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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第2章 南燕編

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14話 五百人将

 南燕は燕がいくつかに分裂して出来た国のうちの一つだ。燕の英雄ボヨウスイの弟であるトクが、太平道に入信し独立して宗教国家を作ってしまったのだ。東晋とは国境を接しており、しばしば小競り合いが続いていた。


 これまで大規模な戦争はしてこなかったが、何を思ったのか東晋が統治する広陵に向けて侵攻してきたのである。


 その数は6万人であった。広陵の周辺の小さな街は次々と陥落し、南燕軍は広陵を包囲したのである。


「ユウ。出陣前に渡すものがある。シャアン様から贈り物だ。ついて参れ」


 リュウロウシは南燕への出陣を伝えたあと、俺を連れ外へ出た。厩であった。


「五百人隊となれば馬上で指揮するものだ。シャアン様がお前にあった馬を用意してくれたぞ」


「いや……ありがたいですが、俺の大きな体では馬が可哀そうで……」


 リュウロウシは軽く笑い、俺にシャアンが用意した馬を見せた。


 大きかった。並みの馬の倍以上の大きさがあり、足も棍棒のように太かった。転生前見たことがあると思った。北海道のばんえい競馬の馬だ。スロットしながらネットの競馬中継で見たことがある。


「これは? ばん馬ですか?」


「ばん馬? そういう種類なのか? これは西域から取り寄せた馬だ」


「どうだ。これならお前の大きな体でも問題ないであろう。そうだ、馬と共に指南役を紹介する」


 リュウロウシがそう言うと、厩から小柄で細身の男が出てきた。ジョッキーみたいだなと思った。


「あんたが下着五百人将か。俺はモウチョウだ」


「おい。変なあだ名つけるなよ。俺はユウだ」


 リュウロウシが咳払いする。


「彼は北の遊牧民の出身だ。馬の乗り方に精通している。お前の五百人隊の副官の1人とせよ」


「よろしく頼むよ」


 モウチョウが手を差し出してきた。なんだかチャラい感じがしたが、俺自身も傍から見れば賭博好きのチンピラなのだ。俺は握手し「よろしく」と返した。



 五百人隊の編成が行われた。4百人はソンオンの反乱鎮圧に従軍した兵であったり、新兵で見どころのある人物から補充された。


 副官は2人。ボクシとモウチョウであった。ボクシは百人将で参謀役。モウチョウの下には100人おり騎馬隊を率いる。残りは歩兵であり、ドウサイとドウキ、シャカイが百人将として率いた。


 新たに配置された伍長の中でも、3人が頭一つ抜けていた。


「ショカツだ。ここの隊に入れば武功を立てられるのであろう」


 ドウサイに匹敵する大男であった。背丈ほどの大きさがある大剣を背負っている。


「カンシュク。弓を使う」


 物静かな男であった。無駄なことは一切言わなかった。長身で眼光が鋭く、獲物を狙っているような目つきであった。


「ギエイだ……」


 カンシュクより更に無口であった。体つきは細く、これといって目を引くものがない。だが試験官はこう言った。新兵の試験で、誰よりも速く駆けただけでなく、誰にも気配を気取られなかった、と。


 斥候か暗殺か。俺にはまだ判断がつかなかったが、使いようによっては誰より化けそうな予感がした。


 俺は五百人の前に立った。ついこの間まで百人隊だったのだ。一気に5倍に膨れ、あまりの人の多さに緊張した。


 ボクシ、ドウサイ、ドウキ、シャカイに、新たに加入したモウチョウ、ショカツ、カンシュク、ギエイ。他の隊と比べても異彩を放っていた。


「変態。今度は無理するなよ」


 アイが後方支援の部隊50人を引き連れ現れた。アイもまたヒラの治癒士から部下を持つ身分に昇進していた。アイの部隊は怪我人の治療だけでなく、物資の補給も行う。そういった部隊がいくつかあった。


 出陣前日の夜。宴会を開いた。


「明日は早い。深酒するなよ」


 ボクシはそう言うと早々に寝床に行った。


 俺はアイと二人きりになった。なぜだか心臓がドキドキした。


「……その……なんだ……変なことを言ってすまなかった」


「謝らなくていい。どうせまた同じことを言うだろうからな」


 アイは目を合わせず言った。


「信用していないのだな」


「当たり前だ。変態」


 アイは相変わらず横を向いている。しばらく沈黙が続いた。


「だけど、本当に無理するなよ。お前が死んだら悲しむ人がいる」


「え? まあ、仲間も増えたしな……ああ、そうだ。これをあげるよ」


「下着ならいらんぞ」


 アイに木箱を差し出した。


「これは?」


「お前に似合うと思ってな。街で買ったんだ」


 黒い木に金箔が施された髪飾りであった。


「こんなもので喜ぶと思うのか?」


「思う。気に入らなかったか?」


「いや……」


 アイは不意に俺の方を向いた。つま先立ちになった。


「え!?」


 柔らかい唇であった。


「乙女の下着を見た責任は取ってもらうぞ……」


 アイはそう言うと顔を赤らめ走り去った。


 俺は呆然として唇を触った。心臓は高鳴ったままであった。

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