7章92話 い号作戦
6月20日。
五十六の姿はブーゲンビル島のブイン飛行場にあった。
「本日を持って、貴君らには重要な任務を行ってもらう」
五十六の言葉には覇気が纏っていた。
「い号作戦、後方に取り残されている友軍部隊を救う為に、全力を持って敵部隊を排除してもらいたい!」
おう! と航空隊の搭乗員らが気合を入れた返事をする。
この世界での山本五十六が立案したい号作戦は次の通りの概要で進められる事となっている。
一、ソロモン諸島及び周辺地域に展開する敵陸上航空部隊による攻撃を阻止または延滞させ、一時的にでも制空権を奪取すべし。
一、同じく同地域に出没する敵機動部隊を発見し次第これに攻撃をかけ、洋上航空打撃能力を喪失させよ。
一、機動部隊はその機動力と優勢なる航空戦力を持って敵機動部隊を索敵、発見し次第現地指揮官の判断によってこれを撃滅すべし。
一、敵艦隊に輸送船団がいる場合、これを第8艦隊の航空戦力で持って基地航空隊と連携、撃破せよ。
と大まかに纏めるとこのようになる。
ブイン飛行場含む5ヶ所の航空基地に集結した航空部隊は多く、ここで敵を完全に潰してやるといった空気が流れていた。
だが致命的なミスとして偵察行動が消極的で、米軍の兵力を掴んでいないことにある。
日本軍が集結させた航空戦力を纏めるのは第1航空艦隊だが、米軍は第18、21、22空軍と大幅な増強が行われていた。
これを機数で表すと約1600機対4700機。米軍に関しては欧州戦線に出払っていた航空部隊も続々と本土に戻って来ている背景もあり、その数は恐ろしく膨れ上がっていた。
と言っても、第1航空艦隊と言うのは遊兵箇所になっていた地域から抽出して派遣させた部隊ばかりで、現地部隊は少ない。
使用機種もバラバラで、彰策定の航空用兵企画は進んでるが機種転換と編成まで完全に終わっているのはまだ少なく、その点については仕方ないと言えよう。
だが頭数を揃える事に集中していた連合艦隊首脳部は旧式になりつつある九九艦爆と九七艦攻までもを駆り出してきている。
性能が違う機種を同じ作戦に投入するのはあまり好ましくないのは皆が知っていた事だが、如何せん数が少ない……。
この時程、連合艦隊首脳部は中国戦線の縮小の早期集結を望んだという。
い号作戦発令後、各航空隊は作戦要項に従い作戦行動を開始した。
詳しい作戦内容を後述するとして、今現在の勢力範囲を解説しよう。
彰の知る史実とは異なり、かなり単純的な範囲が各々の勢力範囲となっており、日本軍は戦線縮小も行っており最前線はガダルカナル島。
そこから北へと主要拠点で行くとマライタ~フロリダ~ニュージョージア~コロンバンガラ~ベララベラ~ショートランド~ブーゲンビルと繋がっている。
つまりはソロモン諸島とラバウルまでの北側の諸島が日本軍の勢力範囲となっている。
米軍はエスピリットサントを後方拠点に最前線はレンネル島。ポートモレスビー含むルイジアード諸島等の南側が勢力範囲となっている。
南北での衝突とあって、かなりの範囲で日ク軍は防衛線を張らねばならず、彰は全体に均等に行き渡らせず重要拠点のみを集中的に守る事としている。
だがガダルカナル島に毎日のようにやってくる米軍機との戦闘で日に日に戦力は消耗しており、厳しい状況である。
それに比べて続々と戦力を増やしつつある米軍は無限に近い補給と航空戦力によって攻撃を激化させており、ガダルカナルの鎮圧も近い程である。
だがガダルカナルを中心とした南部戦線とは違い、北部戦線は中々上手くいっていなかった。
というのも、一番近いブナでもラバウルまではニューブリテン島を通過せねばならず、途中にある監視網に必ず引っ掛かる。そしてその情報を元に日本軍は有利な態勢で迎撃をしてくるのだから容易ではない。
そしてそこにい号作戦の為に集結したブーゲンビル島の大航空戦力。これを叩く為にはソロモン海を横断せねばならない。
痛し痒しといった戦況である。
1030。
ブインに集結した第62航空戦隊の所属機らはラビに向けて出撃を開始した。五十六が計画した攻撃計画は次の通りである。
X攻撃:攻撃目標ブナ、ラビ
第62航空戦隊 9個航空隊
Y攻撃:攻撃目標ポートモレスビー
第12、61航空戦隊 13個航空隊
Z攻撃:攻撃目標レンネル
