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仕えるもの語  作者: マッド
中章 第一節 明けない夜はない
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第八十九話 雲のスケッチ

キュウク達と時を同じくして魔王城、ミストの自室では……


「ふぅ、ひとまずこの程度でいいでしょうか」


 カレンは部屋の棚のホコリを拭き取り終わったことで一度呼吸を置きしばらく留守となったミストとアクセルの部屋の掃除を終えたカレンは掃除用具を片付け始める。

 その最中、部屋の扉がガチャリと音を立てながら開いた。音がした扉の方にカレンは視線をずらす、そして中に入ってきた人物を見て「はぁ」とため息をこぼす。


「おつかれー、わたしが出る幕ないないだったねぇ」


 入ってきた人物を見てまず目を引くのが淡い桜色のポニーテールにお淑やかに見える顔立ち。きっちりとしながらも鮮やかな華がある黒スーツを着込んでいる。どんな人でも()()()()なら清楚で真面目という印象を受けるだろう。がだ、そんな美しい容姿からは想像できないほどに酒臭い。それもそのはずであり彼女__センゴクは大のお酒好きで実際今も片手に酒瓶を持っている。


「ムウと戯れてたらどうです?」


 カレンは呆れにも近い様子でセンゴクを横目に片付けを進める。その動きはセンゴクから出てる酒の匂いから逃げているようにも見受けられる。


「仕事終わってすぐにムウから栄養取ろうと思ったらウェザーのところに行っちゃてるんですぅ。でさーミストもいないじゃん? ならうちの可愛い可愛いカレンちゃんのところに行くしかないしょ?」


「理解、不能」


 カレンは機械的な声で寄ってくるセンゴクを視線を合わせずに横に避ける。


「ぶーひどーい。お姉ちゃんの包容くらい受け入れなよ」


「嫌ですよ。碌なこと起こりませんし」


 膨れ顔を浮かべるセンゴクにカレンは見向きもせず掃除用具を肩に持つ。


「えーーまぁ当然の事過ぎて何も言い返せない。……あれ、なんか珍しいのあるじゃん」


「?」


 いじけるセンゴクはふとほこり一つないほどに綺麗に並べられた本棚の一角にひっそりと佇むスケッチブックを見つけた。

 センゴクはそのスケッチブックを本棚から取り出した。そのスケッチブックの中には1ページ1ページそれぞれ違った様々な形の雲が普段のミストからは想像もできないほど丁寧に描かれていた。


「あっ懐かしい。ミストが一時期やってた雲のスケッチだ」


「あぁ珍しく二週間も続いた、あれですか」


 そのスケッチブックは以前、ミストがハマっていた絵かきの時にセンゴクが買ってあげた物だ。雲のスケッチは飽き性、三日坊主どころか一日坊主のミストにしては珍しく二週間も続いた趣味であった物だ。


「そうそう! あの子絵はうまいのにもったいないよ」


「否定はしませんね」


 確かにそのスケッチブックに書かれた雲は形はもちろん影もしっかり区別され絵が初めての者には見えないほど細部まで描かれていた。


「さて、じゃあさっさとしまいましょう。仮にも人の物ですから」


「あー無常ー」


 センゴクがうっとりとスケッチブックに描かれた雲たちに目を奪われていると横から颯爽とカレンが奪い取り元あった場所へと戻した。


「仕事がまだ私はありますけどあなたはどうするんです?」


「えー? カレンの部屋の物色?」


 瞬間、鋭いナイフが一直線にセンゴクの頬をかすった。やっべ、そう思ったセンゴクの表情は青ざめる。


「酒臭くなるのでやめてください」


「ひえぇ、言葉より先に手! ……よし怖いからやめとく」


 無意識ではあろうが数本のナイフを手元からちらつかせるカレンにセンゴクはしぶしぶ納得しどちらも部屋をあとにしていく。


「今なにやってのかぁミスト。ひっく」


「呑みすぎです。まったく」


 酒を飲み顔を赤くさせているセンゴクにため息をこぼしているカレンの声が部屋の外からでもかすかに聞こえる。

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