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仕えるもの語  作者: マッド
中章 第一節 明けない夜はない
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第八十八話 ある日記の一人語り

 一つ昔話をしようではないか


 なぁに、とってもとっても意味のない昔話さ


 それは今は昔、とある男? 女の……? どちらでもいい。性別など些細な問題にすらなしえない。

 一応、便宜上はつまりは表面上はそいつを男性として扱おう。


 その男は国の外れにある今はもうないどうでもいい街に生まれた。

 男は頭がおかしかった。不気味だった、ネジが数本外れてないと出来ないようなことを平然とやり遂げた。それこそ街全体の人々から気味が悪いと評されるほどに。

 そんなこと男は気にもとめなかった。どうでもよかったのだ。男にとって周囲の人々など家畜と同等或いはそれ未満だったのだから。

 クソ喰らえ、そんな言の葉を吐き捨てることさえ時間の無駄で男はとにかく自分の研究だけを追い求めた。


 魔族や人間も何度か捕まえ。殺し、解剖もした。内蔵や眼球を無傷で取り出し保存する。そしてそれを観察する。男にとってそれは何者にも代えがたいまさに至高の喜びだった。


 当然のことだったのだがそんな最ッ高!な日々は長くは続かず、ある日突然彼の家に何人もの街の人々が押し寄せ彼を捕まえた。

 捕まってしまった彼の悪事は白日のもとにさらされその場で死刑が即刻行われる運びとなった。

 男は抵抗はせずにただただその刑を笑顔で受け入れた。

 彼は最後にこれだけ言った。


「いずれは君たちも私の実験体だ」


 その言葉に恐怖した、そして同じく足蹴にし笑った。

 できるはずがないと、お前は今ここで死ぬのだと。誰もが……誰もが! そういった! 叫んだ! 叫び続けた!!

 ゴミを投げつけるような無粋な輩もいた。誰も止めなかった、咎めなかった。むしろ、つられるように皆一斉にゴミを男に投げつけた。


 そんな中、男の死刑は執り行われた。二本の熱い鉄の刃が彼の首を通り掻っ切る。

 首が血しぶきを上げながら虹のような孤を描いた。


 男の表情は不気味にも薄気味悪い笑顔だった。


 ◇


 その街はどうなったか知りたくはないか?


 行方不明だ。


 男、女、子供、老人、皆が行方不明、男が死んだ数日後に何事もなかったかのように突如として姿だけを消した。


 誰も知らない。誰も誰も……ただ一人をある幼女を除けば


 ◇


 男が研究していたこと、それは『魂の移植』

 人の皮そっくりなだけのそれ以外空っぽの人形(ドール)を用意しそこに自らの魂を移植させ自分自身を作る。

 この研究の結果だけ言えば()()()()


 成功してしまったと言うべきか。死刑執行前まではうまくどうにもうまくいかなかった。魔法陣に幾度とない改造をしてもうまくいかなかった。

 だが、今思えばそれがうまくいかなかった原因は分かる。

 人形(ドール)に入っている『魂』が未完成だった。そう自分が今の肉体から出なければいかなかった。


 男にとって死刑とは仮定を証明するための行動。一か八か、綱渡りの実験だった。


 ただもちろんその人形(ドール)には欠点があった。


 一つは、定期的に別の人形(ドール)を用意しなければいけなかったということ。『魂』に宿る力が人形(ドール)を劣化させてしまうため数百年に一度身体を変える必要があった。

 手間ではあったが新鮮味を味わうという点ではグッジョブだった。


 でもう一つだけ、それは……まぁ今はいいか。関係のない無駄話さ。


 なんやかんやあり男は肉体をとっかえひっかえに入れ替え世界中を旅した。空に浮かぶ『天空城』とも呼ばれる大地。ドワーフの王がいる地下帝国、果てには悪魔が住む世界、天使が住む世界などなど……色々回った。

 悪魔が住む世界は地獄で地獄でとっても面白かった。天使が住む世界もまた地獄で地獄でおもしろ……くはなかったな。ワタシからしたら実につまんなかった。面白みがない。

 さて、話がどこか奏汰に脱線してしまう前に話を戻そう、その中で一つだけ伝説上に記された記録の中で見たことのない場所があった。


『夜が沈まぬ土地』


 一度でいいからそれを見て物にしてみたい。かの地に顕現するという巨大な影の獣とやらを見てみたい!

 800年前は失敗してしまったが……ひひっ今度こそはこの街を、いや国を犠牲にしてでも見てやる。物してやる!


 あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!


 おっとネジが外れてしまったな。

 お付き合いありがとう、ワタシ『ニルズ』の一人語りにね。『ニルズ』というのも数ある名で一番気に入ってるものなだけで本名など興味ないがな!


 ――ここに記す。

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