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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第1章 北府入軍編

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11話 ソンオン

 リュウロウシ率いる北府軍は前進した。ソンオンは句章という街を占拠し根城としている。目標はソンオン軍を撃破し、句章を奪還することであった。


 原野にソンオンの反乱軍3万が展開している。北府軍も進軍中に他の都市から合流した兵を加え3万になっていた。


「はじめよ」


 リュウロウシが短く命じると、歩兵2万が突撃を開始した。俺の百人隊はそこにいた。


「札を剥がせ!」


 俺は周りの歩兵隊に聞こえるように叫んだ。札を剥がされると、信徒の兵は我に返る。決定的な弱点であった。


 弓兵が燃える矢を放ち、信徒の額を狙った。シャカイの風魔法が広範囲に吹きつけ、百人単位で札を剥ぎ取っていく。


 鉄と鉄がぶつかる音が平地に響く。土埃が舞い上がり、喉に砂の味がした。


 北府の歩兵軍は優勢であった。札を剥がされた信徒の兵たちは右往左往して混乱している。


「いまだ!かかれ!」


 ケイシャンの騎馬5千が突撃した。

 信徒の兵たちは突き崩され潰走していく。


「なんだ!?」


 騎馬隊の進撃が止まった。信徒の兵を立ち割った先に、精強な部隊がおり跳ね返された。ソンオンの親衛隊であった。騎馬の突撃に対して槍を突き立て迎え撃つ。


「いったん下がれ!」


 ケイシャンの騎馬隊は反転した。再び北府の歩兵軍が前に出る。親衛隊と押し合いになった。


「こいつら強いぞ!」

「札がついていない!どういうことだ!」


 親衛隊は北府の軍と互角の戦いを繰り広げた。兵の練度は北府の方が上だ。だが、札を剥がすと逃げ出す信徒の兵たちと違い、親衛隊は倒れても何度も立ち上がり向かってきた。彼らはソンオンから直接、口移しで咀嚼した生米を与えられている。忠誠度が一般の信徒とは段違いであった。


 俺は棍棒を振った。腕に魔力を流す。五、六人がまとめて吹き飛んだ。地面に叩きつけられる音が重なった。だが立ち上がってくる。また振る。また立ち上がる。それでは親衛隊を崩すことができなかった。


「ユウ。気をつけろ。こいつらは確実に急所を突かないと倒れないぞ」


 ボクシの助言を聞き、俺は叫んだ。


「首を落とすか、心臓を突け!」


「なんでこんなにしぶといんだよ!」


 俺の百人隊だけでなく、周りの歩兵たちも苦戦していた。


「ユウ聞け!策がある」


 シャカイが俺に向かって叫んだ。


「俺たちの隊はここを離脱して、敵の本陣を突くぞ」


「そんな無茶を言うな!」


「いいや、やるしかない。よく見ろ。親衛隊が出たことでソンオンの本陣は手薄だ。そこを突く」


「どうやって!」


「このまま右に流れていけ。あの森に隠れるんだ」


 右を見ると森があった。森の中を移動すればソンオンの背後を突くことができる。シャカイの策の通り、少しずつ右に移動し、森の中に飛び込んだ。


 親衛隊は森の中まで追ってこなかった。百人将が逃げたとしか思わなかったのだろう。


 本陣から、リュウロウシはユウの百人隊が離脱するのを見ていた。


「なるほど……面白いことをする」


 リュウロウシは静かに呟いた。そのまま旗を動かさず、じっと待った。


 森の中は静かだった。戦場の喧騒が遠くなる。木の根を踏む音、葉が揺れる音。百人が無言で走っていた。


「ここだ。森を出るぞ」


 ソンオンの本陣の真後ろであった。百人隊は声をあげず突撃した。


 敵の何人かが背後の気配に気づいて振り返る。だが、その時には俺は棍棒を振り上げていた。


 一振りで十人が吹き飛んだ。本陣を守る一角が崩れた。

 ドウサイが地面を突き揺らがせた。敵兵がよろける。そこを石礫と火球が集中した。百人将がソンオンの本陣の中に突入した。


「敵襲だ!」


 ソンオンの本陣には千人はいる。奇襲を受け崩れたが、すぐに立て直しに入った。


「慌てるな。ネズミが入っただけだ」


 本陣の真ん中に長身の人物が立っていた。

 ソンオンだった。

 道士のような格好に、茶色い長髪。戦場にいるのが信じられないほど端正な顔立ちだった。そして胸に膨らみがある。


「え?……女なのか?」


 俺はソンオンを見て思わず声が出た。


(まるでレディースの総長みたいだな……)


 道士の服はまるで特攻服のように見えた。ソンオンは俺のことを蔑むように見ながら、持っていた札を俺に向かって投げつけた。


「熱っ!」


 札は俺の体に張り付くと燃え上がった。慌てて炎を振り払う。火球とは比べ物にならない熱さだった。だが木系統の強化魔法が体を守った。焦げた痛みが走ったが、倒れなかった。


「ふん。丈夫な男だ。燃えよ」


 ソンオンは一気に十枚ほどの札を投げてきた。一直線に俺に向かって飛んでくる。


「無駄だ!」


 シャカイが剣を振ると風が巻き起こり、札を全て吹き飛ばした。ソンオンは少し怯んだ顔をした。


「うおおおおおおおお」


 俺は全身に力をこめた。腕に魔力を流す。棍棒を振ると十人が吹き飛んだ。ドウサイがそれに続く。斧を地面に突き立てると亀裂が広がり、敵兵の足元が崩れた。


「ひっ!」


 ソンオンは俺が迫ってくるのを見て悲鳴を上げた。恐怖で目を見開き震える。

 あのツンと澄ました目が、ものすごく動揺しているように見えた。


「な……なんなのよ。来ないで……」


 ソンオンは身をひるがえして逃げた。足に札を貼ると加速した。俺は懸命に追いかけたが、その距離は離される一方だった。


「はあ、はあ、逃げ足早すぎだろ……」


 ソンオンが一目散に逃げたため、本陣が崩れた。

 親衛隊も本陣の異変を察知して浮き足立った。北府の歩兵軍が押す。そこへケイシャンの騎馬隊が突っ込んだ。


「武器を捨て投降しろ!お前たちの教主様は逃げたぞ!」


 ケイシャンが投降を呼びかけた。だが、親衛隊は踏みとどまり抵抗した。盛り返してくる。

 だが、その抵抗も一瞬だった。


 リュウロウシが本陣の騎兵を率いて突撃したのだ。


「幕だ」


 リュウロウシは鋭く剣を振った。親衛隊長の首が飛ぶ。抵抗はそこまでだった。潰走する。


「勝どきをあげよ!」


 原野に北府の軍の歓声が上がった。俺たちも両手を上げて雄叫びをあげた。

 一方のソンオンは句章に駆け込んだ。城門を閉ざし、ソンオンは一人で屋敷に籠った。


「や、奴はいったい何者なのだ……」


 ソンオンの脳裏にはユウの姿が焼き付いていた。枕を頭からかぶり、ガクガクと震えるのだった。

ソンオン(孫恩)は史実では男です。ですが自分の女体化センサーが反応して女性にしてしまいました(笑)

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