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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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5章73話 歓迎

 日本では一連の報告を受けた彰と五十六が2人で緊急会議を行っていた。


「まさか米軍がそんな事するとは……」


 さすがの彰も予想外の出来事だ。素通りさせた事まではただの警戒の怠り等説明はすぐにつく。しかし、救助艦隊を守るように味方と砲撃戦を繰り広げ、更には日本まで護衛としてついてきている。それはどう対処すればいいのかわからなかった。


「彰のいた世界でもこんな事が?」

「無い。むしろ米軍はガダルカナルのように皆殺しにしろと言われているほどだ。そんな彼らがこんな事するわけがない。間違いなく内部で何かがある。」


 彰はクーデターの事を知らないが、内部で何かが起こっている事は確実であろうと踏んでいる。だが、それが何なのかわからない限りは下手に動けない。

 情報が必要だ。


「彼らを受け入れよう。確か函館に明石がいたよね?」

「うん。資材運搬の為に函館にいるよ。」

「明石を向かわせよう。損傷はしているはずだから簡単な修理を行わせる。英語ができる人を1人必ず乗せるように伝えて。」

「わかった。それと彰。」


 席を立とうとした彰を五十六が呼び止めた。


「どうした?」

「私は……正直怖いんだ。この戦争が長く終わらない気がする……」


 普段温厚な五十六が珍しい事を言ってきた。確かに、自分の知っている太平洋戦争とは明らかに違う歴史をたどり始めている。このキスカ島撤退作戦も、本来なら2、3週間ほど早いのだ。


「彰が考えている事はもちろん理解出来る。原子爆弾を日本に投下されればどれほどの被害が出るかも君の道具で見た。それでも、この戦いがなんだか君の戦いになっている気がするんだ。」


 つまり、五十六は彰自身の戦いになりつつあると言っている。個人の感情だけで軍を動かすのはあってはならない事だ。


「そんなことは無い。確かにマンハッタン計画を阻止して、友梨佳を止める事が今の自分の中にはあるけれど、日本をめちゃくちゃにするようなことはしないよ。」


 彰はそう答えた。


「そっか。ごめんね、変な事聞いちゃって。」


 彰は微笑むと会議室から出た。


    ――――――――――――――――


 工作艦明石は排水量1万トン前後と小型で、全長は158メートル。乗員およそ300名に加え工作員400名が搭乗。史実では南方を駆けまわり様々な泊地で多くの艦艇を修理していった。

 その修復能力は当時のアメリカの工作艦メデューサ並の能力で、中破程度なら簡単に修復出来た。南方で完全な設備を持っていなかった日本軍は明石の存在が大きなものとなり、更に浮ドックも装備していたため消費の激しい駆逐艦が大破しても完全に修復出来る。


 この世界では南方の制海権の確保から一定の余裕が得られ、本土での修理が必要となった扶桑型や伊勢型と共に本土に帰還し、不足した資材などを補給していた。

 その際物資の輸送を頼まれ、函館にいるのだ。

 明石は五十六直々の命令を受け出港、キンケードと共に退避中の救助艦隊に向けて16ノットで向かった。



 キンケードはのろのろと動くアイダホを甲板上から眺めていた。

 自分はニミッツの指示なしに先に動いてしまった。ニミッツの計画に支障をきたしてしまうが、無用な殺生を行わずにすんだと自分では言い訳ができた。日本の駆逐艦の艦上では多くに兵士がこちらを見ている。


「彼らは何を思ってこの戦艦を見ているだろうか……」


 かつて敵だった戦艦に命を助けられ、今こうして隣に並んで日本に向かっている。そんな相手をどんな目で見れば良いのか困惑するだろう。

 敵視する者や、中には感謝する者もいるかもしれない。それでもキンケードはいかなる感情を受け入れようとしている。

 キンケードは軽く敬礼をすると艦橋へと戻って行った。



 木村は敬礼をしたキンケードを見て、今の彼女らには敵意がないと確信した。もし敵意があるならば敬礼どころか自分たちの命も無かっただろう。隣を並んでいる時点で敵ではない。

