↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第11章 情念と決着

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/133

125話 救出の策

 俺はカクレンからの手紙を読み、怒りで震えが止まらなかった。エンがカクレンに捕まった。返してほしければ一人で来いと言ってきている。


「おい、ユウ。まさか一人で行く気か」


「行く。エンの命が危ない」


「止めろ。行ってはカクレンの思う壺だ」


 シャカイは俺を遮るように前に立った。絶対に一人では行かせない気だ。


「どけ。これは俺の問題だ」


「違う。お前は大将軍で、カクレンは夏の女王だ。これは国の問題だ」


「じゃあどうすればいいのだ。エンを見捨てろというのか」


「見捨てない。助けるしかない。とりあえず上庸に向かうぞ」



 上庸に着くと、シュクユウが泣きながら俺に抱き着いてきた。


「エンさんが!エンさんが!」


「...気にするな。カクレンがここに留まっているとは思ってもいなかった。俺の判断が間違っていた」


 夏はエンを捕虜とした後、攻撃は仕掛けていなかった。東晋の軍は遠巻きに上庸を囲んでいた。捕まって一週間は経っているだろう。俺はあの夜、カクレンの洗脳魔法に何度も落ちそうになったことを思い出し、エンが同じ目にあっていると思うと胸が張り裂けそうであった。俺はフリョウの符術でなんとか耐えることが出来たが、エンには何もない。目から涙が溢れてきた。


「ユウ。俺に考えがある」


「よい考えがあるのか....」


 俺は顔を上げてシャカイの目を見た。ここはシャカイの知恵に頼るしかなかった。



 ユウから返書が来た。カクレンは少しドキドキして手紙を受け取った。果たして一人で来るのか。次に会ったら殺すと言ったことも忘れ、まるで少女のように胸を高鳴らせた。


 手紙を広げ、一文字一文字、読み飛ばさないように丁寧に読んだ。


 突然、頭が割れそうな痛みに襲われた。目が眩む。


「な、なんだこれは...」


 手紙の字が何重にも見え、読むことが出来なかった。


「カクレン様!」


 侍女が駆け寄ってきて、カクレンの肩を支えた。


「これはどうしたことだ...代わりに手紙を読んでくれるか...」


 侍女はカクレンを横に寝かせ、手紙を読み始めた。侍女が読み終えた時に、カクレンは怒りがこみ上げてきた。


(エンを解放し、東晋に降伏せよ)


 手紙には要約するとそう書いてあった。


「これは洗脳の魔法だ!妾をこのような手紙で惑わそうとするとは許せん!」


 目眩はまだ収まらず、カクレンは立ち上がろうとしたがすぐによろけた。


「カクレン様。少しお休みになってはいかがでしょうか」


 カクレンは今にもエンを処刑して、撃って出たかったが、まともに立つことも出来ず、侍女の勧めに従った。


 その夜、異変が起きた。手紙を代わりに読んだ侍女が、その内容に従い、エンを解放して東晋に降伏したのである。



「フリョウの手紙の効力は絶大だな」


 シャカイは建康に早馬を走らせ、フリョウに手紙を書かせていた。フリョウはエンの危機を何よりも優先して手紙を書いた。


「読んだのはカクレンではなかったのか」


「ああ、あわよくばカクレンが降ってくると思ったが、そう簡単にはいかなかったな」


 俺は軍営を飛び出し、エンを抱きしめた。体が冷たかった。


「ユウ...ごめんなさい」


「大丈夫だ。カクレンに洗脳されなかったのだな」


「......あなたのことを考えていると、跳ねのけることが出来たわ」


 俺は涙が出て来た。エンも泣いていた。エンとの婚姻は魏のヨウカを説得する為の半ば方便なのだ。その方便のはずのエンが、これほど俺を思ってくれていることに、胸を打たれた。アイに感じている感情とは違うものがこみ上げて来た。いつまでもエンを守りたいと思った。


 エンの心は満たされていた。失った愛以上の愛を手に入れたと感じた。いつまでもこの大きな体に身を埋めていたいと思った。



 エンが侍女の手で解放されたと聞き、カクレンは狂わんほどに怒った。鉄鞭を持ち近習たちの首を刎ねた。


「くそ!ユウめ!妾を何だと思っているのだ!」


 近習たちが蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。カクレンの鉄鞭が届く範囲には誰もいなくなった。


「襄陽に貼りつかせている軍を呼び戻せ。ユウを討つ」


「ですが、それでは襄陽の東晋軍もこちらに来ます」


「うるさい!そんなことは分かっている!」


 カクレンは作戦が失敗したと感じていた。上庸でユウを待たず、自ら荊州中南部を侵略するべきだったと後悔した。江陵に向けた軍も、長沙に行った軍も東晋に撃破されていた。


「せめてユウだけは奪う」


 カクレンは、これだけ怒りを覚えても、まだユウを欲していることに気づき軽く驚いた。今頃、エンはユウに抱きしめられているのであろう。カクレンの心にはどこか羨望の思いがあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。