第九十話 夜のサーペントにて悪魔二人
くっそ、最近ホントに筆が乗らない。
夜、一つまた一つと光が消えていくサーペントの街をリリスは優雅な足取りで涼しい夜風に髪をさらしながら歩いていた。
「ふんふふんふーん。アトランティス待ってろよー」
何も知らない一般人がその様子を見れば無邪気な子供が鼻歌を歌っているように見える、かもしれないがその鼻歌はとても邪悪に満ちていた。
「……リリス様、こんな夜中になにするつもりだ?」
そんなリリスの後ろを何やらいくつかの荷物を背中にしょったトリガーがついていた。
「聞いたことくらいあるでしょアトランティス」
「まぁそりゃぁな」
アトランティス、それはこの世に住まう最強の四つの龍が一人。ユートピア、エルドラド、アガルタ、そしてアトランティス。それぞれが天空、地上、地下、大海を統べている龍。
それぞれがそれぞれ、強力な子供を引き連れて、或いは作ったはいいもののそこら辺に放置している。
例えば、キュウクがジパングで相対したあの黄金竜ジパングは後者にあたりその親はエルドラドである。
「ボクはあいつと仲良しのマブダチ、とまではいかないにしてもリヴァイアサンの血を取るためにも多少あいつの様子も知っておかないとだしね」
そういいながら漁船がずらりとならぶ港につく。静かな波が押し寄せるたびに漁船達は糸にぶらさがった鉄球のように前後にゆらりと揺れる。
「こっからどうするだ?」
「んーっとね。トリガーその荷物おろして」
「あーはいはい」
トリガーが荷物を下ろすとリリスはその荷物からビーカーを一つ取り出した。そして、その中にこっそりと指先から入れている。
「ビーカーになにを入れて……」
「これ? ちょっと特殊な病菌だよ? これを海に流してあいつの反応を見る。ここらへんにいるならすぐに壊されて戻って来るかな」
薄気味悪く軽い口調を叩くリリスはそういいながら海に向けきれいな放物線を描きながら投げ入れた。
ぽちゃんという音ともに水面がゆらりと揺らぐ。
「さてとどうなるかなー」
「……」
しばらく見守っていると口からツバを吐き出すように海から何かが飛んできた。
「おっとやっぱ早いね。っとこれは……まじか」
帰ってきたビーカーはちょうど半壊していた。それはリリスの予想とは反していた。リリスの予想はビーカーの破片が1枚でも残ってたらいいなだった。だからこそ半壊程度の欠損に一瞬呆気に取られてしまった。
「どうだったんだリリス様」
「なにかあったぽいね。アトランティスの方に」
トリガーからの声に笑顔で反しつつもリリスの頭の中は回転していた。
(衰弱、いやアトランティスに限ってそんなことはない。ならばなんだ勢力争い? アトランティスのリヴァイアサンも強いは強いけど到底100体いたとて勝てるはずはない。ならなんだ?)
「まさか……! 奪われたのか。っ何やってんだあのバカ」
地団駄を踏みながら頭をかきながらブツブツとなにか言っている。
「とりま、リヴァイアサン探しましょ。ね、トリガー?」
「あぁ俺はあんたについていくだけだ」
リリスとトリガーの二人はそうして闇に溶け込み、まばたきする次の瞬間には綺麗さっぱり姿を消していた。
誰一人もいなくなった海岸沿いにクゥーーーーーン!というなにかの生き物のような甲高い音が響いた。




