二話 イラナイ子
これ少女より幼女に変えたほうがいいですかね...?
「お嬢様の[職業]は....<盗賊>です...」
「あうあう!うあーう!(盗賊!?いいじゃん!やっぱ異世界の定番だよね!....定番覚えてないけど。...ん?あれは....?)」
何か他に書いてある。その中身を見ようと水晶の中を覗き込んだ直後ー
[バアァン!!]
自分の後ろから何かが叩く音が鳴り響く。
その音が原因か分からないが、音と同時に体に力が入らなくなる。
「あぅ...(あれ...力が...)」
「盗賊...だと?...盗賊.........だ......と...?」
「あ、あなた...?」
お父さんは盗賊なのかと信じたくない。と言わんばかりに呟き続ける。
その目には怒りと悲しみと憎しみが宿っていた。
「子供に罪は無いわよ。まだ下の子もいるじゃない...」
慰めの言葉をお母さんがお父さんにかけようとしているが、その言葉は届いていない。
[職業]、<盗賊>。
それはこの世界にありふれた職業であり、一部の人達は重宝することも有る職業だ。
ただ、一部の人からは盗賊と同じ文字と言うこともあり、忌み嫌う人もいるのである。
「........け。」
「...え?」
「こいつを...この出来損ないを[魔の森]に連れて行け!!!」
「あ、あなた!?」
まさに<盗賊>を嫌う側の人間が、お父さんだったのだ。
お父さんの逆鱗に触れ、怒りを表に出す。
「こんな奴が我が一族から出たなんてクソくらえだ!!」
「あ...う.....(お父さん...?なんで....)」
少女はゆっくりを薄れゆく意識の中、絶望を感じた。
まだ齢一歳にして、<盗賊>だからという理由だけで、捨てられるのだ。
「あなた!やめて!!その子はー」
「うるさあああいい!!これは決定事項だ!!!」
お母さんの静止も聞かず、妊娠中で動けないことを良いことに勝手に進める。
「アビル!!」
「はい。旦那様。」
「わかっているなぁ...!!」
「はい。行ってまいります。」
お父さんの腹心の秘書であるアビルは少女に近づいて、抱き上げる。
お母さんは止めることが出来ないことを悟り、すすり泣いている。
「あ.....ぁ.........(おねが.....い...やめ......て.....)」
少女がまるでこの状況を理解しているように見えたアビルは、少女に向かって言った。
「...申し訳ありません。お嬢様。私如きでは...貴女様をお救いすることは出来ません...」
少女の意識はそこで途絶えてしまった。
少女を大切に抱えたアビルは[魔の森]へと向かった。
ー[魔の森]ー
それは世界で最も危険な場所と言われ、魔族と人間の領地の境目にある魔獣の巣窟だ。
誰もが恐れ、近づかぬ所。まさに魔境である。
そんな場所に、捨てられてしまうのである。
そして暫く経った頃、[魔の森]にアビルは到着した。
「......お嬢様。」
未だに目を覚まさぬ少女を見つめ、最後になるであろう一言をかけた。
「...貴女様に神のご加護がありますように。」
そうして森の木の幹の所に優しく置かれた。
この温もりだけは、しっかりとした本物だと、確信が持てる優しさを置いていって。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「..........う.....ぁ.....」
少女は目が覚めた。目の前に草原と木々が広がっている。
現実が見えてきた。ああ、そうだ。自分は捨てられたんだと。
「ぐぅ....うぅ....ひっく....うぁあ....」
「うわぁぁ......」
力無く叫ぶ。あんなに優しかったのに。あんなに大好きだったのに。あんなに愛してくれたのに。
全て裏切られた。あの父親に。あいつに。父親はいつも勝手なことをする。
「うう。(ーもう、信じない。あんなやつらなんて。信じてたまるか。)」
「ああ!あうあうあ!!(私は死なない。絶っっ対に、生き残ってやる。あんな奴の思い通りになってたまるか。)」
少女は決意する。
何がなんでも生き残る。と。
こんなところで死んでたまるか。と。
あいつの思い通りになんてならない。と。
ー幸せになってみせる。と。
[ガサガサガサ......]
「ーーッ!!」
向こうの草むらから音がする。なにかが近づいてくる音が。
少女は立ち上がり、あたりを見渡す。そして足の近くにそっと置かれてあったナイフを手に取る。
「あう...!(アビルさん....ありがとう。)」
[ガサガサ...ガサガサガサ!]
音がどんどん近づいてくる。音の方向を少女は警戒する。
そして音の主が姿を見せる。
「グルルル.....」
「...ッ!(狼!?)」
狼型の魔物...名を[フォレストウルフ]という。
少女はナイフをぎゅっと握りしめて、覚悟を決めてフォレストウルフに向かって行く。
「あああああ!!!!」
「ガルル!!ガウ!!!」
森の中で、生き残りを賭けた戦いが始まった。
互いに正面から向かってく。
勝負は一瞬。
喰われるか、喰うか。
たった一撃、その刹那に今の全てをかける。
「ああああっっ!!!!!」
フォレストウルフの突進が掠っただけ。掠っただけなのにとてつもない痛みが走る。
この戦いに勝ったのは。フォレストウルフ。
「グゥ.....グル.....」
[ドサッ...]
ではなく、少女の方だった。
フォレストウルフの首元にナイフが深く、深く突き刺さっている。
そのままにフォレストウルフが倒れると同時に、少女は喜びと痛みがぶつかり合う。
「うう...うあう!!(痛い...痛いけど...私の勝ち!!生き残った!!)」
「う...あぅ...(私の...勝ち...だ......)」
少しずつ痛みが引いていくのと同時に、ゆっくり、ゆっくりと意識がまた、薄れていった。
次回、今度こそ勇者編!(今回も大嘘です気にしないでください)




