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君たちは屈指のチームワークを誇っているようだね

 真帆たち一行と対峙するのはトカゲの顔をした二足歩行の怪物だった。ドロシーにとっては、一度敗北寸前にまで追い込まれた因縁の相手でもある。

「ドロシー、そちらへ逃げましたわ」

「は、はい。えっと、シューティングスター!」

 エカトリーナの指示を受け、ドロシーは星形魔法弾を発射する。短刀による薙ぎ払いを仕掛けて来た夢魔リザードマンだったが、迎撃魔法を回避するため、仕方なしに進路を変更する。


 そこで待ち構えていたのはサクヤだった。

「剛切斬」

 魔法の効果をエンチャントした日本刀でリザードマンを両断する。LV3程度の夢魔ならば、そのまま一撃必殺することも可能だった。しかし、相手はLV8だ。少し前にLV6に上がったばかりでは倒しきるには至らない。


 深手を負ったものの、リザードマンの体力は未だ健在。それどころか、サクヤの一撃を挑発と受け止めたようで、荒い鼻息を鳴らしている。トカゲゆえに発声器官はないのだが、激怒していることは把握できた。


「しつこいわね、このトカゲ。へばってない、ドロシー」

「大丈夫だよ、しぐ、じゃなくて、サクヤ」

 危うく本名を漏らしそうになる。友人に酷似した魔法少女と共闘して怪物を討伐しようとしているとは妙な気分だった。


「みなさん、あのトカゲの夢魔はかなりの防御力を持っているようです。私の魔法で力を強化します」

 エカトリーナは祈るように指を組み合わせると目を閉じた。彼女から発せられた柔らかな光がドロシーとサクヤに降り注いだ。


 彼女が扱う魔法のうちの一つ、「エンハンス」だ。任意の魔法少女の身体能力を高めることができる補助魔法である。

 外見上の変化はないが、体の内から底知れぬ力が湧いていると感じる。リザードマンも両者の変化を警戒してか、じりじりと後退している。


「いっきに行くよ。ドロシー、お願い」

「シューティングスター」

 サクヤの掛け声を受け、ドロシーは魔法弾を発射する。捨て鉢になったリザードマンはダメージ覚悟で突っ込んできた。まず、狙うはドロシー。遠距離魔法さえ消せれば、自身が有利な近距離で戦えるという算段だろう。魔法弾を真正面から受け止めるが、進撃は止まらない。勢い任せに剣を振るう。


 凶器が彼女の胸を抉る。そう思われたのだが、

「スターシールド」

 星形の盾によって剣戟は受け止められた。間抜けな声はすぐさま断末魔の叫びへと変換される。

「くらえ! 剛切斬!」

 全力を入れたここ一番の一刀。袈裟懸けを受け、リザードマンは絶叫した。残された体力もすべて削り取られ、討伐を祝福する音階が鳴らされる。


 勝利の余韻に酔いしれ、三人はハイタッチを交わす。更なる褒美と言わんばかりに、立て続けにレベルアップ音が鳴り響いた。

「いやあ、絶好調だね」

 一体どこに隠れていたのだろうか。さも当然のようにネムが合流してきた。


「本当にあんた、いつもどこにいるのよ。音もなく出てくるなんて、ゴキブリなの」

「ゴキブリは失礼ですから、せめて忍者と例えた方がいいと思います」

「ごめん、エカちゃん。私もゴキブリだと思った」

「ドロシー。あなたまでエカと呼びますか。うーん、ネーミングを失敗したかもしれませんね」

「あの、君たち。僕を勝手にゴキブリ扱いして盛り上がらないでもらえるかな」

 女子会トークに入れないネムはおずおずと飛び回る。


 どうにか、いつもの強気な調子を取り戻し、咳払いした。

「チームで活動する魔法少女は数あれど、君たちは屈指のチームワークを誇っているようだね。平均レベル6だけど、将来有望じゃないか」

「それほどでもあるわ」

 サクヤは鼻高々だ。手柄を独り占めされた心地がして、エカトリーナは後頭部を軽く叩く。


 チーム結成から日は浅いが、見事なコンビネーションを披露していた。遠距離攻撃と防御の魔法が使えるドロシーが遊撃手となって敵の夢魔を翻弄。相手の隙ができたところで、最大の攻撃力を誇るサクヤが一気に仕留める。エカトリーナは後方から魔法で二人の支援をする。各々の特性を活かしたチームプレイの前に、これまで単独では倒せなかった夢魔も汚泥をすすることとなる。


 歓喜の渦に沸いていると、ネムは長鼻を伸ばして指摘してきた。

「今の戦いで新しい魔法を覚えたようだね。確認してごらんよ」

 言われるがまま、ステータス画面を開く。エカトリーナは残念ながら項目に変化がなかったようだが、ドロシーとサクヤはそれぞれ新たな魔法を習得したようだった。特に、サクヤにとっては念願の第二魔法だった。


「前から思っていたけど、魔法を覚える格差がひどくない。私なんか、LV7でようやく次の魔法よ。ドロシーなんか、もう3つも魔法を覚えているじゃない」

 クレームを入れるが、ネムは素知らぬ顔だった。

「魔法を覚える速度や頻度には個人差があるのさ。それに、魔法をたくさん覚えているだけが強さでもない。どう使いこなすかが重要だね」

「なるほど、器用貧乏というやつですね」

「身も蓋もないこと言わないでよ」

 せっかく新魔法を覚えたのに、出鼻をくじかれた思いをするドロシーだった。


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