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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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6章83話 珊瑚海の激突

長らくお待たせしました。

 イギリス海軍東インド艦隊。


 空母イラストリアスとフォーミダブルの甲板上にはソードフィッシュ10機とマートレット10機がエンジンを暖めながら並んでいる。

 インドミダブルはシーハリケーン12機、アルバコア12機が出撃はまだかといった風貌で命令を待ち構えている。ヴィクトリアスは第2次攻撃の準備をする。


 これらは第一次攻撃隊として、エスピリットサントに向かっている連合艦隊を奇襲攻撃するのだ。


 イギリス軍の主力となるソードフィッシュの様な複葉機は主翼面積が多く取れるため風を受けやすく、その分早く上がれるので滑走距離が少なくてすむのだ。

 日本で言う鳳翔であれば楽々と運用が可能である。


 ソードフィッシュの航続距離は880kmと極端に短い為、珊瑚海に入り次第発艦を始める。その準備をしているのだ。

 敵艦隊とは十分に距離の取れる日本軍とは違い、基本的な運用面では大西洋と地中海を主目的としているイギリス軍は長距離運用には不慣れである。


 だがレンドリース法の恩があると感じているイギリスは、アメリカの稼働空母1隻という厳しい現状を見て要請に答えたのだ。

 イギリスもまたバトルオブブリテン……ドイツ軍によるイギリス本土空爆によって祖国が大変な目にあっているのにも関わらずその恩を返そうとする判断は、後にイギリスを苦しめる事となる。




 一方の連合艦隊は上空護衛を行っていた航空隊が燃料切れのため基地に戻っており、代わりの部隊は2時間後に合流予定だ。

 その間、翔鶴と瑞鶴の制空隊が護衛を行う。機数はそれぞれ10機だ。


「もうすぐでソロモン海の開けた部分に差し掛かるな……」


 もしイギリス軍の攻撃を受けたとしてもソロモン海域なら大きく艦隊が乱れても回避行動はやりやすくなる。もし先ほどのダンピール海峡で攻撃を受けたら危ないところだった。

 ダンピール海峡は史実ではダンピール海峡の悲劇と呼ばれる戦いがあった。

 これは、日本軍の第八十一号作戦という輸送作戦で、ケ号(ガダルカナル島撤退)作戦のあとの連合軍の次の侵攻目標がラエと判断され、第51師団を輸送する作戦だ。


 参加兵力は輸送船8隻に対空兵装が乏しい駆逐艦8隻。一行はラバウルを出発する。

 アメリカ軍はこれを阻止しようと新戦術である反跳爆撃スキップボミングで阻止しようと考えた。


 スキップボミングは高度60mを460km/hで水平飛行し、尾翼を取り外した500lb(227kg)通常爆弾4発に5秒の遅延信管を取り付け投下。爆弾は水切りと同じ要領で海面を反跳、目標の水線下もしくは艦上構造物に命中して損害を与える。

 爆撃機や雷撃機の命中率が平均20%以下なのに対し、このスキップボミングは65%という驚異的な数値を叩きだした。


 結果、ビスマルク海戦と呼ばれたこの爆撃は輸送船全滅、駆逐艦4隻が撃沈という大損害を日本軍は被ったのだ。

 

「スキップボミングでやられたという報告はないな……あんなの食らったら戦艦でも大破しそうだな……」


 戦艦は魚雷に対する防御も施しているが基本は対艦砲を想定した装甲を装備しているため、水線下は弱いのだ。

 そんな所に魚雷よりも威力は劣るが、起動の安定しない爆弾数発が命中すれば、魚雷よりも甚大な被害が出ることは目に見える。


 彰は内心不安を抱きつつ潮風に当たり続けた。


    ――――――――――――――――


 連合艦隊の航海は順調に続き、いよいよ珊瑚海へと入った。


 珊瑚海はオーストラリアの縁海で、北をソロモン諸島、西をグレート・バリア・リーフ、東にニューカレドニアやバヌアツ、南にタスマン海に囲まれていて、海温が調度いいため豊かなサンゴが多い。