第26航空戦隊 4個航空隊
これらを同時に発進させ攻撃を仕掛け、一時的にでも航空能力を潰すという計画であるが、同時に行われるのが「撤号作戦」である。
機動部隊は第3、第8艦隊だがこれとは別動で第6航空戦隊(千歳、千代田)を中核とした第4艦隊がガダルカナル島に突入するのである。
輸送船は20ノットは出せる高速艦を厳選して出したのだが、数は18隻と少なく、3万人が取り残されているのにも関わらず明らかに少ない。
残りは空母にでもという案を採用したが為にこの様な形での作戦決行となってしまったのだ。
既に牽制の為の機動部隊と支援艦隊は出撃しており、タイミング合わせて第4艦隊が突入する訳だが、連合艦隊首脳部誰もが知らない問題が発生している。
敵の主力はレンネルにあるという情報が五十六らに伝わっていないのか、五十六らは主力はポートモレスビーにいると判断しているのだ。
故にレンネルに差し向ける兵力は少なく、第4艦隊の突入時に残存戦力によって叩かれるリスクが高い。
行動を急いだが為の欠点である。
リスクを抱えたい号作戦は、既に決行されているのだ……。
―――――――――――――――
い号作戦決行の知らせを受けた彰は自分の決断力の甘さを反省していると同時に、五十六の作戦への甘さに疑惑を抱いていた。
「主力はレンネルなのに、これじゃ史実と同じ様に意味の無い作戦になってしまうじゃないか……」
「でも航空攻撃で少しでもこの島から全員が脱出出来る可能性があるならそれはそれで良いのでは?」
源田が彰の心配を和らげようと声をかけるが、それでも彰は不安を隠せないでいる。
「それはそれで有り難いけど、確実に成功するとも限らないし……」
送られた情報では第4艦隊の数が明らかに少な過ぎる。果たして3万人が乗れるかどうか……。
「六を信じるか」
あーだこーだ言っている自分だが、い号作戦を立案し決行したのは五十六だ。自分よりも軍歴は長く、戦闘も熟知している。
心配する必要は無い……。
始まったい号作戦、まず行われたのはレンネル島主力を狙う(五十六は別部隊と思っている)Z攻撃である。
部隊の内訳は、
【第26航空戦隊】
・第153海軍航空隊
二式艦偵12機
・第205海軍航空隊
零戦144機
・第763、765海軍航空隊
一式陸攻288機
合計 444機
と大兵力である。あのハワイ攻撃でさえ一度に183機だったのだから、どれだけ航空戦力が蓄えられているのかが見て取れる。
第26航空戦隊が集結したのはベララベラ島。ここからレンネル島までは遠いのだが、途中にガダルカナル島がある為帰還時はそこで補給してからという行動計画である。
レンネル島に配備されている合衆国航空隊は戦闘機840機に重爆撃機、艦上爆撃機等合計1250機近くが配備されており、かなり充実した戦力である。
これらを連日ガダルカナル島に飛ばしている訳だから、ガダルカナル島の2個戦闘航空団も徐々にその戦力を減らしている。
かくして、実施されたZ攻撃。結果は残念ながら失敗となってしまう。
1225に攻撃を開始した第26航空戦隊だが、その30分前に行われた大空中戦は待ち構えていた300機近くのF4Fの奇襲から始まる。
ベテラン揃いの制空隊奮戦するも数で押してくる大群に敵わず進撃途中で一式陸攻を48機喪失。
更に米軍は第二段で250機のP−38とP−40の重戦闘機でこれもまた奇襲。更に一式陸攻が70機撃墜される。
爆撃を開始した残存一式陸攻170機は更に待ち構えていたソロモン海域では初見参のF4Uコルセア戦闘機120機の追撃に追われながらの攻撃。
更に撃ちあげてくる猛烈な対空弾幕の中に突撃していく。
結果として爆撃対象であった駐機中の航空機は確認戦果200機(実際は110機)、燃料タンク3個破壊、弾薬庫1個破壊という微妙な結果となった。
更に悲劇だったのは追撃戦である。ご存知の通り装甲が皆無の一式陸攻は撃たれたら殆どが撃墜されるという状況で、上手くガダルカナル島に滑り込んできたのはたったの80機。
実に参加機数288機の内208機が失われた事になる。
米軍に上手く引き剥がされてしまった制空隊はそこまで損害は少なく、全144機中残存は98機。
それでもベテランが40人以上失われた事を意味する。これは攻撃・爆撃経験の豊富な一式陸攻搭乗員でも言えることだった。