 

「長官は彼女らをどうするのだろうか……」


 今の木村は、それだけが気がかりだった。



 択捉島を右にして北海道に近づきつつある時、前方から接近する艦艇があった。明石である。


「なんだあれは?」


 その船を知らないキンケードは不安になったが、装備は貧弱な代わりに甲板上にびっしりと並んだ資材に工作道具、特徴的なクレーンからメデューサのような工作艦かと察した。

 明石から英語の発光信号が送られる。どうやらアイダホの修理を行ってくれるようだ。


「14ノットに減速! 日本の工作艦が接舷するぞ!」


 速度を落としたアイダホの左舷に接舷した明石から縄梯子がかけられ、明石から工作員が乗り込んできた。

 アイダホ搭乗員も修理は行っているが、正式な工作員ではないのでどうしても応急修理程度で、作業も雑になってしまう。

 

 明石のクレーンが資材や大きな道具をアイダホに移し、現場指揮官が的確に指示を出す。いくら修復するとはいえ艦内にはずかずか入らず、外のひどい箇所の応急修理を行っている。

 機銃座や艦橋からはたくさんの米兵が様子を見ており、中には手伝いを申し込む兵まで現れた。


「明石工作部長です。今回貴官の戦艦の修理を承諾していただき、感謝いたします。」


 挨拶に来た工作部長はアメリカへの留学経験があり、御年37になる。


「元第7艦隊司令官のトーマス・キンケードです。修理を行っていただき、感謝します。」

「山本長官のご命令ですので。それと、長官から伝言があります。今回の救助活動の援護行為に深く感謝し、貴官等を歓迎すると。」


 キンケードは日本人の寛大さに深く関心を示した。人間を虐殺するのが大好きなゲリラとよくと言われていたが、そんなもの欠片も無く、元々敵だった相手を受け入れ修理まで行ってくれる。ここまで素晴らしい民族が他にいるだろうか?


「有り難うございます。修理をよろしくお願いします。」


 キンケードは感謝の意を込めて彼に敬礼をした。

 明石の工作員は甲板を走り回りながらあちこちにある損傷箇所を修復していき、外観はどんどんマシになっていった。とんでもない修復力だ。

 史実でもその修復力は高く、多くの主力艦を戦場へと送り出している。その為、アメリカ軍は明石を最重要攻撃目標として定めたほどだ。

 キンケードから見た明石は、メデューサよりも高い修復力を持ってるかもしれない。そんな気がした。


    ――――――――――――――――


 横須賀に到着したアイダホ以下3隻は横須賀湾に投錨、キンケードは初めて日本の土を踏んだ。


「日本へようこそ。今回の貴官の勇気ある行動に深く感謝します。」


 キンケードを出迎えたのは彰だった。


「お出迎えに感謝します。元第7艦隊司令官のトーマス……」


 キンケードが名乗ろうとした瞬間、


「キンケード少将ですね?」


 と、言われた。

 何故この将官は私の名前を……?