 5800万年から4800万年にかけてクイーンズランドの大陸棚が上昇、グレートディヴィディング山脈を形成しながら珊瑚海流域が作られた。

 現代の珊瑚海は生態学的に、グレート・バリア・リーフの形成期や海面の下降期を調べる資源の重要な供給源なのだ。


 1942年5月8日、この珊瑚海で史上初となる空母同士の戦い、珊瑚海海戦があった。日本軍のポートモレスビー攻略を支援する本隊第5航空戦隊の翔鶴、瑞鶴と軽空母の祥鳳、それを阻止しようとフレッチャー指揮下の第17任務部隊の空母レキシントンとヨークタウンがぶつかった。

 祥鳳は5月7日に発見され、度重なる攻撃で爆弾13発、魚雷7本を被弾してこの海域にその身を収めている。


 彰は艦橋からその珊瑚海に向けて黙祷を捧げた。もしこの場に原がいたらきっと悲しむだろう。


 どうやらこの世界でも珊瑚海海戦が行われ、史実と同じように原が指揮をとった。しかし祥鳳が失われた時、彼女は何がなんでも仇をうつんだと叫んだらしい。

 結果、米軍はレキシントンを失い、ヨークタウンは大破で撤退。しかし日本軍は翔鶴、瑞鶴共に無傷である。どうやらここから史実が違うらしい。


 先程のイギリス軍がここで攻撃を仕掛けてきたら、間違いなく第2次珊瑚海海戦となるだろう。史実と同じように日本軍はレキシントンを撃沈したが、今回はどうなるかわからない。


 彰は司令室に入ろうとした直後だった。


「電探に反応あり!! 機数60! 距離200キロ!」


 電探員の報告が叫ばれた。


「きたか!!」


 彰は自分の考えが当たってしまったことにビビりながらも叫ぶ。


 ……だって当たるなんて思わなかったんだもん!


「彰、敵は相当遅いスピードで接近してます。零戦を向かわせて迎撃しましょう。」


「同意見です。すぐにむかわせてください。」


 すぐに5航戦から零戦20機が上空へと飛び立つ。偵察機を出していなかったのが失態だった。

 本来なら偵察を出すべきだったが、もうすぐ夕方になるだろうから攻撃の心配はないだろうと油断していた。


「高須さんすぐに遊撃部隊を編成しましょう。ソードフィッシュの航続距離は880キロ、戦闘を考えるならば敵は400キロ圏内に必ずいるはずです。」


「カイリだと……約215カイリですか。十分に行けるでしょう。第3戦隊と2水戦の中で練度の高い駆逐艦、それと重巡部隊を向かわせましょう。」


 高須の指令で金剛と榛名、重巡鈴谷、熊野、2水戦から駆逐艦8隻の夜襲部隊が編成された。


(あのゲームなら夜戦出してよってうるさいだろうなぁ……)