続いて行われたのはポートモレスビーとブナ、ラビを目標とするX、Y攻撃である。
こちらは敵の不意を上手くつけたのか被害は少なく、3個戦隊合計で250機の喪失である。だがポートモレスビーの攻撃に向かった第12、61航空戦隊の機体は被弾によるせいか負荷が大きく、帰還しても破棄が決定したのが30機と、無理が祟った。
彰はこれでレンネル島に敵の主力がいると気付いてくれるだろうと思っていたが、彰が愚策と考えていた出来事が発生してしまう。
連合艦隊首脳部は各航空隊に必ず配備していた偵察機部隊を上手く活用せず、更に主力はポートモレスビーにあると未だに勘違いしていた。どうやら彼女達はポートモレスビー含む西部を鎮圧してから本腰を入れるというらしい。
明らかに機数が異常なまでに揃えられているレンネルは後回しで、ポートモレスビーに固執している。何故だがは相変わらず理解出来ない。
少なくとも一番の愚策は、被害の少なかった指揮下の航空隊をレンネル攻撃の為に異動させた事にある。しかも各航空隊から1個ずつ。
「何故レンネル島に主力がいると考えないんだ……」
彰は苦情という形で五十六に現状を報告する。これをしっかり読んでくれれば良いのだが……。
ブインに司令部を置いた連合艦隊の五十六の下に彰から送られてきたレポートが届けられたがそれに最後まで五十六が目を通す事は無かった。
「長官、念の為レンネル島に偵察を出しては如何です? 彰も何やら焦っているようですし……」
「いらん。どうせあのバカ女に色々吹き込まれているんだろう、米軍の主力はポートモレスビーにあると偵察からの報告でもあがっている。何故わざわざ別働隊のいるレンネル島を偵察する必要性があるんだ?」
どうやら五十六は忠一との喧嘩を引き摺っているようであり、その影響からか彰の意見にさえストレスを感じている。
高須もこのままではマズイと考えており、解決策を練るがいい案が浮かばない。
「長官。このまま無意味な攻撃を続けるのであれば彰も言っていた小出しによる損耗が避けられませんよ? 私情を挟むのはあまり宜しく無いかと……」
五十六も良くないと本音では理解していたのだ。軍人である以上に連合艦隊、ひいては海軍部隊全てを率いる長なのである。
だが女の意地とでも言うのだろうか、悔しさが先に出てしまう。
「……偵察出しといて」
仏頂面を隠しながら渋々と命令を出す五十六を見て静かに微笑みながら、高須は部屋から退室した。
日本軍の襲撃を受けたレンネルの第21航空軍集団(統一指揮としてカーチス・ルメイの部隊の指揮下となった)は初めて規模の大きい空襲を受けた事に焦りを感じていた。
つまるところ、これまで経験したことの無い数の空襲を受けたという事は敵の主力部隊が集結しているという可能性が高く現実へと向かっている事を意味している。(この時点では米軍は把握していない)
これを放置すれば、敵の航空戦力の数がどれだけか知らないが少なくない打撃を受けて味方の航空部隊が壊滅する恐れもある。
ルメイは急ぎ指揮官を招集し、同時に海軍部隊の指揮官も呼んだ。
「今回各航空基地が日本軍の航空部隊によって空襲を受け被害を受けました。よって私はここに海軍との合同で敵の主力部隊を完全に撃滅する作戦を提案します」
カーチス・ルメイ。齢15歳にして航空軍の指揮官に抜擢された稀に見ない優秀者であり、その卓越した指揮能力と現場把握能力は叩き上げの他指揮官にも引けを取らない。
彼女の身長に合わせられたホワイトボードに可愛らしい文字が並べられていく。だが出席者の顔は本気の顔で、一切の冗談も通じない空気である。
それまでにして日本軍が与えたプレッシャーというのを米軍側は感じているのだ。
「作戦名ナイトクラッシュ、この作戦で敵の主力を文字通り粉砕します」
ルメイの強いこだわりが感じられる作戦。内容は次の通りだ。
1、昼間は味方爆撃機による連続攻撃によって敵主力部隊の封殺。
2、爆撃部隊が補給の為帰還中は艦載機部隊による制圧。
3、夜間は一切の航空攻撃を切り上げ、戦艦、重巡を中心とする水上打撃群を編成し艦砲射撃による敵拠点の無力化。
所謂数による断続的な暴力のような内容の作戦である。
「私は特に異論は無いがなぁ、少し無茶じゃないか?」
