表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
PR
93/96

7章91話 対立

 ドシドシと爆弾を落としていく米軍機に為すすべも無く、やがてポートモレスビーの航空能力は完全に無力化された。


 ラバウルに駐屯する塚原中将もこれはまずいと悟ったのか、ガダルカナルにいる彰に増援を送るように意見具申を送っているが彰はこれを却下した。

 既に軍部では南方の放棄は決定されており、これ以上の兵力増強は行わないと頑なに拒んだ。


 米軍に少しでも優位にたつ為には戦力の小出しによる損耗は愚策中の愚策であり、少なくない犠牲を出してでも今から戦略を温存する必要性があると彰は考えていた。

 だがこれほどの航空戦力を出して来た現実を考えると、まだ後退が終了していないクーデター軍の事を考えるとそうも言っていられないのが現状でもある。


「敵の戦力は分かっているんですか?」


 彰は自身の副官として任命された源田実中佐(後に大佐進級)に質問する。


「どうやら機動部隊が3群(実際は5群)、戦艦を中核とする部隊が3群確認されています」


 綺麗に纏められたポニーテールが揺れる。


「全力でかかってきたか……」


 流石の彰も判断に迷ってしまう。兵を出せば大規模な衝突は避けられず、かといって小出しをすればやられほっとけば味方が死ぬ。


「先輩、ここは迷っている場合ではありません。決断しないと大勢の味方が死ぬんですよ?」


 源田が彰を先輩と呼ぶのはいくつか理由があるのだが、大きな理由は海軍内でもありえない大出世を成し遂げた事による尊敬であった。


「源田さん、もし本隊を出すとしてもトラックからここまでは時間がかかる。それよりも組織的な抵抗を行った方が得策だ」


 彰は机の引き出しから書類を取り出すと源田に渡す。


「これは?」


 表紙の文字を読んで驚いたのか彰に問いただす。


「俺が秘密に計画してた『初段カウンターキャンペーン』だよ」


 源田はまじまじと書類を眺める。これまで奇策をもって様々な困難に立ち向かった先輩の考えた作戦、今度はどんな事が起こるのだろうと源田は尊敬の眼差しで彰を見つめた。


 だがこの初段カウンターキャンペーンが、思わぬ困惑を生み出すとは彰は思ってもいなかっただろう……。




 空路が一時的に遮断されたラバウル含む通称「東南拠点」は米軍の海軍戦力の存在もあり海路もほぼ遮断状態に陥った。

 これにより兼ねてより遂行中であった後退輸送が中止となり、ガダルカナルを中心にクーデター軍、日本軍合わせて3万人以上が取り残される形となってしまった。


 ラバウル航空隊も戦力を集結させ頑強に抵抗を行い唯一周辺の制空権は保っている。

 だが戦力を集結させた結果ラエに展開していた第3、第7航空戦隊は撤収。海軍の建てた輸送予定が完全に頓挫してしまう結果となる。




「さて、今日皆に集まってもらったのは他でもない。僕が他の皆さんに内緒で立ち上げた初段カウンターキャンペーンの発動を決定した事による詳細説明の為です」


 ガダルカナルに取り残される形になった彰は日本海軍航空隊、アメリカ海兵隊、陸軍の主要指揮官を召集した。


 殆ど彰の独断による勝手な部隊運用となってしまうが、懲罰にかけられる覚悟を持って彰は作戦の発動を決心したのだ。


「それではアキラ、作戦概要を説明してもらえるか?」


 ハルゼーが若干彰を睨みつつ言葉を放つ。どうやらこの間の口滑りを気にしているようだった。


「まず初段カウンターキャンペーンはここガダルカナルを拠点に積極的な制空戦闘を敵部隊に対して仕掛けます。現在の航空編成を一新し、指揮効率重視型に変更します」


「日本海軍側は飛行団名第343戦闘航空団。指揮下に残存隊と派遣部隊を組み入れます」


「クーデター軍側は第1特別戦闘航空団、指揮官と搭乗員の選抜はそちら側に一任します」


 と、ここでニミッツから質問が飛んできた。


「搭乗員の選抜とはどういう事だ? そのままの部隊を使うわけには行かないのか?」


「いえ、そのままの部隊を使う事は若手の損耗が増えるだけです。よって、申し訳無いが今回の作戦に限って我々の指揮下に入り組織的な戦闘を行ってもらいます」


「それと、選抜の条件ですが各中隊より飛行技量甲なる者を選抜し編成させてください。指揮官には下士官士官関係無く、飛行技量が特に優秀な者を指揮官にしてください」


 彰の説明は続く。


「海兵隊の方々の技量を侮っている訳ではございません。ですが全体を見渡せない人物を指揮官にして何が起こるかお分かりですよね? 戦場を熟知し、幅広い視野を持つ者が指揮官になった方が効率が良いと判断しました」


