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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第11章 情念と決着

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123話 女の闘い

 上庸に籠る夏軍は一万五千と、東晋の二万より少なかったが、カクレンは出撃を選んだ。


「撃って出て来るとは、あの女は相変わらずね...」


「エンさん。ここはわたしが行きます。あなたはユウの大事なお方ですから」


「あら、あなたもユウの子供を産むと言ったそうじゃないの」


「ええ、諦めていませんわよ」


 シュクユウはそういうと飛刀を太ももに括り付け馬に乗った。南蛮兵二千が周囲を固めた。


「ふん。異様な奴らが出て来たな」


 カクレンは、半裸で獣の骨で出来たような兜に、毛皮のマントをつけた南蛮兵を見て、馬腹を蹴った。真ん中にいる女の将軍。小麦色の肌は、この冬の季節に似合わず、艶やかであった。


「カクレン!いつまでもユウに付きまとう悪魔め!」


「ん?なんだ、お前もユウを狙っているのか」


 シュクユウの叫びに、カクレンは妖しく笑った。


 シュクユウの双剣と、カクレンの鉄鞭がぶつかり合った。


「うぐっ.....」


 シュクユウは馬ごと吹き飛ばされた。体勢を整えた時に、カクレンの鉄鞭が振り下ろされた。


「くう!」


「なんだその程度で妾を討てると思ったのか!」


 鉄鞭の一撃、一撃が重たかった。シュクユウは剣を振ることも出来ず防戦一方であった。


「死ね!お前ごときにリュウユウは渡さん!」


「黙れ!わたしはユウの子を産むのだ!」


 カクレンはシュクユウの言葉に呆れて、ポカンと口を開けた。鉄鞭の連打が一瞬止まった隙に、シュクユウは双剣で鉄鞭を跳ね上げ、馬首を返し逃げた。


「雑魚が!敵に背を向けるのか!」


 シュクユウは太ももの飛刀を手に取り、矢継ぎ早に放った。


「そんな小細工が通じると思ったか」


「喰らえ!」


 振り向きざまに双剣を薙ぎ払った。カクレンはニヤリと笑い、片方の鉄鞭でそれをいなすと、もう片方の鉄鞭を振る。鉄鞭の先が、シュクユウの胸元を掠めた。


「あっ!」


 シュクユウの胸の装甲が宙に舞った。豊かな双丘が露わになった。


「ふん。無様なものだ。お前では相手にならん。ハクエンに代わってもらえ」


「く、くそ!なんて屈辱なの......」


「お前の首など興味はない。引っ込んで、その大きな胸を揉みながら泣いていろ!」


「....き、貴様!」


 シュクユウが双剣を構えようとしたとき、「待ちなさい!」という声がした。


 エンであった。


「シュクユウ、下がりなさい。ここはわたしに任せて」


「エンさん.....でも.....」


「その様子では戦うのは無理だわ。あなたは夏の兵を討って」


「.....うう、わかったわ」


 シュクユウは離脱し、歩兵同士でもみ合いになっているところに介入した。


「ハクエン、久しいな」


「......カクレン」


「ケイに飽き足らず、ユウにも手を出すとはな。ユウも殺す気か?」


「黙れ!」


 エンは水流剣を払った。カクレンはそれを顔を傾けるだけでかわした。


「お前も変わらんな。すぐにムキになる」


「貴様に言われたくない!」


 撃ち合いが始まった。水流剣と鉄鞭。水しぶきに光の輪が反射して輝いていた。カクレンはシュクユウと撃ち合った疲れなどないようであった。それどころか益々、鋭くなっていた。逆にエンの方は、疲労が出始めていた。


「どうした!ハクエン!動きが鈍くなってきたぞ!」


「う、うるさい!はあ.....はあ......」


 エンは鉄鞭を受ける手が痺れてきた。剣を握る感覚が次第に鈍っていく。カクレンはその様子をみてニヤリと笑う。


 日が落ちてきた。冬の夜風は冷たいが、エンにもカクレンにも関係が無かった。


「ふふふ。今日のところはこの辺にしておいてやる」


「......はあ....はあ.....まて、逃がさぬぞ」


「ふん。強がるな、また相手をしてやる」


 カクレンは笑いながら引き上げていった。エンはそれを見届けると、疲れで馬から落ちてしまった。全体の戦況としては互角であった。シュクユウが怒りに任せて、夏の歩兵に突っ込んでいったが、本体の動きが出来ず崩すまでには至らなかった。


「エンさん、ごめんなさい......」


「気にしないで......カクレン相手に死ななかっただけでも十分だわ」


 エンはまだ手の震えが止まらなかった。カクレンは以前より強くなっている。それに引き換え、エンは体力も落ち、動きが冴えなかった。明日もカクレンは攻めて来るだろう。上庸を奪還せよという命であったが、カクレン相手にそれは難しいと思った。せめてユウが戻るまで持ちこたえないといけない。


「まともに相手にすると持たないわ......」


「ええ、明日からは守備に徹しましょう」


 夜風が闘いで火照った体を冷やした。星空が澄み、冴えわたる。エンもシュクユウも疲れ果て、泥のように眠ってしまった。


 夜中、どこか遠くで鐘がなる音が聞こえているような気がした。その音が徐々に大きくなる。

 

 エンはハッとして跳ね起きた。既に東晋の本陣は燃えていた。


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