第21空軍指揮官のジェシー・スパーツ准将が難色を示す。
ジェシーは第21空軍指揮官のカール・スパーツの姉で、大人しい妹を裏の性格があるルメイには近づけさせたく無い意図がある。
「確かに無茶かもしれないけど日本軍なんかたかが知れている。日本軍……ジャップが何人死のうと知った事では無い、必要なのは我々合衆国軍の勝利だ」
ルメイの裏の性格が見える言動である。ちなみに、カールは12歳である。
「お姉ちゃん、何だか怖い……」
才能故大抜擢された彼女でも中身はまだか弱い少女、怖がるのも無理は無い。
「確かに多少なりとも無茶が見えるな。敵はかなりの数を揃えていると見れるぞ」
第3艦隊指揮官のジョン・マケイン(中将に昇進)も難色を示す。
「数で叩き潰すならこのくらいしないと効果は無い。暗号や偵察による情報では少なくとも敵は3個航空戦隊、1800機はこの海域に引っ張って来ている。夜間は艦砲射撃でもせねば簡単には機能を喪失しないだろう」
ルメイの主張も最もだったが、敵の数を見謝ればこちらの損害も増える事は事実であった。
「まぁ、やると言うのであれば我々も全力で支援しよう。レイは?」
第5艦隊のスプルーアンスに話を振る。
「私の所もやると言うのなら全力でやろう。ただ、日本軍の機動部隊に対する警戒は誰がやるんだ? 私の所は元々地上支援専門、ジョンの所は機動戦闘を専門としている。私が稼働全艦で支援し、ジョンはもっぱら日本の機動部隊を警戒してはどうだろうか?」
スプルーアンスの言っている事は最もであった。米軍はこの時知らなかったが日本軍はトラックに主力を集結させており、即応態勢に入っていた。
だがこれも米軍は知らないのだが、米軍にとって嬉しい事にキングの策でインドに残されていた英軍の第11方面軍(ジョージ・ギファード大将指揮)が米軍の支援を受けてビルマに駐屯する日本軍に激しく抵抗。
この為ビルマ方面の支援の為に日本軍は空母を割かねばならなくなり、トラックにいる空母戦力は若干ながらも低下してしまったのだ。
「ならそうしよう。なるべく早い方が良い、2週間後に決行でよろしいか?」
ルメイの即決性は上層部から買われている点である。有能な人物を指揮官にという合理性のある米軍の性格を考えると、まさしくルメイという指揮官は適任であろう。
決まった以上ジェシーもカールも従わざるを得ない。かくして、レジスタンス作戦が決行される事となった。
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7月5日。
航空戦力の損耗は互いに多く、本格的な空戦から小競り合いまで100回近い戦闘が行われていた。
特に日本軍にとって航空機の損耗というのは厳しく、米軍と違い月産量は少なく、補充も効率良く行われていないのが現状だ。
ここで日米の生産推移等を並べておこう。
彰による船団航法と十分な護衛戦力の編成と運用により本国に入ってくる資材は多くなり順調に生産が行われ、今では驚くべき事に月産1,200機を誇る。
日本からしたらかなりの数ではあるがアメリカの場合はどうだろうか?
1943年の米軍航空機総生産量は8万4000機程であるが、これを月産にすると7,000機となる。
明らかに生産量のレベルが違く、更に言うと船舶製造数も段違いに違う。つまり補充に格段の差が生まれてくる、これが日本軍の戦力低下に影響してきているのだ。
もっと掘り下げると日本軍が展開していた狼群戦術による通商破壊作戦も、米軍が急ピッチで建造しているカサブランカ級護衛空母と護衛駆逐艦、更に潜水艦による日本船団への通商破壊作戦も激化し少なくない被害を出している。
これらの影響から日本の損耗は徐々に徐々に増え続け、航空機は生産できても補充がままならないという状況が作り出されているのだ。
更に互いが爆撃や戦闘で消耗する銃弾や爆弾の量は凄まじく、コンボイ輸送でも足りるか怪しい段階にまで日本軍は枯渇しつつある。
米軍もコンボイだが何しろ規模が違う。消費する量以上の物資を届けてくるのだから。
そんな状況の中、遂に米軍はナイトクラッシュ作戦を決行した。
米軍は作戦の一部を変更し、一度に出撃させる部隊を小分けして、空襲と空襲の隙間を短くするように工夫、断続的な空爆が行えるようにした。