「作戦開始は明日、突然で大変申し訳無いですがただ今より選抜・編成作業を行って頂きたい」


 パイロットとしての誇りの強い海兵隊航空団の指揮官らは多少嫌気が指していたが、この状況下で文句は言えない。


 何故なら彰の言っていることは制空権奪回の為の制空戦闘としての戦術上理に適っており、搭乗員選抜も必要な事である。

 指揮官に関しても視野の広い熟練を前に立たせねば無駄な損耗が増えるだけであり、これといった反対材料が無いのだ。


「よし分かった、私はアキラの作戦に乗る。今すぐに作業に取り掛かろう」


 海兵隊の第89戦闘航空団指揮官のサジェスト大佐が席を立ち颯爽と部隊へと向かって会議室を後にした。


「私達も特に異論は無いな。友軍の戦術にも大いに興味がある、是非参加して学ばせてもらうよ」


 陸軍第506戦闘航空団のカーター大佐も賛同してくれた。

 同じく陸軍第18戦闘航空団のマーキン大佐は難しい表情をしていた。


「特に反対する事はないのだが、余った搭乗員はどうするんだ? そのまま放置というわけにもいかないだろう」


 マーキン大佐の言う事は最もであったが、その点についても彰はしっかりと考えていた。


「ご心配なく。選抜より漏れ余った優秀な搭乗員らにはこの基地上空の制空任務を命じます。戦闘航空団とは別に、基地上空の直掩が任務です」


 納得がいったのか、笑みを浮かべて彼も会議室を後にする。

 組織的な制空戦闘は通常の部隊でも出来るという批判を覚悟していた彰だが、だからこそ制空戦闘が任務の部隊を早めに作っておきたかった思惑があった。


 彰はもう米軍が大反攻を始めた時点で、数ヶ月先の未来が読めているかのように……。


      ――――――――――――――――      


 初段カウンターキャンペーンについての作戦実施は五十六の下にも「要請」ではなく「意見具申」という形で連絡が届いたのは彰が発動を決心した二日後であった。


「彰から初段カウンターキャンペーンについての作戦実施についての意見具申が届きましたが、一は何か話を聞いていましたか?」


 彰が秘密に計画していたこの作戦を全く知らなかった五十六は忠一に聞いてみる。


「ううん、私も何も聞かされてないよ。でも、結構書類が厚いけど……」


 五十六が皆にも配った書類は細かい実施要項等を含めると10枚程の束となっている。


「取り敢えず、初段カウンターキャンペーンについての概要を説明します」


 五十六が四郎に目配せする。四郎が立ち上がり、書類をめくった。


「作戦名、カウンターキャンペーン『始号作戦』」


「一、本作戦は機動部隊に打撃を与える事を主任務とせず、友軍部隊の撤収作戦を円滑かつ被害を最小限に抑えるべく行うものとする。


一、効果的な防衛作戦を行う為厳選力を2分割、主力を第3艦隊とし予備兵力及び主力支援部隊として第8艦隊を編成するものとする


一、船団護衛として新たに護衛艦隊を改編し、戦力の集中を図るものとする


一、制空専門任務部隊として戦闘航空団の編成を行い、制空任務にのみ活用する事とする


一、戦闘については一定の戦闘要領に従いつつ、細かい点は現地指揮官に一任」


 大まかな作戦概要を四郎が読み終えた後誰もが難しい顔を作る。


「殆ど新しい試みですね……機動部隊の分割に反対していた彰がそれをわざわざ分割させるとは、一体どういう事なんでしょうか……?」


 流石の四郎も困惑気味だ。


「私にもわからないわね。でも一切の信頼を置くのもわかるけど、細かい事まで口を出さないでもらいたいのわ事実ね」


 原が苦言を漏らす。原はバリバリの実戦派であり、こうも彰主導による作戦に多少腹を立てているようだ。


「私は特に異論は無いな」


 角田が賛成する。


