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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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5章74話 裏事情

 キンケードは次のように説明した。


 アメリカでは太平洋戦争が始まる前、キングを中心とする開戦派とマッカーサーを中心とする講話派にわかれていた。

 マッカーサー側にはニミッツ当時ニミッツしかおらず、ニミッツの信頼出来る将兵にはまだ話をしていない時だった。

 キングは大統領含む国の中心人物を味方に付けたため、アメリカ世論は開戦に持ってかれようとしていた。そんな時に起こったのが真珠湾攻撃だった。


 チャンスと考えたキングは大統領を説得し日本に対して宣戦布告。

 翌年1月にはアインシュタイン等の科学者が亡命してきて、その中にドイツが原子爆弾を開発しようとしていると教えてくれた科学者がいた。

 キングは日本を早期に戦争を終わらせる為に同じように原子爆弾の製造を計画し始めた。それがマンハッタン計画だ。


 キングはそれ以来原爆製造を強く推し進め、反対派を黙らせてきた。マッカーサーやニミッツはそのやり方に異を唱え、キングとは対立関係にある。


 そして、とうとう我慢ができなくなったマッカーサーはクーデターを計画する。このクーデターの参加者の多くはニミッツと親しい人物で、主な人物にウィリアム・ハルゼー、ウィリス・リー、ドナルド・ダンカン等で、レイモンド・スプルーアンスやフランク・フレッチャー等は今は中立を保っている。

 ガダルカナル島で奮戦したアレキサンダー・ヴァンデクリフトは中立だが、ニミッツよりになってきている。やはり大量破壊兵器を許せないようだ。


 そして今回の件は、キングはキスカ島に来るであろう救助艦隊を撃滅し、キスカ島救助を阻止せよと命令されていたがそれを実行せず、4隻が代わりに実行したのを阻止したとの事だ。


 彰は一連の説明を受けると、キンケードの行動に感謝した。


(米軍内部でも原子爆弾に反対する人物がいたことは事実であり、非常に嬉しい事だ。彼女らと協力体制がとれたらどれだけ頼もしいか……。)


 彰はこの時、そのクーデター軍団との共同戦線を組めるのではないかと考えていた。

 そうなればエスピリットサント島等米軍施設が利用できるかもしれないし、何より本土に近づくためのルートが南に作れる。そこはハルゼーが担当している場所だとキンケードは教えてくれた。


「ご説明に感謝いたします。もし必要があれば、身柄を確保することもできますがどうなされますか?」

「ご厚意に感謝しますが、ニミッツ提督にご報告申し上げたいので一刻も早くエスピリットサントに向かいたいと考えております。その時はダンカンも一緒に。」

「では、我々のことも話しておく必要がありますね。」


 キンケードは首を傾げた。


「我々日本でも、陸軍のクーデターがありましたが、私が中心となって鎮圧し、米内政権に変わりました。我々日本軍は、裏でアメリカのマンハッタン計画阻止を目標として現在装備拡張を行っております。」

「なっ……!?」


 さすかキンケードも驚いた。日本軍はクーデターを乗り越え新体制となり、しかもマンハッタン計画を阻止しようと動いている。アメリカのクーデターと同じように動いているのだ。


「主力となりうる空母は現在9隻、準主力として軽空母5隻、そして今年新型空母1隻、来年4月までに更に3隻の主力空母が就役します。」


 彰はぺらぺらと自分の手のうちを話す。敵軍に戦力の開示をするのは自殺行為に当たる。それを対策に作戦を練られたら負けるのは必須だ。

 しかし、彰にはちゃんと考えがあった。


「ここだけの話にして欲しいのですが、私が貴女に戦力開示を行うのは貴女方の戦力が増えると思っているからです。つまり、私個人の感情としてはアメリカクーデター軍と共同戦線を敷きたいと考えております。」

「共同戦線……」

「大変失礼な事を申し上げますが、我々海軍はパナマ運河を破壊する事に成功しました。エセックス級の大半は東海岸のニューポート・ニューズかクインシーかブルックリン。いずれかの造船所で14番艦のボノム・リシャールまでが建造途中。しかし、我々海軍がパナマ運河を破壊したことにより15番艦以降のレイテからはサンフランシスコ造船所で建造する可能性があります。」


 さすが未来から来たとと言うだけあって、すべての情報に間違いは無かった。こちらが危惧していたように、日本軍はアメリカの戦力状況を把握している。

 史実では確かに1943年2月時点でボノム・リシャールまで東海岸で起工している。15番艦のレイテは1944年からで、サンフランシスコで起工される可能性は十分あった。


「もし共同戦線を結成しなかったとしても、個人的な観点からしてそちらの戦力はあの戦艦4隻。駆逐艦や軽巡、重巡に陸上兵力に余裕があっても空母が無い。陸上基地の航空機があったとしても自国の空母戦力が如何程のものかはご自分でも理解しているはずです。」


 キンケードは頷く。


 エセックス級は航続距離8337キロを誇る。しかも搭載航空機の4分の1を完全に修理できる部品を搭載し、対空火器も12.7センチ両用砲4基に40ミリ4連装、20ミリ連装機銃など、分厚い弾幕を形成する事など難なくこなす。