「自分はハルゼー大将に会った事があります。ムンダのパイロットをエスピリットサントに送り届けた時の。」

「あ……」


 キンケードは思い出した。

 日本の将兵に、未来から来た、マンハッタン計画も何もかも知っている。と言った奴がいるとハルゼーが話していた。

 この少年がそうか……。


「細かいお話は車内でします。どうぞお乗りください。」


 彰に進められ、キンケードは車に乗り込んだ。アイダホや他の戦艦の乗員は唯一洋風の食事を振る舞える帝国ホテルへと案内され、休息を取らせているそうだ。


「それでは改めて。自分は南方作戦指揮官の大山彰です。階級は少将です。」

「元第7艦隊司令官のトーマス・キンケードです。まぁ、私の事を知っているようですが……」

「勿論です。未来から来ましたからね。」


 アキラは平然と笑っている。

 未来から来たと言っているが、信じるにも信じられないし、名前を知っているのも単なる情報からじゃないのかと疑っている。


「それでは、これをお見せしましょう。」


 そう言って彰はスマホを取り出した。

 細かくキンケードに説明した後、実際に操作する。キンケードは使い慣れた操作に驚き、同時に本当に未来から来たんだと思えた。

 そして、彰は本題に移った。


「今回救助艦隊の指揮をとった木村少将によれば、アメリカ軍の内部で何かが起こっているのではないかと推測しています。それは事実ですか?」


 この質問には、流石のキンケードはすぐには答えられなかった。


「答えられないようでしたら構いません。お礼として行っている戦艦の修理を手を抜くような行為はいたしませんし、乗員の休息先の提供も用意させていただきます。」


 つまり見返りとしてこちらの情報が欲しいようだ。今の日本は未だ諜報機関が発達していないようだ。


「しばらく考えさせてください。全部とは言えませんが、答えられる事をまとめさせてください。」

「わかりました。では、ある場所へご案内します。」


 ついたのは特に何もない海軍の管理下にある料亭旅館だ。


「こちらです。」


 キンケードはここに何があるのか全くわからなかった。言われるがまま靴を脱ぎ、彰の後ろを歩く。


「こちらです。」


 彰が障子を開く。

 そこには、美味しそうに和風料理を頬張るよく見た顔がいた。


「お前は……!?」

「あ、久し振りだねケイト!」


 そこには、空母エセックス艦長のドナルド・ダンカンがいた。


「なんでお前がここに!?」

「なんでって、パナマが攻撃にあった時に日本軍に救助されて取り敢えず日本に連れて来られたんだよ。それにしてもこのサシミというのは美味しいね!」


 箸を慣れずともなんとか扱い、醤油につけた刺し身を頬張る。


「ん~~~~~~~! この冷たくて脂のある身! すごく美味しいよ!!」


 ダンカンの感想にキンケードはため息をつく。


「お知り合いですか?」

「アナポリス時代の同期で、仲が良かったんだ。」


 どうやら、この世界では2人は仲の良い関係らしい。ますますこの世界がわからん。


「ケイトも食べなよ! 美味しいよ!」


 ダンカン誘われ、キンケードも座り側のバスケットにあるフォークを取り出し刺し身を取り口に入れる。


「!?!?」


 生魚を食べる文化がもともと無いため、その味はどうか彰はハラハラしていたが、どうやら受けは良いようだ。その証拠にダンカンに箸の使い方を教わっている。フォークではなくちゃんと日本風に食べたいようだ。

 懸命に刺し身を掴むが滑り落ちる。しばらくそんな事を繰り返していたが、諦めてフォークで食べ始めた。


「それでは、自分もご一緒させていただきます。」


 彰も座り、食事を始めた。


「日本にはフォークで食べる習慣があるのか?」

「いえ、帝国ホテルから取り寄せました。ダンカン大佐は勿論箸を使ったことが無いので、最初はフォークで食べてましたよ。」

「これってほんと難しいよね~」


 ダンカンはそう言いながらもキンケードからしたら箸を巧みに扱う。手慣れたものだ。

 …………あれ?


「アキラ少将。英語はどこで?」

「あぁ、なんとか習得しました。元々英語はそこそこ話せたので、英語が話せる人に特訓してもらって完璧にしました。」

「そこそことは、君の親がアメリカやイギリス生まれなのか?」

「いえ、以来の日本では英語は授業の中に必ず入っています。必須科目ですよ。」


 なんと、未来の日本は高度な学力を有しているようだ。それを基礎に英語を完璧にするとは、たまげたものだ。

 それだけでも凄いのに、この時代を超越した彼なら、全てを知る彼なら、やってくれるかもしれない……。


「話そう。私達が……ニミッツ提督が何をしようとしているのか。」


 彰は箸を置き、キンケードに向き合った。


Fin

こんばんは!松ちゃんです!


やっとこの作品の本来の目的である方向に転換させることが出来ました。今後の展開に自分もドキドキしながら執筆してますw


さて、活動報告でもあった通り、次回から投稿周期が不定期になります。不便をお掛けすると思いますが、どうかお付き合いいただけると幸いです。

これからもどうぞよろしくお願いします!

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