「しかし何故わざわざ制空戦闘を任務とする航空隊を新設する必要性があるんだ? 既存の航空隊では駄目なのか?」


 その点については他の誰もが同じ考えであったらしく、あれよこれよと話を始めた。


「あ……」


 ふと、忠一が思い出したように言葉をもらした。


「一、何か心当たりでも?」


 四郎が問いかけてみる。


「うん、横浜で聞いた話なんだけどね……」


 忠一は第343戦闘航空団について話し始めた。


 彰が新たに立ち上げた第343戦闘航空団は史実でも存在しその名を轟かせたのは皆さんもご存知の通りだろう。


 本土空襲が本格的に行われていた時期、北九州の空を守る為に今は彰の副官である源田実によって開隊された戦闘機部隊である。


 この頃にしては珍しく編隊戦闘を重視したベテラン揃いの部隊で、数々の米軍機を相手に劣勢になってしまうまで常に優位な体制で戦い続けた有名な戦闘機部隊である。

 彰はその航空隊が昔からのお気に入りであり、史実とはそぐわないが今回の作戦より新たに組織していこうという試みの一つである。


「へー、彰の世界でね……」


 確かに、と草鹿が話し始める。


「我々海軍航空隊の基本戦術は1対1の格闘戦が基本となっています。米軍が編隊戦闘を重視するならばいずれは……劣勢に立たされてしまう。それを割けるための編隊戦闘をですか……」


 草鹿が劣勢と言葉を濁らせたのはやはり軍人としてのプライドであろう。


「私は? 私の出番は無いの??」


 軍一が子供の様に(子供だが)待ちきれんと駄々をこねる。


「三川さん、落ち着いてくださる? 長官殿が話せませんよ?」


 栗田が軍一に言うが、軍一の駄々は止まりそうもない。


「ははは……取り敢えず、私の考えを言おうと思う」


 五十六の発言により和みの空気が一変し、全員が五十六に注目する。

 普段こそ仲良く、和気藹々と楽しげに階級関係無く話す彼女らだが、五十六は連合艦隊司令長官。全員の上司でありその発言は重く強い。


 理に適った戦術を叩き出す彰の意見を採用するだろうとほぼ全員が想定していた。だがそのほぼから外れた一人が逆の意見を口にした。


「私は初段カウンターキャンペーンの意見具申を却下します。機動部隊分割案は採用するとし、戦闘航空団編成は時間がかかり現状余裕はありません」


「それと護衛艦隊は数々の輸送路を守る要。彰もそれを承知の上でしょうが私は一括投入案を破棄しこのままの兵力で輸送船団を護衛するものとします」


 まさかの反対者が五十六であった。


「長官、理由を聞いても?」


 四郎が質問するが五十六は当然とでも言う様に答える。


「機動部隊分割案は迷いましたが敵の戦力が未知数。分割すれば各個撃破される危険性もありますが纏めていればミッドウェーのように一網打尽にされる危険性も否定出来ない、よって分割し手持ちの駒に余裕をもたせようと思う」


「護衛艦隊については彰には申し訳無いけどこれ以上数を増やす事が機動部隊護衛艦の都合上不可能。だから統一は無理だから、せめて兵力の比較的多い第1護衛艦隊に輸送船団を守らせようと思ってるの」


「戦闘航空団についても、技量甲なる優秀な搭乗員を選抜して効率的な制空戦闘を行うのは確かに魅力的だし若手を入れた戦闘よりは遥かに互角に持ち込める。けれど選抜して編成したとしても従来の格闘戦では駄目だと言うのならチームワークを形成するのに時間をかけて訓練する必要性が生まれる」


「敵部隊が大規模ならば時間が無い。現有戦力の投入によって制空戦闘を実施させる方が効率的です」


 五十六の判断は最もであった。確かに簡単な訓練と言っても少なくとも3週間、いや、一ヶ月はかかると見積もれ、更に指揮系統の確率、その他の事を考えると急を要するなら無駄が多い。


