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チンピラだった俺が、たった27人で天下を取ることになった  作者: 越後⭐︎ドラゴン
第9章 落日の長安

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100話 後秦滅亡と会談の夜へ

 俺は未央宮を制圧したが、やはり中にはヨウセキトクらしい人物は居なかった。逃げられたと思い、慌てて捜索を命じた。


「おう。何を慌てているのだ」


 フリョウとモウチョウが一人の男を引き立ててきた。


「フリョウ。無事だったか。そいつは」


「誰だと思う?」


「誰だ。さっさと言え」


「驚くなよ。ヨウセキトクだ」


 俺は驚いた。逃がしたと思った人物が、目の前にいるのだという。その男の顔は無惨にただれており、とても見ていられなかった。


「エンさん。この男がヨウセキトクなのか」


「間違いないわ」


 エンは目を逸らさずに男の顔を見て断言した。


「......ハクエン。なぜここにいる。この主殺しが......」


「黙れ!エン様に何てことをいうのだ!」


 フリョウは怒ってヨウセキトクを蹴とばした。


「エンさん!どうですか!わたしの手柄は!」


 エンはちょっとだけ微笑むとその場を立ち去った。主殺しと言われ顔がこわばっていた。


「まったく運の良いやつだ。王を捕らえるとはな...」


「はーはっはっは!これも作戦だ!」


 俺は嘘つけと思った。モウチョウも呆れた顔をしている。レイセキがやってきた。


「ヨウセキトクを捕らえましたか。うっ!なんですかこれは」


 レイセキは口を押えながらも、ヨウセキトクを見ていた。


「どうしますか。建康に護送しますか」


「そんな必要ないわ」


 俺はその声を聞き、思わず怯んだ。あの時の恐怖が蘇ってくる。何度も打ち負かされた。俺も最後は撃退したが、それよりも負かされた方が記憶に深く残っていた。


「.....カ、カクレン。いつの間に来たんだ....」


「見させてもらったわ。見事に長安を落したのね」


 カクレンは妖艶な笑みを浮かべていた。俺はゾッとした。手紙のことを思い出した。恋文。熱い夜を過ごしたい。その時が迫っている。


「ヨウセキトクはこちらに引き渡してもらおうかしら」


「どうせ殺すだけだろ」


「それは建康に護送しても同じことよ。早く死ぬか、遅く死ぬかの違いよ」


「カクレン。貴様だけは許さん」


「ヨウセキトク。無様なものね。何その顔、不細工がもっと不細工になっているじゃない」


「貴様のせいで後秦は......」


「黙りなさい!あなた達、ヨウ一族には何度も煮え湯を飲まされたわ。わたしがあの親子に何をされたかわかっているでしょ!?」


「最後はお前が洗脳したのではないか!」


「そうそれ。ヨウセキトク、あなただけは、わたしの洗脳から逃れた。だから許せないのよ」


「誰がお前と寝るものか!いい加減に殺せ!」


「簡単に殺すものですか。あなたにはわたしの奴隷になってもらうわ」


 カクレンの目が妖しく光る。その様子に誰も口を開くことが出来なかった。


「カクレン!」


 俺は勇気を振り絞って口を開いた。カクレンと目が合った。俺は怯まず見返した。


「せめて、ひと思いに殺してやれ。それが礼儀だ」


 カクレンは俺が言ったことを理解できないようであった。


「敗者に死に方を選ぶ権利はないわ」


「それならば勝者は俺たちだ。ヨウセキトクの処遇は俺たちに決めさせてくれ」


「あら?言うじゃない。わたしの支援がなければここまで来れなかったくせに。まあいいわ。ヨウセキトクはあなた達に任せる。その代わり、今夜は楽しませてもらうわよ」


 カクレンはそう言うと高らかに笑いながら未央宮を出ていった。俺は一気に体から力が抜けた。レイセキもホッとしたようであった。


「あの女やべえな....」


 フリョウはがたがた震えていた。俺はこいつにも恐怖の感覚があったのかと思った。


「礼を言うぞ。リュウユウとやら。あの女の奴隷になるのは屈辱以外の何物でもない...」


 ヨウセキトクはそう言い、観念したように目を閉じた。俺はその肩を持ち、モウチョウと共に外につれていった。


「何か言う残すことは......」


「ない。やってくれ」


 俺は剣を抜き、振り下ろした。


 後秦の歴史がここに幕を閉じた。



「お前さん、本当に今晩あの女のところに行くのか。食べられてしまうぞ」


「じゃあ、代わってくれるのかよ」


 フリョウは「いやいやいや!」と全力で首を振った。


「ユウ。あの女の洗脳には鋼の意思が必要だわ」


 エンが言った。俺はエンの素性と知って以来、その過去も聞いてきた。朝鮮半島にある小国の公女で、その後、燕の武将となり、秦へ行き、魏の禁軍の将軍となった。そして魏王を愛憎の後に殺害し、逃亡して俺のところへ来た。波乱万丈の人生を歩んでいる。俺のところにも何かに引かれたと言っている。


 魏の前王ケイ。おそらく俺と同じ転生者なのであろうと思った。


「カクレンの洗脳は二段階よ。目による洗脳。これは意思を強くもてば跳ね返すことが出来る。それでも従わないものは、性交をすることで洗脳させる。これに屈しなかったものは居ないわ」


 恐ろしい話だった。エンは簡単に言ったが、カクレンと夜を共にすれば確実に洗脳されると言っている。


「いや、夜と言っても一緒に寝るわけではないだろ」


「お前さん、馬鹿か!あんな妖艶な雰囲気で迫られた断れるわけないだろ!」


 フリョウが声を荒げた。俺も言ってみたものの自信は無い。多くの仲間たちの仇である。憎いし、恐怖の対象であるが、それでもあの目を見ると引き込まれそうになってしまう。


「じゃあ。何か策を考えてくれよ。そもそもお前が恋文なんて書くからだぞ」


「ふむ....そうだな。俺にも責任はある。ならば策を授けてやろうではないか」


 フリョウはそう言うと符を渡してきた。


「これは?」


「この符を飲み込め。これは俺の手紙の応用だ。これを飲んでおけば、洗脳を弾き返すことが出来る」


「信じていいのか.....」


「分からん。俺は自分でこれを飲んで、手紙を読む実験をしたことがあるだけだ。他の者にも効くかは知らん」


「相変わらずいい加減だな。もし効果がなかった時はどうする」


「お前さんを毒殺するだけだ」


 何も無いよりはマシかと思った。鋼の意思。今までもそれを実践してきたはずだ。転生前はそれでスロットに勝ち続けたし、この世界に来た後も何度も試される場面があった。


 俺は符を丸め飲み込んだ。


「ああ!?もう飲んだのかよ。行く直前に飲めよ!効果が切れるだろ!」


「早く言えよ。もう一枚くれ」


「.....もう無い。効果があるうちにカクレンを抱いてしまえ。健闘を祈るぞ」


 俺は顔面蒼白で、カクレンが指定した場所に向かった。足取りが重かった。


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