6章82話 正体
エスピリットサントを目指す連合艦隊はダンピール海峡へと差し掛かった。
近くにはラバウルやラエ、少し離れてブインなど主要な陸上航空基地が多数あり、航空機による傘が形成されている。
ラバウルから桜井機も駆けつけており、坂井機、岩本機と編隊を組み先頭を飛行している。こちらが手を振るとバンクで答え、時には宙返りを披露して艦上の兵士から拍手喝采をもらっている。
「確かにこの時期の零戦隊は長期に続く戦闘で消耗が激しかったが、俺の知っている世界とは段違いに変わっているなぁ……」
彰が扶桑の第2主砲塔上で寝転がりながら呟いていた。主砲塔上には新しく製造された93式25ミリ連装機銃が2基設置されている。
そこには対空戦闘員が整備を行っており、彰も時々それにまざっている。
「この部品はここでいいんでしたっけ?」
「はっ、そこであります。」
「どっちが歳上かわからないね。」
「そうですな。」
等と雑談を交わし、笑いながら整備を進める。
整備が終わると乗員は主砲塔から降り、彰1人になった。
彰は懐から携帯を取り出すとカメラモードに切り替え、海の景色や扶桑を撮る。こんな機会は滅多に無いだろうから、今のうちに撮っておきたいのが心情だ。
「これからどうなるのかなぁ……」
思えば不思議な事が多すぎる。
イギリス軍は大人しいし、陸軍のクーデターは起こるし、……友梨佳が敵となっているし。
「アメリカに上陸すると言っても、真正面からぶつかるのは愚策だよな。」
アメリカ軍はこの時少なくとも60個師団以上もの戦力を国内に蓄えているはずだ。規模も日本軍とは比べ物にならず、戦車だけで数えるなら間違いなく日本軍は全滅するだろう。
そんな相手にどうやって互角の戦いをするか。一番の悩みどころだ。
「うーん、どうし……」
そんな時だった。
上空の雲の切れ間から零戦2機、その先を逃げるように複葉機が飛行している。
やがて零戦が機銃を撃つと簡単に火を吹き始め、黒煙を吹きながら海へと落下していく。
「今のは……!」
彰は急いで艦橋へと戻った。
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「高須さん、今のは!?」
彰が艦橋に戻ると真っ先に高須に現状を聞いた。
「偵察機と思われる複葉機を桜井機が発見、撃墜したとの報告を今受け取ったところです。機種はまだわかりませんが、英軍のマークが確認されました。」
「イギリス軍が!?」
もし本当にイギリス軍の複葉機なら思い当たるのはソードフィッシュかアルバコアだ。
ソードフィッシュはイギリスのフェアリー社が開発した三座複葉雷撃機で、基本性能は格段に劣るものの、頑丈さや操作性に非常に優れており、終戦まで活躍し続けた機体だ。
非全金属軍用機であるため、銅管に布を張った仕様で機体構造でたとえ多数の被弾を受けても機体の強度低下を招かず、ビスマルクとの戦闘ではスォントン中尉機が175ヶ所に被弾しながらも無事に帰還するなど非常に頑丈である。
しかもあまりにも低速なため、対空砲火に捉えられにくい。ビスマルクの対空砲弾は敵機の速度に合わせて爆発する最新の信管を使用しており、それの最低速度設定よりも更に遅いためソードフィッシュのかなり手前で爆破するなどしている。
非常に低速で基本性能は低いが極めて頑丈な点、操作性などが高評価を得て終戦まで前線で戦い続けた傑作機だ。
アルバコアはソードフィッシュの後継機として開発がされたが、ソードフィッシュよりも低評価のためソードフィッシュより先に退役している。
近代的な複葉機ということでソードフィッシュと性能は大差なく、それよりか運動性能や操作性はソードフィッシュよりも劣っている。
「もしイギリス軍機がいるなら空母がいる。」
「空母ですか……数が分からない以上上に先に発見されてしまった以上、こちらが不利ですね。」
「すぐに偵察機を出しましょう。赤城から何機か。」
彰の指名の入った赤城甲板上では急ぎ97艦攻が発艦の準備を整えている。他にも、大鳳から天山8機が偵察として出される。
「ここでイギリス軍が来るのか……」
さすがの彰も予想外だ。今まで攻勢をしかけてこなかったのが今回のためなら納得がいく。イギリス本土からオーストラリアまで来るのに相当な時間がかかる。
それに加え合同作戦のための訓練と補給などを考えれば時間とタイミングは合致する。
「彰。」
思案に老けていると、後ろから高須に声をかけられた。
「そういえば、どうして一のところに行かなかったのですか?」
高須からしたら素朴な疑問だった。
「出発前に2人で話しあったんだ。今回はお互いの仕事をこなすために離れた場所で仕事をしようって。」
「それは何故?」
高須が首を傾げる。むしろ2人は一緒にいるもんだと思っていたからだ。
「話を持ちかけたのは忠なんだけど、自分の任務に集中したいってさ。」
「なるほど。」
単純な理由だが、一般人の仕事と忠一らの仕事は格段に内容が違う。戦場に出たら命のやりとりが行われるのだ。指揮官は部下の命を守りながら任務をこなす重大なプレッシャーがかかる。
彰はそれを理解して第2艦隊に来たそうだ。
「これから何が起こるかわからないからね。イギリス軍がいるとわかった今、油断は出来ない。」
彰は上空を睨みつけながら言う。
数時間後、最悪な事が起こるとも知らずに。
Fin
こんにちは、松ちゃんです!
久し振りのように感じる投稿です。実を言うと今少し書き悩んでいまして、少々投稿が遅くなりがちになってしまいます。
内容をおかしくさせないように試行錯誤を繰り返しながらの執筆です。何せここまでの長編は書いても長続きしなかったので、この作品はなんとしても完成させたいという思いが強く、変な内容になってないか? などと悩みながら書いてます。
ペースは遅れ気味ですが、お付き合いくださいますと嬉しく思います!
次話をお楽しみに!