 それならば既にチームワークが確立している既存の部隊を投入すると判断するのは最もであり、普通の考え方である。


「ですが長官、流石に護衛艦隊の統一は……」


 四郎の反論を塞いだのは以外にも護衛艦隊総指揮官を兼任している小沢中将であった。


「いや、申し訳無いが本当に兵力に余裕が無いんだ。ただでさえ大型空母を2隻に戦艦を4隻建造しているんだ、護衛艦を建造する暇が無い……」


 小沢の皮肉の篭った大型空母とは大鳳型2番艦の白鳳と暁天型1番艦の暁天の事である。


「小松君の第6艦隊は護衛戦力には残念ながらならないしなぁ」


「いやぁ、なんかごめんねぇこんな大変な時期に役に立てなくてぇ」


 寝起きなのか、のんびりと小松が答える。だが第6艦隊は敵輸送船団に対する通商破壊任務についており、必ずしも役に立っていないという訳ではない。


「それよりも長官、ラバウル方面にはテコ入れするのか? しないのか?」


 角田が尋ねる。


「仲間が取り残されている以上、我々海軍は全力を持ってこれの救出に当たります。作戦発案については暫くの間時間をもらいたいなと」


 五十六は暫くは出撃態勢で待機せよと命令を下す。


「ねぇ長官、どうして彰の案を採用しないの?」


 忠一が不満たらしく食いついた。


「さっき言った事のまんまだよ。確かに合理的で私達には思い浮かばない事ばかり。正直この席を譲っても良い、過言では無いね」


「けれど私達は軍人、ただ人の計画をはいそうですかと採用するわけにも行かないし、そんな事より我々も今回の反攻は予測出来ていた事、座して待っていたつもりじゃない」


 つまるところ何かしらの対策を練っていると考えられる。


「でもまだ具体的な計画がたてられてないんでしょ? それだったら、その計画が建てられるまで案を採用しても良いんじゃないの?」


 忠一の言い分にも理が無い訳じゃない。時間が無いのであればその間に戦闘航空団を新設し訓練を行えば、計画している間の時間を有効に使えると判断したのだ。


「ならばその訓練時間を利用するより動員出来る部隊の数を増やした方が得だ。出撃命令が出ても近場ならともかく場所は遠方、出撃には時間がかかるのは一も知っているでしょう?」


 遠方への展開出撃となるならまず展開する前方基地へ連絡から始まり、整備員、燃料、弾薬、駐機スペース等様々な準備が必要となる。


 時間がかかるのであればその分展開させる部隊数を増やした方が良いのは確かにその通りだ。


「それなら機動部隊がいるじゃない、出撃待機なんだから、すぐに動かせるし……」


 尚も食い下がる忠一を五十六が戒める。


「くどいぞ一、何故そこまで食い下がる。決定は下されたんだ、時間は有効に使いたい」


 ここまで強く言われると思って無かったのか、忠一は思ってもない事を口走ってしまう。


「……何よ、彰の案は積極的に採用するとか言ってた癖に、彰が戦果を上げ過ぎたら自分達のメンツが危なくなるから採用しないの?」


「……何だと?」


 忠一の発言に五十六が怒気を纏って席を立つ。


「そうじゃない。合理的だと何だと言って彰の案を貴女はその職権を使って幾分が強引に押し通してきたのに、メンツが危なくなると自分達でどうにかするって……未来人の彰を超えられるとは私は思ってない」


「第一、私達が建てた作戦だって彰の手直しが入ってるじゃない。それをほいほいと採用した癖に、今更……」


「いい加減にしないか貴様ァ!!」


 先に怒鳴ったのは五十六であった。あの温厚な五十六が怒鳴ったのは何年ぶりだろうかと言わんばかりに四郎が驚く。


「貴様我々が陸軍の馬鹿共のようなメンツ保護団だと考えているのか? さすれば貴様の頭の中身は彰どころか我々にも追い付いていないぞ若輩者めが!!」


「我々とて米軍の反撃を座して待っていた訳ではないと言っているだろうが! 今は時間が惜しい、新たに部隊を立ち上げるよりも既存の部隊を動員した方が効率的だと言っているだけだろうが!!」


 驚きながらも反撃をする。


「それを今更って言ってるのよ! ならば前々から自分達で効率良く準備をしておけば良かったじゃない! 何、自分達の想定外の事が起こったら彰に頼って、久々に活躍出来そうってなったら提案を拒否するって、メンツ保護にも程がある!」


