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一緒に組まない

 変身前の正体も気になることだが、ドロシーにはもう一つ疑問に思っていることがあった。

「二人はチームを組んでいるみたいだけど、どうやって知り合ったの」

「どうだったっけな。えっと」

「つい三日前のことじゃないですか」

 天を仰ぐサクヤに対し、エカトリーナは横やりを入れた。


「そうそう、三日前だったな。私が夢魔キラービーと戦った時だ。どうにか倒したものの、ドジって毒をくらってしまった。あれはもう死ぬかと思ったね。ふらついてろくに歩けやしない。そんな折に出会ったのがエカトリーナだったんだ」

「私の回復魔法で解毒できるかは自信がなかったのですが、どうにか効力を発揮しました。これも決め手になったのかもしれません」

 そう言って取り出したのは青色の液体が入った小瓶だった。マジカルポーションの一種だろう。


「マジカルポーション、ナオルシン。私の魔法と同じく体力を回復する効果があるみたいです」

 サクヤとエカトリーナもそれぞれマジカルポーションを所持しているようである。おそらく、チュートリアル特典のガチャで手に入れたものだろう。


「回復したサクヤはいきなり『私と組まないか』と申し出てきました。突然だったので、びっくりしましたよ」

「いやあ、ひとりで夢魔を倒すのは心細かったからさ。仲間は多い方がいいじゃん」

「私としても、仲間は欲しいと思っていたところでした。私の魔法は体力を回復させたり、身体能力を向上させたりという補助技ばかり。どう考えても誰かと組んだ方が真価を発揮しますし」

 双方合意で協定を結び、コンビとして多くの夢魔と戦ってきたという。ドロシーは感心して相槌を打つばかりだった。


 蚊帳の外に置かれるかと思った彼女だが、ふとサクヤが手を伸ばしてきた。きょとんとしていると、更に迫られる。

「ドロシー。っていうか、真帆も魔法少女になったんでしょ。なら、一緒に組まない。元々あんたとはダチなわけだし」

 言っていて気恥ずかしくなったのか、左手で髪を弄ぶ。願ってもない申し出に、ドロシーは頬を緩ませた。

「もちろんだよ。よろしくね、時雨ちゃん」

「こっちではサクヤだ」

「ごめんね、時雨ちゃん」

「わざとやってるでしょ」

「あの」

 サクヤと二人してじゃれあっていると、エカトリーナがおずおずと切り出した。


「私も、仲間に入れてもらって、いいでしょうか」

 視線が集中して、エカトリーナは委縮する。「いやなら別にいいですよ」と遠慮するのだが、

「もちろんだよ。いいでしょ、サクヤちゃん」

「っていうか、私とエカで既にパーティを組んでいるんだし。そこに一人加わるだけだから問題ないっしょ」

 二人から握手を求められ、エカトリーナは破顔する。かくして、魔法少女三人によるパーティが結成されるのであった。


 魔法少女として大きな変化があったばかりだが、私生活でも大きな変化があった。通学途中で歩いていると、「おはよ」と時雨が合流してくる。挨拶を交わしたのち、話題になるのはもちろん、

「時雨ちゃんもまほ、そうだったんだね」

 魔法少女と言いそうになるのをどうにか堪えた。魔法少女ゲー夢のことは他言してはならない。どの発言が戒律に引っかかるか不明のため、うかつなことは言えないのだ。


「本当にすごい偶然じゃん。いやあ、あの婆さんの言っていたことが本当になるなんてな」

「時雨ちゃんもおばあさんと出会ったの」

 驚愕していると、時雨は首肯する。


 時雨が老婆と出会ったのは、真帆と同じく業後のことだった。自宅へ帰る途中の人通りの少ない路地。そこで魔法使いのような恰好をした老婆が露天商を開いていたのだ。そこでポーションのようなものを飲み、その日の夜にマジカルワールドに招待されたという。


 真帆が魔法少女になった経緯とそっくりだった。ポーションを飲んだ瞬間に老婆が消え失せたという点まで合致している。

 もっと語り合いたかったが、ネムから言い聞かされていたこともあり、話題は最近のテレビドラマについてシフトする。そもそも、老婆のことについても綱渡りだったのだ。相談するにしても、邪魔が入らない場所が必要になる。


 どうしたものかと考えていたところ、学校に着くや眼鏡をかけた女生徒から話しかけられた。髪を校則で定められた長さできちりと切りそろえており、理知的な印象を与える顔つきだった。

「夢咲さんに、霧崎さん」

「綾小路さんだっけ。どうした?」

 時雨が人のよさそうな笑みで尋ねる。成績が優秀ということもあり、名前だけは知っている。けれども、休み時間に話すのは初めてだった。彼女は友人と談笑するよりも、一人で本を読んでいることが多い。


「ちょっと、話したいことがあるので、休み時間に図書館の隣の教室に来てもらえませんか」

 授業中に発言する時とは違い、つっかえながらの申し出だった。面食らって顔を見合わせた二人だったが、「いいよ」と二つ返事をした。一礼して彼女、綾小路文は席へと戻っていくのだった。


「綾小路さんが私たちに用事なんて珍しいね。どうしたんだろ」

「大方、アレなんじゃないか。ほら、ま~」

 わざとらしく「魔法少女」と言おうとする時雨。真帆はすぐさま口を塞いだ。もちろん、冗談であることは分かっているのだが、たまに友人は危険な橋を渡ることがある。


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