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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第1章 北府入軍編

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10話 似てないな

 本隊に戻ると、リュウロウシが待っていた。


 その隣に、あの若い男がいた。


 馬から降りて、こちらを見ていた。屈託のない目だった。リュウロウシとは似ても似つかない表情だった。


 リュウロウシが俺を見た。


「報告しろ」


 ボクシが前に出た。地図を広げて、ソンオン軍の配置、額の札、魔道具の効果、札を焼けば我に返ること——順を追って説明した。


 リュウロウシは黙って聞いていた。


 ボクシが説明を終えると、リュウロウシが口を開いた。


「敵将を討ったか」


「はい。リュウユウが」


 リュウロウシの目が俺に向いた。


「よくやった」


 それだけだった。だがリュウロウシが「よくやった」と言うのを俺は初めて聞いた。


 隣の若い男がニヤリと笑った。


「百人で千人を崩して敵将まで討ったのか。たいしたものだ」


「お前は誰だ」


 俺が聞くと、男は少し驚いた顔をしてから笑った。


「名前も知らずに戦場で会っていたのか。俺はリュウケイシャン。この人の息子だ」


 リュウロウシを親指で指した。


 ボクシが固まった。


「リュウ……ケイシャン?リュウロウシ様の——」


「息子だ。よろしく」


 ケイシャンは屈託なく笑った。


 俺は思い出した。あの鋭い目。どこかで見たような目だと思っていた。


「なるほど。あの目か」


「目だけは親父に似てるって言われる。嬉しくないけどな」


 リュウロウシが軽く咳払いをした。


「お前が百人将のリュウユウか。噂は聞いていた」


 ケイシャンが続けた。


「試験で白紙を出して、それでも百人将になったやつがいるって。どんな馬鹿かと思ったら」


「馬鹿で悪かったな」


「いや、見直した。百人で千人を崩すとは思わなかった」


 ケイシャンが俺を見た。値踏みではなかった。純粋に面白がっている目だった。


「親父がお前に目をかけている理由が分かった気がする」


「どんな理由だ」


「さあな。親父は何も言わない。でも俺には分かる」


 ケイシャンはそれ以上は言わなかった。


「また会おう。お前と並んで戦うのは面白そうだ」


 リュウロウシが再び咳払いをした。


「ケイシャン。お前は持ち場に戻れ」


「はいはい」


 ケイシャンが馬に飛び乗って去っていった。


 ボクシが呆然と見送った。


「……あれがリュウロウシ様の息子か」


「似てないな」


「まったく似ていない」


 リュウロウシが俺たちを見た。


「傷の手当てをしろ。後方に治癒の者がいる。済んだら報告に来い」



 後方に向かうと、アイたちがいた。


 治癒の者が数人、傷を負った兵たちに次々と手を当てていた。アイはその中心にいた。


 俺が近づくと、アイが一瞥した。


「生きてたか」


「生きてる」


「どこか傷めたか」


「部下を先に頼む」


 アイは少し間を置いてから頷いた。


「分かった」


 アイが次の兵の前に膝をついた。手を当てると光が滲む。傷が塞がっていく。治された兵が目を見開いてアイを見た。言葉が出ない様子だった。


 しばらくして、アイが俺の前に来た。


「次はお前の番だ」


「大丈夫だと言っただろ」


「見せろ」


 有無を言わさない口調だった。


 腕を差し出すと、アイが手を当てた。光が滲む。棍棒を振り続けた腕の痛みが消えていく。気づいていなかった疲労が、一気に抜けていく感覚だった。


「……思ったより消耗している」


 アイが小さく言った。


「そうか」


「無理をするな。お前が倒れたら百人将が機能しない」


 アイは立ち上がって次の兵の方へ歩いていった。


 ボクシが俺の隣に来た。


「珍しく優しかったな」


「そうか?」


「そうだ。お前は気づいていないのか」


 俺は答えなかった。



 夕方、リュウロウシが全軍を前に立った。


「ソンオンはまだ生きている。逃げた信徒を集めて再び動く。今夜は休め。明朝、軍を進める」


 全員が頷いた。


「リュウユウ」


「はい」


「今日の戦いは本隊も見ていた。偵察隊が遭遇戦で敵将を討った。その功績は記録する」


「ありがとうございます」


「だが浮かれるな。本当の戦いはこれからだ」


 リュウロウシは踵を返した。


 ドウキが俺の後ろで囁いた。


「隊長、褒められましたね」


「そうか?」


「絶対そうです」


 ドウサイが無言で頷いた。シャカイが小さく笑った。


 日が落ちていく。


 明朝、軍が動く。


 どこかにソンオンがいる。まだ見ぬ敵が。

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