 それはどうかな? と首を傾げながら見守ってる一行。


「それならば言うが、貴様ちとあの男に全てを委ね過ぎではないか? 貴様自分で部隊を動かし、戦わせ、そして生還させる術を放棄したのか?」


 この言い方に何かを思ったのか忠一の激昂が激しくなっていく。


「何よ! 私が彼を信頼して何が悪い! 私に足りない部分を彰は補ってくれる、新しい事を教えてくれる! 何も全部委ねている訳じゃない!!」


「ほう、ならば貴様は彰を信用していないんだな? これまでの信用は中途半端な……ただの恋愛ごっこと」


 五十六も悪い人だと四郎が呆れる。完全な忠一に対する挑発文句であった。


「……私の、私の大切な人に対する愚弄はお前だろうと許さんぞクソ野郎!! 表出ろ! その首ぁたたっ斬ってやるぁ!!」


「やれるものならやってみろ頭の悪い女め! 私の首を落としたら、貴様自分で自分の首を絞めるぞ……そうなったら彰の身分は保障出来んぞ……それでもいいなら来い馬鹿野郎!!」


 スラリと軍刀を抜いた五十六。四郎が静止に入るもかなりの興奮状態で抑えられそうにもない。

 だがこのまま斬りあいが始まってはもっと不味い。四郎は必死に軍刀を持つ五十六の腕を押さえつけていた。


「離せ四郎! あのバカ女には一度分からせた方が後の身の為だ!」


 四郎が抑えている反面、忠一も興奮状態に陥っている。


「あのメンツ保護のふんぞり野郎の首を落とすんだワシゃあ! 離さんと貴様らもたたっ斬るぞクソッタレめ!!」


 暴れる忠一を抑える小柄な軍一と力自慢の角田。原は身内の対立には滅法弱く、どうしたら良いのかわからずオロオロと泣いている。


「南雲忠一!! 上官への侮辱と抜刀、第3艦隊指揮官の任を外す!! 自分の家で頭でも冷やしていろバカ女がぁ!!」


 五十六が解雇宣言をする。忠一もその宣告はダメージが大きかったのか、一瞬動きを止めるが、やがて暴れるのをやめ軍刀を収めると敬礼して言い放った。


「南雲忠一、指揮官任務を解かれた為、これより独断での前線入りを果たさせて頂きます。身を軽くして頂いて光栄です」


 踵を返して会議室を出ようとする。その背中を見て五十六はまたもやブチ切れた。


「勝手な事は許さんぞ!! おい四郎! あいつをとっ捕まえろ、拘束しておけ!!」


 流石の四郎もどうしたもんかと、取り敢えず苦笑いして答えを有耶無耶にした。


      ――――――――――――――――      


 その頃、ガダルカナル島の上空では爆撃にやってきた米軍機と激しい空中戦が行われていた。

 爆撃機80機に戦闘機100機の大部隊に対し、こちらは戦闘機80機。


 数では劣勢だが、必ずしも劣勢に立っているわけではなかった。むしろ敵大編隊に対して優勢に制空戦闘を行っていると見える。

 それは第343戦闘航空団と第518戦闘航空団(各航空団の頭の数字をとって命名)の存在であった。


 急遽の編成であったが米軍が持ち込んでいたレーダーの活用もあり初撃は断然味方有利。

 敵の高度がわかるというのは利点で、それよりも上空で待ち伏せが出来る。第一撃も自分達がかけられるのだ。


 第一撃で8機撃墜の7機引き返しという中々良い感じの開戦である。


「先輩、私が指揮を取ってもいいんですか……? 私よりも先輩が指揮を取られた方が……」


 源田が彰に問いかける。


「俺は作戦立案が得意なだけであって、実戦での指揮はまだまだ素人。それよりも航空戦の指揮に長けていて実戦経験のある源田さんの方が指揮官には相応しいよ」


 その点については彰は実際その通りだと理解していた。


「でしたら、格好悪いところは先輩には見せられませんね! 不肖源田実、第343戦闘航空団をお預かり致します!」


 キレイな笑顔に一瞬ドキッと胸を高鳴らせたが、すぐに冷静に戻る。


「忠はどうしてるかな……」


 トラックでの出来事を知らない彰は、忠一の事を思い浮かべながら激しい空中戦の指揮補佐をとっていた。


fin

最後までありがとうございます、松ちゃんです。


身内で対立が起こってしまいましたねぇ……これが悪影響を起こさなければ良いんですけど……。


誤字脱字や質問、感想等お待ちしております。ドシドシお寄せください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