスロット三昧だったのだ。それが何故か転生し、1万人を率いる将軍になっている。


「何を言っている。王になりたいと言ったくせに」


 ボクシが笑いながら俺を揶揄った。俺は漢の高祖リュウホウのようになりたいと言ったらしい。リュウホウがどんな人物か知らなかったが農民の出で、皇帝になったという。


「王か......なれるかな」


「さあな。だがそんなことは俺以外の人間に絶対言うなよ」


 北府の中とは言え、カンゲンの手の者が紛れ込んでいるかもしれない。カンゲンの耳に入れば将軍の地位など簡単にはく奪されるであろう。場合によっては処刑されるかもしれない。


「分かっている。今は将軍として頑張るだけだ」


 ドウサイたちの大声が聞こえた。俺は腕を組み兵たちが訓練している様子を眺めていた。


 リンシがチョウセキと共にやってきた。


 距離が近かった。


「もしかして、お前ら付き合っているのか」


「そうよ。ダメ?」


「ほら、この間、ビャクレンとソンオンを倭に送り届けた時に、あいつらイチャイチャしててさ、俺も堪らずリンシに告白したんだ」


 リンシは小悪魔みたいな顔をして、チョウセキの腕にしがみ付いた。チョウセキはニヤニヤしていた。


 リンシが来たと聞いて、アイが急いでやってきた。2人の様子を見て驚いていた。


「あなた.......ユウを落すと言ってなかった?」


「ふふふ。ユウの事も好きよ。でもチョウセキの事も好きなの。悪い?」


 アイは呆れたと言わんばかりに口を開けた。チョウセキはリンシが言ったことを全く気にしていない様子であった。


「男たちは一夫多妻なのに、女は1人としかダメなんておかしいと思わない?」


 俺もリンシの考えに驚いた。転生前の世界ではこういう女性はいたかもしれないが、ここは古代中国なのだ。そんな考えをする女性は珍しい。


「と......ところで何しに来たの?」

 

 アイは顔を引きつらせながら聞いた。


「ユウ。将軍就任おめでとう。今日はあなたの軍に贈り物を届けにきたの」


 リンシに連れられ北府の外に出ると、何百頭もの馬と、いくつもの荷車に鎧や武器が満載してあった。


「こんなにくれるのか?金ないぞ」


「贈り物よ。倭との交易が上手く行っているからお金は気にしなくていいわ」


「そうか.......ではありがたく貰っておくよ」



 チョウセキが荷物を下ろす。ユウもボクシもそれを手伝っていた。


 アイはリンシと2人きりになった。


「聞いたわよ。あの馬鹿はカンゲンが贈った侍女たちと風呂に入ったそうね」


 アイは驚いてリンシの方を見た。


「なぜ知っているの?」


「私の情報網を甘くみないでね」


「......まったくあの変態には困ったものだわ」


「アイ。はっきり言ってあなたが早く決めないから、ユウがおかしな事に引っかかるのよ」


「は?あれはあの変態が悪いわ」


「違う。半分はあなたの責任よ。早く捕まえておくことね。そうしないと私が落としちゃうわよ」


「な......あなたにはチョウセキが居るでしょ!」


「さっきも言ったでしょ。わたしはどちらも好きなの。自由にさせてもらうわ」


 リンシが笑いながら言う。アイは顔を真っ赤にしていた。


「リンちゃん。今日は泊まっていくのだろ?みんなで飲もうぜ」


 アイは石を拾い、ユウに向かって思い切り投げつけた。リンシに早く捕まえろと言われた。心臓がどきどきしていた。



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