無論、爆撃機の倍以上の護衛を付ける事は忘れていない。
米軍は幾度にも渡る偵察の結果、日本軍の主力部隊はブインを中心に点在すると正しく分析、集中的な空爆を仕掛けた。
無論日本軍も警戒網に入ってきた時点で迎撃態勢を敷き迎え撃ったが、数多くの戦闘機の妨害にあい撃墜戦果は戦闘機12に爆撃機20のみ。
断続的で隙の無い空爆の前に手も足も出ず、遂にい号作戦は中止。投入戦力の6割を喪失して後退した。
ウィリス・リー中将座乗のサウスダコタを先頭に5隻の戦艦が単縦陣でひっそりと静まり返った海を12ノットで進んでいる。
「提督、そろそろブインです」
参謀長の報告に静かに頷く。
「全艦砲撃用意、斉射後は各艦の自由射撃」
毎秒4度のスピードでゆっくりとモーターを響かせながらサウスダコタの主砲がゆっくりと旋回する。
それに倣うように後続のマサチューセッツ、アラバマ、アイオワ、ニュージャージーも主砲を旋回させる。
「ファイア!!」
6発の40.6センチ砲弾が轟音と共に発射される。闇夜に突如として閃光が迸り、黒煙が船体を隠す。
ブインに着弾する砲弾は真っ赤な炎をあげるか放置された滑走路に大穴を開けるかして耕すように破壊していく。しかし惜しむべきは日本軍の軍事拠点への攻撃が全て無駄である事だった。
リーは第34任務部隊として、これまでの日本軍に対する鬱憤を晴らせると言わんばかりに執拗に砲撃を繰り返させた。
着弾地点を10メートルずつずらし、徹底的に日本軍の拠点を粉砕するが如く……。
ガダルカナル島に取り残された彰とニミッツ、ハルゼー、マッカーサー(姫宮咲良)らは島からの脱出方法を考えていた。
だがい号作戦は艦隊部隊を除いて作戦を中止しており、艦隊による作戦は「撤号作戦」と名称を変えて継続されていた。
「アキラ、この先私達がどうなるか予測はつくか?」
ニミッツが温かいコーヒーの入ったカップを両手に持って話しかける。ニミッツが差し出すと彰は軽く会釈してそれを受け取った。
「まだわかりませんが、角田さんからの連絡では明日には突入を開始するみたいです。主力の第3艦隊と支援の第2艦隊が総出で来てます」
彰の手元には参加している部隊が纏められた資料があった。
今回の撤号作戦に参加しているのは以下の部隊である。
【第3艦隊】小沢治三郎中将
・第1航空戦隊 大鳳、雲龍
・第2航空戦隊 加賀、飛龍
・第7航空戦隊 天城、龍驤
・第3戦隊 金剛、榛名、比叡、霧島
・第4戦隊 高雄、愛宕、摩耶、鳥海
・第8戦隊 利根、筑摩
・第2水雷戦隊 軽巡1、駆逐艦16
・第4水雷戦隊 軽巡1、駆逐艦16
【第8艦隊】原忠一中将
・第3航空戦隊 飛鷹、隼鷹
・第4航空戦隊 瑞鳳、龍鳳
・第5航空戦隊 翔鶴、瑞鶴
・第2戦隊 伊勢、日向、扶桑、山城
・第5戦隊 妙高、那智、足柄、羽黒
・第7戦隊 三隈、鈴谷、熊野
・第1水雷戦隊 軽巡1、駆逐艦16
・第3水雷戦隊 軽巡1、駆逐艦16
【第4艦隊】トーマス・キンケード少将
・第6航空戦隊 千歳、千代田
・第10戦隊 阿賀野、能代、矢矧、酒匂
・第11戦隊 アイダホ、ミシシッピ、オクラホマ、メリーランド
・第5水雷戦隊 軽巡1、駆逐艦16
・輸送船18隻、海防艦20隻
第3、第8艦隊は第4艦隊をカバーできる範囲に分散し、何れかが敵艦隊を発見した際は攻撃を我慢し第4艦隊と自艦隊の防護を優先する事となっていた。
第4艦隊は予定通りガダルカナル島に強行突入し、なるべく短時間で味方を収容する事になっている。
5航戦旗艦の翔鶴甲板上に見慣れた人物がいた。かつて腰まで伸ばしていた髪をバッサリと切り落とし、飛行服を来て改造した複座零戦の後部席に隠れていた。
「しかし良いんですか? 後で自分まで懲罰を食らいそうなんですが……」
「良いの! 私が脅して無理矢理って言い通してあげるから、大井君はガダルカナル島に強行着陸して頂戴!」
彼女の名は南雲忠一。
指揮官の任を解かれ、暇となった彼女は最愛の人の元へ向かうべく飛行士として紛れ込んでいた。
(待っててね、彰……!)
fin
大変お待たせしました、松ちゃんです。
久しぶりの投稿になりましたが、話がちゃんと出来上がっているのか、続いているのか内心不安になっています。
誤字脱字ありましたら指摘をくださると幸いです。




