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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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4章67話 駆逐艦島風

 駆逐艦島風。

 艦隊決戦思想の下の水雷戦隊は魚雷を主兵装による肉薄攻撃を行なうために重雷装及び高速が求められ、それに結晶となるのが島風だ。


 最新の機関と船体の軽量化によって7万5000馬力を獲得。これは大和の2分の1で、扶桑型と同等の出力である。

 船体が台風にも負けないように頑丈に作られているとはいえ、濁流が相手では下手したら沈没しかねない。それを判断しての救助だった。


 島風は救助信号旗をマストに掲げると濁流のパナマ運河へと突入した。


 40ノットというスピードは濁流をものともせず、ぐんぐん上流へと登っていく。


「閘門の瓦礫に気をつけて!」


 艦長の広瀬弘中佐が指示をする。

 軽いためちょっとした残骸でも座礁する可能性があるが、吃水は約4メートルと低いため注意すれば問題無い。

 ミラフローレス閘門を通過し、ペドロ・ミゲル閘門へと向かっていった。



 エセックスでは濁流に飲み込まれまいと乗員が必死に横転したエセックスにしがみつき、無事な機銃座などに身を寄せようとしていた。


「艦橋は危険です。退避しましょう。」


 部下に手伝ってもらい、なんとか機銃座に辿り着いたダンカンは部下の救助を手伝った。


「この濁流ではしばらく救助は来ないでしょう。おとなしく待ちましょう。」

「そうだね……」


 ダンカンの気力はすでに無く、この世の絶望といった表情しか作れなかった。

 まさか日本軍がはるばる太平洋を渡ってパナマ運河を破壊するなど、誰が想像し予測出来ただろうか? そんな事は不可能だとたかをくくるのが普通だ。


「まさかやられるとは……」


 ダンカンは改めて日本軍の恐ろしさを知らされた。

 姉として慕っているニミッツからはさんざん聞かされていたがここまでとは……。

 部下のほとんどは艦内に取り残されている。助けたいが艦内は水没箇所や爆発の危険がある場所が多く存在し、救助するにも難しくなっている。


「助けが来たぞ!!」


 部下が叫んだ。

 まさかと思い、その方向を見ると確かに船が近づいてくる。


「友軍か……!?」


 はっきりと見たその船は友軍ではなかった。

 間違いなく友軍のではない主砲を搭載し、特徴的なレーダーが無い。


「なんてこった……あれはジャップの駆逐艦だぞ!!」


 部下がざわめき始めた。奴らはパナマやエセックスにも満足せず、我々を殺しに来たのか!?

 ダンカンは頭が真っ白になったが、どうも駆逐艦の動きがおかしい。エセックスの横たわった飛行甲板に接舷しようとしているのだ。


「艦長! 国際救助信号旗です!」

「救助信号旗!?」


 ダンカンが駆逐艦のマストを見ると、確かに救助信号旗がはためいていた。

 甲板には日本兵が殺到し、ロープをかけようと投げてくる。その内1本が甲板にかかった。


「艦長……」


 部下の問にダンカンは迷わなかった。


「とにかく、今は生きる事を考えるんだ。憎い相手だが、無駄な命までは取らないらしい。」


 ダンカンの指示のもと、退艦作業が行われた。


 搭乗員2530名中甲板にいるのはわずか292名。艦内に取り残されているのは1437名。それ以外は氾濫の際の爆発などで死亡した。

 ダンカンは50人を先に降ろした。ロープを上からしっかり固定し、重症な者から先に退艦させる。駆逐艦の甲板上では艦内に運ばれたり応急処置が施されたりしていた。

 やがて駆逐艦……島風は一度エセックスを離れた。


    ―――――――――――――――


 エセックス乗員を連れてきた島風は大鳳へと移した。今や艦隊の全てのマストに救助信号旗がはためき、金剛と榛名はパナマ湾まで進出してきた。

 流れの弱いところから内火艇やカッター(ボート)を進ませ、救助を行っていた。


「広瀬中佐を処罰できなくなりましたね。」


 松田がため息をしながら角田に話す。


「まぁ艦隊を無断で離れたのは後で処罰するけど、救助活動なら良いとしようか。」


 角田は笑いながら答えた。

 大鳳の飛行甲板上では重傷者の手当が行われており、軽傷者には握り飯が渡された。

 塩で味付けされており、米兵は喜んで食べる。中には酒まで持ってきている兵士までいるようだ。

 勿論、叱られてはいるが。


 この後も島風は活躍した。エセックスと大鳳を12往復し、合計で593名を大鳳まで運んだ。

 艦内にはまだ取り残されている者がおり、彼らをどうするかの議論が行われた。


「濁流は若干ですが弱くなりました。閘門の瓦礫を金剛と榛名の主砲で除去し、牽引しましょう。」


 と松田が提案したが、石井敬之大佐が反論した。


「しかし、金剛の吃水は9.6メートル、榛名は9.2メートルで、パナマ運河の閘門部分を通るにはリスクがある。あそこは最大294メートル以内の船しか通れないようになっている。つまり、閘門部分を最大に見積もっても290メートルで、そんな短距離を戦艦が16.5メートルも上がることは不可能です。」


