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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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5章70話 奇跡の前兆

 3月8日。アッツ島から玉砕するとの短い連絡があった後完全に通信が途絶えた。

 キスカ島から救難信号が届き、いよいよ本格的な救助が必要となった。


 彰は五十六、近藤、そして新しく編成される第4水雷戦隊の指揮官となった木村と会議を行った。


「第4水雷戦隊の木村です。少々のお噂はかねがね耳にしてます。」


 木村晶福少将は159センチと女性指揮官の中では最小身長だ。

 彼女は水雷屋としての誇りを持ち、それに特化した戦術を組み実践で発揮する事を有望視されてい。

 つまり、彼女は水雷先頭部門では成績優秀で卒業しており、何より模擬戦闘では自艦隊は被害皆無で敵艦隊を全滅させるなどの実力だ。


「南方作戦指揮官の大山です。今回は木村少将の艦隊に救助をお願いいたします。」


 彰は木村と簡単な挨拶を済ませると席に座り、地図を中心に広げながら会議を始めた。


「今回米軍は2個師団を出してきているとの報告が入ってきてます。勿論推測ですが、少なくとも1個師団は出ています。」

「それとアリューシャン列島だけど、ここ最近は霧が濃くて500メートル見えて良いほうだろうという観測報告も入ってる。これを考慮すると足の早い水雷戦隊に任せようと判断した。」


 彰と近藤の簡単な説明を受けた木村は思案顔になる。何かを考えてるのだろうか?


「万が一ですが」


 木村が口を開いた。


「敵艦隊と遭遇した場合はどうすればよろしいですか?」


 確かに、上陸作戦という事は少なくとも戦艦は1隻出てきているだろう。もしかしたら新型かもしれないし、旧式戦艦かもしれない。


「極力見つからないようにしてくれとしか言えないが、接近する艦影を発見したら無理せず引き返してくれ。」


 彰が答える。


「戦闘は避けるべきですか?」

「無論だ。見つかってしまっては救助した兵員どころか君たちまで危なくなる。」


 たとえ強力な魚雷を装備している水雷戦隊でも戦艦相手では子どもと大人が喧嘩するようなものだ。勝負は目に見えている。


「では、視界が300メートル以下になるような濃霧のほうがよろしいでしょうか。こちらも発見が遅れますが、敵も同じ条件になるはずです。」

「北の気候を細かく観測しましょう。では以上です。」


 会議は短く終った。


    ―――――――――――――――――


 択捉島、単冠湾。

 キスカ島撤収作戦に参加する艦艇が集結していた。今回の作戦は参加する島風が鍵となるだろう。

 島風には三式超短波受信機(逆探)が搭載されており、米艦隊の発するレーダー波を捉えどこから発信されたかがわかる。

 これでどこに米艦隊がいるかがわかり、そのルートを避けて移動できる。

 今回参加するのは軽巡阿武隈、木曽、駆逐艦夕雲、風雲、秋雲、朝雲、薄雲、響、島風、初霜、若葉、長波、五月雨、輸送船栗田丸の合計14隻が参加している。


 彰の指導により、米艦隊が採用している北方迷彩への塗装、更に米艦と誤認するよう偽装煙突や煙突を塗装で減らすなどのカモフラージュ作業が行われた。


 観測部からの報告では、これまでに無いほどの濃霧が発生。隠密行動にはもってこいのタイミングであった。

 出撃は3月10日となった。




 キンケードは旗艦アイダホの艦橋にてキスカ島を睨んでいた。

 トーマス・キンケード少将率いる新設された第7艦隊はアイダホを旗艦に戦艦ニューメキシコ、ミシシッピ、ペンシルベニア、ネバダ、オクラホマ、コロラド、メリーランドの旧式戦艦を中心に構成されている。

 

 この第7艦隊は第3、5艦隊の補助艦隊として新設され、現太平洋戦線においては弱体化した空母戦力のパワーバランスのカバーをする事が目的とされた。アメリカはアイオワ級戦艦の建造を急がせ、史実では未成となった5番艦イリノイ、6番艦ケンタッキーの建造が決定されている。

 アイオワ級戦艦は空母艦隊の防空艦及び対大和型戦艦への対抗戦力として建造されたが、とにかく空母戦力を重視し始めたアメリカは対空火器を所狭しと並べている。


 そのためアイオワ級戦艦は33ノット(約60キロ)という高速と40.6センチ9門の火力、そして数えきれないほどの対空機銃でうめつくされる艦影となる。

 更に最新のレーダーも搭載するため、敵機の接近も許さないだろう。


 これらアイオワ級戦艦の登場まではサウスダコタ級戦艦の生き残りであるマサチューセッツとアラバマの戦艦と何とかして太平洋戦線を維持しなければならない。

 更にパナマ運河が日本軍機によって破壊されたことから、南アメリカ南端を通って来なければならないため戦力の充実は相当の時間を有するだろう。

 キンケードはぐるりと大きく取り囲んだキスカ島を睨みながら、思案顔に更けていた。


「本当に日本軍は来るのだろうか……」


 それは、出撃前に友梨佳……キングが放った言葉が引っかかっていたのだ。


 キングは出撃前にキンケードに


『奴らは必ず来る。その時は迷わず叩き潰せ。』


 と伝えている。

 キンケードは来ることはともかく、救助なら何故攻撃をしなければならないのかが引っかかっている。


「そんなの、必要ない気がするんだけどなぁ……」


 キンケードは一般の家から出た海軍将校で、ガダルカナル島沖の海戦で撃沈された戦艦インディアナ艦長のアリスとは幼馴染である。

 彼女はアリスの行方不明報告を受けた後彼女が姉として慕っていたリー中将に泣きながら文句を言ったほどショックを受けた。

 リーはキンケードにすまないとだけ言えなかったとか。


 そんなキンケードも、少なからず日本軍には恨みはあるが、救助に来る艦隊を私情で攻撃するほど落ちぶれてはいなかった。


「私はその命令を順守するべきなのか、それとも背くべきか……」


 キスカ島に向かいつつある木村少将の命運は、キンケードにかかっていると言っていいだろう。


Fin

最後まで有難うございます、松ちゃんです。


これからキスカ撤退編に入っていきますが、有名なセリフは今回は出ません。ごめんなさい。


実は、今日初めての本格的なサバイバルゲームに参加してきました。

なかなか面白くて、ドハマりしてしまいましたwまた行きたいものです。


ではまた来週もどうぞよろしくお願いします。

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