 2水戦の旗艦が神通であることから彰は心の中で笑う。


「それと反撃部隊も編成。攻撃は1航戦にやらせましょう。」


「もう夕方に近いですが、なんとか間に合いそうですね。一に連絡しましょう。」


 高須はそう言って受話器をとる。

 彰は海図を睨みながら思案に更けた。


    ――――――――――――――――


「敵機視認!! 距離90!!」


 対空戦闘指揮所の見張り員が叫ぶ。どうやら敵は64機出してきたようだ。

 すると、黒煙を引いて墜落する機体が出始める。直掩機と戦闘が始まったのだろう。しかし、その黒煙は数少ない。


「主砲射撃に備えよう。もうすぐ射程距離に入るはずだ。」


 彰が声をかけると同時に、戦艦の主砲がゆっくりと旋回する。砲弾はもちろん三式対空焼霰弾だ。

 やがて砲撃のブザーが鳴り始める。彰も備えて耳をふさぎ足に力を入れる。


「てぇーーー!!」


 金剛ら戦艦の主砲が火を吹いた。大和の試験砲撃程では無いが、やはり戦艦の主砲が火を吹いた瞬間は心から体を震え上がらせる。

 三式弾は上空へと飛散、やがて上空に巨大な火の傘を形成する。

 三式弾はどちらかと言うと向かってきている敵機に対して包み込むように焼霰をばら撒く。その為、初弾では有効的だが編隊を解かれるとたちまち使い物にならない。


 こういう時は史実でも有効的と判断された零式弾の出番だ。零式弾は榴弾種で、こちらは球体に爆散するので編隊を解かれても効果がある。

 金剛らは三式弾3発を発射すると続けて零式弾を発砲。彰は耳を塞ぎながらに耐えながらその砲火を見つめた。


 零式弾は上空に火の球体を作り上げるといくつかの機体をぱらぱらと落とす。それでもまだ残存機は果敢に突撃を始めた。

 同時に対空砲火が上空を覆い尽くす。高角砲の爆煙が上空にいくつも出来上がり、曳光弾がミシンのように上空を縫う。

 やがてソードフィッシュとアルバコアは高度を下げ始めた。相変わらず速度が遅いので早い米軍機に慣れた乗員は撃墜に手間取る。


「もっと奥を狙え! 手前過ぎて当たってないぞ!」

「くっそ! なんだってあんなに遅いんだちくしょう!」


 機銃員は悪態をつきながらも必死に弾幕を作るが、それでも撃墜できたのは3機だ。

 やがてソードフィッシュから物体が投下された。第2艦隊を狙ったのはアルバコア2機とソードフィッシュ6機。その内アルバコア全滅とソードフィッシュ1機を失っているので攻撃に移ったのはソードフィッシュ5機だ。

 ソードフィッシュが本来の役目通りに魚雷を搭載しているなら、その物体は水中に潜るはず……だった。

 物体は水中に潜らずに水中をスキップし始めた。バシャンバシャンと、機銃の射撃音に混じって不快な音をたてて接近してくる。


「スキップボミングだ!!」


 彰が叫ぶと同時に、爆弾は水面下で爆発した。

 魚雷よりも破壊力があるスキップボミングは水面下の装甲に大穴を穿ち、大量の浸水を招いた。さらに艦首に1発が命中。こちらも水面下の爆発で、更に浸水が発生した。


「右舷に注水! 艦の水平を保ちなさい!」


 高須の的確な指示で扶桑は水平を取り戻す。どうやら高雄も被弾したらしく、水柱が大きく立ち上がった。


「くそ、やはり吸収しきれないか……」


 彰は第2艦隊よりも第3艦隊に敵攻撃部隊が集中している事に苛立ちを覚えた。大抵ならば空母よりも大型の戦艦の方が戦果としては大きいが、現代は航空戦。戦艦よりも空母を狙うのは当然だ。

 米軍は戦艦を盾とする事で有効的な迎撃が出来たが、日本軍の目論見は外れたと言っていい。


 そして今、30近い攻撃機がある空母へと殺到していた。


「くそ!!」


 爆弾を抱えたソードフィッシュが、歴戦の空母赤城へと攻撃を開始しようとしていたのだ。


Fin

お久しぶりです、松ちゃんです。


約1ヶ月ぶりに投稿出来ました。携帯の不具合と学校での進路関係により投稿が遅くなった事をお詫びします。


さて、いよいよ珊瑚海で2回目の航空戦が始まりました。史実ではイギリス軍が最初に行ったスキップボミングですが、ここでもイギリス軍でやらせています。

米軍はオーストラリアまでの航路を遮断されており、手が出せませんが日本軍とクーデター軍が撤退するとはつゆ知らずイギリス軍に手を借りました。これはキングの思惑ですね、なんと恐ろしい……。


まだまだ駄作感がありますが、最後までお付き合いください!

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