6章84話 離脱
爆弾を抱えたソードフィッシュは赤城へと殺到している。
赤城はまだ装備が旧式で、従来の機銃は大和らと比べたら迫力は劣るが必死に弾幕を形成している。
しかし、ソードフィッシュの速度はとんでもないほど遅く、あわせようにもほとんどの弾丸が後ろへ通り過ぎるように外れるか、手前過ぎてこれも外すかどちらかが多い。
それでもアルバコア含めて6機は撃墜したがまだ突っ込んでくる。
「爆弾投下!! 距離400!」
ソードフィッシュ2機とアルバコア2機が爆弾を投下。400メートルという至近距離で投下したため、4万1200トン近い排水量を持つ赤城にとって回避は容易ではなかった。
そして案の定、3発が右舷に命中し炸裂した。
1発が後部20センチ単装砲付近で炸裂。ついでに大穴を開け、副砲塔ごと破壊したエネルギーはその場にいた副砲要員を粉々に吹き飛ばし藻屑へと変える。浸水も大量に発生し、隔壁閉鎖も間に合わず一部が完全に水没。右に1度傾いた。
2発は運の悪いことに艦の中央部にほぼ同箇所とも言える近所で炸裂。1発は水線下、1発は水線上だ。
特に水線下で炸裂した爆弾は浸水を招き、傾斜は10度となった。
10度となると航空機の発着艦が困難になってくる。空母にとっては致命傷だ。すぐに反対側に復元注水が施され、水平に戻った。
しかし、艦内はそうはいかなかった。
イギリス軍への攻撃隊として準備が行われていた艦載機は爆発の影響で1機が主脚を折り、爆弾を抱えたまま格納庫のど真ん中で横たわっている。非常に危険な状態だ。
整備員が必死に爆弾を取り外そうと作業を行っているが、運悪く信管が振動などの影響で部品が破損、取り外せない状況に陥っている。
さらに赤城には残っていたソードフィッシュが殺到し始める。右舷から3機、左舷から5機だ。
両舷から攻撃を受けると回避はまず不可能だ。
「弾幕もっとー!!」
「くそ! なんて遅さなんだ!」
兵員はなんとか撃墜しようとするが、遅すぎて射線がずれすぎて未だに撃墜出来ていない。そうしている間に、距離350メートルで爆弾が投下された。
赤城はなんとか回避しようと舵をきるがいかんせん距離が近すぎるため回避しきれず、速度だけ出せるがそれが赤城にとって不運だった。
爆弾の殆どは後部に命中。その内2発が舵とスクリューを吹き飛ばした。
かろうじて1本が使用可能で、1本が落脱しようとしていた。
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「赤城が!!」
彰ははっきりと赤城のスクリュー部分に爆弾が命中した場面を見た。ミッドウェーでは幸運に救われた赤城も、とうとう危ないかもしれない。
「戦闘が終わり次第駆逐艦に曳航させてラバウルまで退避させましょう。航空機を陸上に移して燃料を格納庫いっぱいに積み込めば本土まで1本のスクリューでも保つはずです。」
高須は冷静に判断する。彰も言い方はあれだが戦闘には慣れてきたつもりだ。しかしまだまだ未熟という事が判断や考え方に差を生んでいる。
大和はなんとか赤城を救おうと高角砲や機銃による弾幕をはる。それでも命中弾は得られない。
「赤城の傾斜がひどいな……」
彰は呆然と戦力を喪失した赤城を見つめた。
赤城では必死の修復作業が行われていた。パイプが緩んだことにより高温の蒸気が充満し、機関員は必死に食い止めようとしている。
艦内にまで及んだ浸水を外へと排出したり、時にはガスが漏れマスクをつけて作業に当たる人もいる。
「外せそうかぁ!?」
「ダメです! これ以上下手に動かすと信管が作動します!」
格納庫では爆弾を抱えたまま倒れている彗星からなんとか爆弾を外そうと整備員が奮闘している。
「仕方ねぇからそのまま固定しよう! 固定具持ってこい!! 信管部分は布で固定だ!」
分隊長らしき人物が指示を出し、整備員が固定具を取りに行く。
「艦長に報告行ってくる! お前らは固定具きたら作業しとけ!」
「はっ!」
隊長は艦橋へと走って向かった。
「固定具持って来たぞ!」
「よし、作業始め!」
その時だった。
艦尾に巨大な振動。同時に襲ってくる浮遊感のような感覚。丁度赤城の艦尾に魚雷が命中した瞬間だった。
片足で姿勢を保っていた彗星艦爆は姿勢を崩し、爆弾の信管を甲板に叩きつける。同時に彗星は鉄屑へと変貌し、整備員達の意識も奪った。
格納庫内には整備中の航空機があり、爆弾はなくとも燃料を満載した航空機がずらりと並んでいる。誘爆は簡単に起こった。
爆発のエネルギーはエレベーターを空高く舞い上がらせるように吹き飛ばし、その穴からは黒煙が噴火のごとく吹き上がった。
さらに運の悪いことに、高角砲弾薬庫が直ぐ側にあり、何故か格納庫につながる通路が開け放しになっていた。
それが影響して弾薬が爆発。隔壁をまるまる吹き飛ばし赤城の船体に大穴を開けたのだった。
「なんてこった……」
彰はありえない事態に混乱している。たかがスキップボミングなら元巡洋戦艦の船体なら十分に耐えられるはずだ。
それが今や、何が起こったのかわからないが格納庫や片舷から真っ黒な煙を立ち上らせている。
「翔鶴より打診。赤城をラバウルまで退避させる。なお、5航戦には反撃の用意があるとのことです。」
電信員の報告に高須は黙ってしまった。スキップボミングを知らない高須にとってこれはあまりにも大きな痛手だった。
「反撃は無しです。赤城には駆逐艦4隻と重巡2隻をつけてすぐに退避させてください。」
赤城は舵を失い、スクリューも1本しか残ってないため駆逐艦が曲がる方向に船体を押し付けて曲げるという強引な方法が取られた。いまここで主力を失うには後が思いやられるのだ。
すくなくとも敵の空母は2隻はいるだろうと彰は考えていた。日本軍とアメリカ軍の艦艇の知識しかない彰にとってイギリス軍は全くの目の上のたんこぶ的存在であったのだ。
「こんな事ならイギリス軍も勉強しておけばよかったな……」
この事態になるとは予想しておらず、悔いの残る海戦であった。
Fin
明けましておめでとうございます。松ちゃんです。
年末はコミケ、年始は体調を崩すなどあまり執筆に専念出来ませんでした。今回はまだ体調悪い中で書いたので短めです。
皆さんは年始はどうお過ごしでしょうか?自分は赤点をとってしまったので課題に追われています(汗)
皆さんにとって良い年になる事をお祈りします。