 装甲も厚く、軽巡程度の砲撃なら余裕で耐えられ、ダメコンも強化されている。


 日本の空母とアメリカの空母の決定的な違いはこのダメコン(ダメージコントロール)にある。これは爆撃などで損傷した際の言わば消火隊みたいなもので、爆撃による火災の鎮火はもちろん損傷した飛行甲板の修理などを行う。

 日本軍はこのダメコンを非常に軽視しており、被弾したら間違いなく戦力喪失につながる。その点アメリカは力を入れている為穴が開こうとさっさと鉄板で埋めて使えるようにしてしまうのだ。


 日本軍は共同戦線を組む場合主要作戦のほとんどは日本軍が動くことになるだろう。


「我々日本海軍としてはギルバート、アリューシャン、エスピリットサントと太平洋の3ヶ所に拠点を作られてしまい、迂闊に動くことができません。エスピリットサントさえ開放してもらえれば、我々はマンハッタン計画阻止をやりやすくなるでしょう。」

「共同戦線を組む為にはエスピリットサントを使用させろと?」

「単刀直入に申し上げればそう言うことです。」


 キンケードはやはりニミッツと話し合う必要があると感じた。こんな大きな問題は個人ではどうにも出来ない。


「答えはすぐには出せません。ニミッツ提督と話しあわなければ。」

「良い返事をお待ちしています。」


 こうして、彰の考えを初めてアメリカに伝えることが出来た。


    ――――――――――――――――


 彰は料亭を出て迎えの車に乗り込んだ。

 もし共同戦線を成立できた場合。見返りとして何かを用意する必要性がある。そんな時こそ、特殊師団の出番であろう。

 彰は胸を高らかに鳴らすのだった。


 大本営では五十六が忠一、近藤、高須、木村を招いて会議をしていた。


「彰がもうすぐ帰ってくるけど、木村君からも話が聞きたいと思ってね。詳しく説明してくれるかい?」


 木村は立ち上がり細かく説明をする。


「味方同士で撃ち合うか……彰が帰ってくれば全てはっきりわかるけど、今のところはなんとも言えないな。」

「内部で何かが起こったというのは確定事項ですね。」


 高須が口を開いた。


「まぁそれで良いだろうな。問題はそれが日本にとってどういう影響をもたらすかだよな。」


 近藤が困ったようにため息をつく。


「彰にはまだ伝えてないけど、陸軍は一昨日全ての作戦を中国方面に切り替えたよ。関東軍は相当大変みたい。」

「関東軍が!?」


 関東軍は日本陸軍の中で一番大きな組織で、7個軍を3個方面軍にわけて運用。単純計算でも31個師団、他に補助部隊などもいるため人員数は軽く70万は超えている大組織だ。

 担当地域は勿論満州含む中国方面で、総司令部は旅順にある。

 旅順は軍港都市で、現在は真珠養殖などで賑わっている。

 日露戦争では203高地の戦いなどで多大な犠牲を出した激戦区でもある。


「うん。関東軍は善戦しているけど、やはり相手は連合軍の物量ですら退けた智将。徐々に押されつつあるよ。」

「どのくらい保ちそうなんですか?」


 高須が不安げに聞く。


「もし今のペースで押されたら3年で関東軍は満州だけを維持するのに手一杯になる。事実上2年半だ。」

「石油が出る場所もありますから、相当危険な状態であると考えられます。」


 近藤は腕を組む。海軍はまぁまぁ充実しているが、陸軍の事はどうしようも出来ない。


「そこで私からの提案なんだけど……」


 五十六が手を上げる。


「彰を海軍側の戦いが終わったら関東軍のもとに派遣しようと思う。」


 その場がざわついた。


「長官、それは本気か?」

「こんなことを言ってはあれだが、今の日本に奴らに勝てるほどの技術も戦術も、物資さえない。彰なら、きっと何かが出来るかもしれないと思ったんだ。」

「そんなの、私達の都合に巻き込んでるだけだよ!!」


 突然として、忠一が声を荒げる。


「南雲中将、落ち着いてください……」


 木村がなだめるが、それでも忠一は叫んだ。


「彰は元の世界に帰りたい思いを我慢しながら戦ってくれている! 私は彰を元の世界に帰してあげたい! 方法はないし、どうすればいいかわからないけど、どうして帰してあげようって思わないの!?」

「それは……」


 皆黙ってしまった。確かに、彰にはプレッシャーをかけ過ぎたかもしれない。


「しかし、今の日本が奴らに飲み込まれたら彰のいた世界は無くなってしまうんだよ?」

「そうだけど、彰のいた未来を守るのはそれよりも前に生きている私達の役目じゃないの!?」


 忠一はひと通り話し終えると、静かに会議室を出て行く。近藤はその後を追って行った。


「どうしますか? 彰には話しますか?」


 高須が五十六に問いかける。


「いや、一の言うとおりだ。関東軍の事はこっちで何とかするしかない。」


 五十六はなんとしても彼らの暴走を止めないといけないと感じている。もしこのまま進軍を許せば、アメリカも手に負えなくなってしまう。


 戦車大国の脅威は間違い無く近付いて来ているのだ。


Fin

こんにちは、松ちゃんです。


更新が遅くなってしまい申し訳ないです。同時進行している作品が思った以上に難しく、最悪削除してしまおうかと思ってしまう程試行錯誤していますが、何とか頑張ります。


それにしても皆さん凄いですよね。特に会議の様子なんて、真似したいくらい参考になります


まだ勉強が必要か……。

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