4章66話 エセックス座礁
ペドロ・ミゲル閘門に突き刺さった3本の魚雷は奇妙な音を立てながら門を崩し始めた。
海抜16.5メートルからの逆流のエネルギーは凄まじいもので、たちまちエセックスを大きな津波と共に後ろへと押し始めた。
「総員に耐ショック姿勢! 座礁に備えろ!!」
ダンカンの指示は正しかったと言えよう。
海抜16.5メートルから9.5メートルへ流れる運河は濁流となり、エセックスの艦尾から損傷を与えた。
エセックスのスクリューはすぐに川底に接触し破損した。
水の流れに逆らえず、エセックスはスクリュー部分を基点に大きく左に曲がり始めた。
「座礁するぞぉ!!」
水兵が叫ぶ。
エセックスは左の岸に艦首を乗り上げると滑るように横向きで流れ始めた。
スクリューは既に回転軸と共に脱落したものもあり、そこへと沈んでゆく。エセックスは更に陸に乗り上げ、ほぼ半分が乗り上げてしまった。
「船体に亀裂! 大量の浸水が発生してます!!」
「乗組員に中甲板以上に上がるように命令しろ!飛行甲板は濁流に飲み込まれる可能性があるから絶対に出すな!」
「ボイラー室で火災発生!! 有毒ガスが発生してます!!」
緊迫する艦橋では各所の被害が報告される。
ダンカンは座礁以上にエンジンやボイラー、弾薬の爆発による損傷が怖かった。座礁なら多少雑でも浮かべれば何とかなるが、爆発で大きく損傷すれば使い物にならなくなっしまうのだ。
「機関員も退避させろ! ボイラー室には注水して火災による爆発を防げ!」
「弾薬庫から爆弾類の固定チェーンが破損! そこらにゴロゴロ転がっています!」
「通常は信管を抜いてるはずだ! そこまで……」
「1発だけ整備の都合上信管が取り付けられています!!」
「なんですって!?」
ダンカンの脳裏に爆発するエセックスが浮かび上がってきた。何故こんな時に……!
「なんとかして外せ!!」
ダンカンが指示を出した直後だった。
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大鳳では天山艦攻からの報告を受け、歓喜に満ちていた。
「よつしゃあ! 良くやったぜ!」
角田は報告を聞いて叫びを上げた。隣で松田は静かながらも微笑んでいた。
「作戦が成功したのですね。攻撃隊には何か功績を与えなくては。」
「取り敢えず帰ったら私の奢りで何か食いに行こう!」
角田が大いに笑い飛ばす。それにつられ、周りの職員も笑った。
そんな時だった。
「攻撃隊より報告。敵大型空母が爆発との事です。」
「ん? どういう事だ?」
「恐らく、偶然攻撃の際居合わせたのかと。」
「それは偶然だな。戦力が削れて良いのでは?」
「それが、ただの爆発ではないと……」
歓喜から一転、艦橋に再び静寂が訪れた。
その頃のエセックスでは爆弾の信管が作動し爆発、弾薬庫をまるまる包み込み吹き飛ばしたのだ。
弾薬庫はいくつかに別れているが、あまりの高エネルギーに隔壁が耐えられず、他の弾薬庫の爆弾も誘爆したのだ。
爆発は船体の横に大穴を空け更に浸水を招き、最悪な事にそのエネルギーはボイラー室にまで及んだ。
ボイラーの管が衝撃で破損。中から高熱の水蒸気が漏れ、高温により機関員が死亡した。さらに蒸気は漏れ続け、水上機爆発の危険性が高まった。
「換気を続けろ! 舵は!?」
「まだ効きます! ですが、こうも流れが早いと横転します!」
「バランスを保っている内はまだ大丈夫だ!」
しかしダンカンもエセックスが非常に危険な状況に立たされているのはわかっていた。しかし、退艦させようにも外は津波であり、もしボートを浮かべようなら犠牲が出る。
ダンカンにはどうすれば良いのかもはやわからなかった。ただイタズラに時間が過ぎ、決断を下せなかった。
そしてとうとう、水蒸気の膨張が限界に達した。
エセックスは突如として艦尾が大爆発。船体後部が粉々に砕け散り、燃料や他のボイラーや機関までも爆発を起こした。
ハリウッド映画でも再現できないほど、まさに噴火のようなエネルギーはエセックスの竜骨を粉々にへし折り、エセックスは真っ二つに千切れつつあった。
格納庫からは燃えたり損傷したりとしている艦載機がボロボロと溢れるように濁流へと落ち、乗員もボロボロと落ちていく。
エセックスは爆発による衝撃でバランスを失うとゆっくりと横転を始め、運河のど真ん中で完全に横転した。
それがもっと周辺への被害を広げる事となり、津波はエセックスを避けるように流れ始めた。
エセックス乗員は脱出不可能な場所に取り残されてしまったのだ。
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その報告を受けた角田は、自分のした事に後悔の念を覚え始めた。
「偶然居合わせたとはいえ、ここまで酷いとは……」
彰からも何度も話を聞いたが、想像よりも凄まじい事となってしまった。彰は津波のような氾濫が起こるだろうとは言っていたが……。
「敵国とはいえ救助がしたい。何とかならないだろうか?」
角田はエセックスの乗員を救助したいと考えた。しかし、相手は大型空母でさえ横転させた濁流。大鳳はもちろん、戦艦を入らせたら間違いなく同じ運命をたどるだろう。
「残念ですが、ほぼ不可能と言えるでしょう。」
松田が静かに告げる。松田も同じ気持ちではあるが、空母を横転させる自然の脅威には勝てない。それは、第4艦隊事件の戦訓がある日本海軍がよく知っているはずだ。
「このまま帰還しましょう。後味が悪いですが、このままとどまっては危険です。」
「そうだな。艦隊に連絡……」
そんな時だった。
「島風が艦隊を離脱します!」
「なんだって!?」
見張りの報告に角田が驚いた。
なんと、駆逐艦島風がパナマ湾へと突入していったのだ。
島風は自慢の40ノットで湾内を走り、パナマ運河へと突入した。
Fin
最後まで有難うございます、松ちゃんです。
これを書いている日、僕の学校は入試休みでした。非常に有り難いですね。平日に堂々と昼間家で執筆出来るんですから(ゲス顔
課題も出てるんですが、僕にとっては知らない子ですね。
今回と次回はかなり滅茶苦茶な内容になる可能性が大です。勉強中とは言え、ここまで酷いとは……(小並感
かなり強引に話を進めてしまいますが、ご都合云々と言う事でお願いしますm(_ _;)m
ではまた来週も読んでいただけると嬉しいです。ではまた!