 駆逐艦なら出来たが、戦艦が短距離で16メートルもの高さを上がるのは不可能といえよう。更に残骸もあるため、難しい。


「駆逐艦総出でやってみては?」

「それでは運河が狭すぎる。どうにも出来ない。」


 この後、2時間に渡って議論されたが結局救助は断念となった。


 ダンカンは大鳳の甲板からパナマ湾を眺めた。

 エセックスはそのまま放棄が決定された。まだ艦内には推定500人(それ以外はなんとか脱出し救助された)が残されており、ほとんどが艦底だろう。ダンカンは胸の前で十字をきった。


 大鳳は南太平洋を通り、日本へと帰った。


    ――――――――――――――――


 パナマ運河破壊は米海軍への大きな打撃となった。太平洋で増援を心待ちにしていたマッカーサーやスプルーアンス、ハルゼー等の前線指揮官はそのニュースを耳に入れるなりどん底へと叩き落とされた感覚だったという。

 彰は作戦の成功を受け入れたが、エセックスの乗員の話を聞くなり口数が減ったという。戦争というものを理解してきた彰にとって、やはりショックは大きいようだ。


 ダンカンは南雲達の下ヘ受け入れられ、いろいろな話を聞かれたという。ダンカンは話さなかったが、尋問の時以外は英語を習ったり、日本の文化を教えたりと友好的に接したととか。


 彰はある日、ダンカンに会った。


「南方方面作戦指揮官の彰です。エセックス艦長のダンカン大佐ですね?」


 彰はスマホの英語通訳アプリで挨拶をした。ダンカンはその事にひどく驚き、目を点にしながらも握手を交わす。


「これはスマートフォンという未来の携帯電話機です。私は、72年後の日本から来ました。」


 ダンカンは彰から簡単な説明を聞き、スマホに指を滑らせた。


「エセックス艦長のダンカンです。未来から来たというお話は信じられませんが、これを見る限り信じるしかありませんね。」

「今回お話をしたいのは、貴女の祖国の事についてです。」


 その後彰は、天皇にした説明と同じことをダンカンにした。写真を見せ、詳しい説明をおよそ1時間にわたって行った。


「わが祖国がこんな恐ろしい物を……信じられない……」

「祖国を愛する気持ちは我々も同じです。しかし、私の世界では1944年に特別攻撃と呼ばれた、自殺攻撃が行われます。私はそれを許せません。それと同じように、沢山の人を一瞬で殺害できる大量破壊兵器を許さないで欲しいのです。」


 ダンカンはしばらく黙った。祖国が大量破壊兵器を製造していることを知っているのは、私だけなのだろうか?


「貴方のお話は一旦は信じます。しかし、なぜそんな物を極秘に製造する必要があるのですか?」

「マンハッタン計画は国家級プロジェクトだからです。それに、それを使用する予定の敵国にもし知られては元も子も無いでしょう? それでも、高官なら噂、もしくは全貌を知らされている可能性はあります。ニミッツ提督やスプルーアンス提督など、合衆国軍を率いている人物なら可能性はあるでしょう。」

「お姉様も……」

「へ?」


 どういう意味だろうか?


「お姉様とは?」

「私はニミッツ提督をお姉様と呼んでお慕いしています。ニミッツ提督も、私を妹のように接してくれています。」


 彰はこの計画を阻止したい。その為には、誰か協力者が必要だ。そこで、ダンカンを説得しよう思ったが、思わぬ人物が出てきたものだ。

 ダンカンを説得すれば、もしかしたらニミッツも味方になってくれるかもしれない。


 日米合同の、協力体制が取れるかもしれないのだ。彰は少なからずその可能性を感じた瞬間だった。


4章、Fin

最後まで有難うございます。松ちゃんです。


先日、学校の方で先輩方の卒業式がありました。仲の良い先輩に挨拶がしたかったのですが、別件があったため出来ませんでした。悲しいです……


自分が卒業する時はなるべく後悔が無いようにしたいですね。


なんか日記みたいになっているけれど、気にしたら負けですw


ではまた来週!

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