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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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4章65話 鋼鉄の協奏曲

 17日午前8時。大鳳の飛行甲板上にはパナマ爆撃部隊が並べられていた。


 出撃するのは九七艦攻の後継機の天山艦攻6機だ。本当は本格的な空襲をしようかと考えたが、大部隊を出すと反撃に合う可能性が高くなる。そのため少数精鋭で攻撃しようと踏んだのだ。


 発艦は5分後の8時5分だ。


 天山艦攻は史実では今年(1943年)の11月から量産される予定だったが、彰の働きかけ(主にスマホで)で早くなったのだ。


天山艦攻のスペックは、


全幅 14.894m(主翼折畳時7.1935m)

全長 10.865m

全高 3.800m

自重 3,223kg

正規全備重量 5,200kg

過荷重重量 5,650kg

発動機 護一一型(離昇1,870馬力)

最高速度 464.9km/h(高度4,800m)

実用上昇限度 8,650m

航続距離 1,460km(正規) 3,447km(過過重)

爆装 60kg6発、250kg2発、500kgまたは800kg爆弾1発

雷装 九一式航空魚雷1発

武装 7.7mm旋回機銃2挺

乗員 3名


 の通りだ。

 天山艦攻は片道1700キロは飛べる。うかつに近づ けない艦隊にとってその足の長さはありがたいものだった。

 天山艦攻は勇ましく甲板を滑走するとと大空へと飛び立った。




 エセックス艦長のダンカン大佐は日本機の接近に気づかず、のんびりとパナマを移動中だった。残すは最後の閘門で、それを抜けると後は太平洋へと一直線だ。


「曇ってるな~。」


 パナマは厚い雲に覆われており、小さい雨粒がぽつぽつと甲板をゆっくり濡らしている。


「寒い……姉さん風邪引いてないかな。」


 ダンカンはニミッツの心配をしていた……このあと何が起こるとも知らずに。


   ―――――――――――――――――


 一方の天山艦攻隊は着々とパナマ運河へと迫っていた。現在高度は6000メートル。丁度厚い雲の中に隠れており、見つかる心配はなさそうだ。


 問題はパナマ周辺の防空設備だが、レーダーによって発見されたら非常に厄介だ。隠密作戦が無駄になってしまう。

 もし発見されたら強襲という形になる。もっとも犠牲は出るだろうが、なんとしても遂行するという意気込みをパイロット達は持っていた。


「あと10分で視界に入る。同時に高度を一気に下げるぞ!」


 攻撃隊隊長が指示を出す。

 レーダーとは高度が高いほど探知がしやすくなり、逆に高すぎても探知は不可能。低くても探知は不可能になる。


 パナマへと続く海は穏やかで、風もそこまで強くない。雲は厚いが、それはかえって好都合だ。


「見えたぞ! 水道の入り口だ!」


 よく見ると三角州のように大陸の中へ吸い込まれるように海が形どっている。間違いなくパナマ運河の入り口、パナマ湾だ。


 この先にはバルボアという都市があり、それを過ぎると第2閘門のミラフローレス閘門(海抜16.5メートル)がある。

 ミラフローレス湖を抜けると節水槽の太平洋閘門、それを抜けると第1閘門のペドロ・ミゲル閘門(海抜9.5メートル)だ。

 現在エセックスはこのペドロ・ミゲル閘門にいる。ミラフローレス湖は海抜16.5メートルなので、注水して上昇するのだ。


 ちなみに、一番高いのは大西洋側のガトゥン湖で、海抜26メートル。第3閘門のガツン閘門では大西洋の0メートルから一気に26メートルまで上昇するのだ。

 実際にパナマ運河は観光スポットで、「船が山を超える」とまで言われる。


 天山艦攻隊は高度を一気に20メートルまで下げた。発見される可能性をなくし、更に雷撃高度では最適とされる高度にすぐ移れるためだ。


 天山艦攻は最高速度に近い450キロで海面を這うように飛行する。


「攻撃態勢! いつでもいけるようにしておけ!」


 隊長が指示を飛ばす。

 天山艦攻は2手に別れると1隊は手前のミラフローレス閘門、もう1隊はその先のペドロ・ミゲル閘門へと向かっていった。


    ―――――――――――――――


 エセックスは注水作業中で、海抜12.7メートル地点だった。


「流石に重いかな……?」


 ダンカンは呟いた。

 エセックスは基準排水量2万7100トン。しかし現在は装備を満載しているので、排水量は3万6380トンになっている。翔鶴型よりも少し重いくらいだ。

 水はそんな重さを関係なくゆっくりと確実にエセックスを海抜16.5メートルへと押し上げようとする。水の力は凄い。


「コーヒーでも飲もうかな。」


 そんな時だった。


「艦長。パナマ防空隊より入電です。未確認機3機がこちらに向かってきています。」

「未確認機? 味方の哨戒機じゃないの?」

「しかし、今日のフライトは予定にないと……。」


 ダンカンは妙だなと感じた。もしかしたら、突発的な訓練かもしれない。


「一応警戒はしておいて。」

「わかりました。」


 ダンカンは胸のざわつきを押さえながらコーヒーを入れに行った。



 ミラフローレス閘門に向かった天山艦攻3機は見事妨害に合わず辿り着いた。


「雷撃態勢をとれ! 突撃するぞ!」


 天山艦攻は高度を海面すれすれの8メートルにとった。水道にアメリカ橋とよばれる橋がかかっており、その橋の上では一般人が見上げている。


 相当無警戒だな……


 副隊長は不審に思いながらも目の前の閘門に狙いを定めた。流石に敵だと気づいたのか、対空砲火が撃ち上げられた。


 すぐ横を弾丸がかすめ、ガン!ガン!と音を鳴らすが、不思議とあたりはしなかった。


「てっ!」


 魚雷発射レバーをぐいっと引く。同時に機体がフワッと軽くなり、すぐさま上昇離脱にかかった。僚機も魚雷発射し、離脱にかかっている。


 振り向いてしばらくすると、閘門に水柱がたった。水柱はやがて濁流へと変わり、閘門が決壊した。

 海抜16.5メートルの高さから運河の水がドバァと流れ出し、まさに洪水のごとくあたりを流れ始めた。

 ギギギギと閘門が崩れ、橋は破壊される。あたりの土地も濁流に飲み込まれ、施設が水没していくのが見えた。


 鋼鉄の門が崩れ、これまで穏やかだった運河が暴れ始めたのだ。




 ダンカンの元にはミラフローレス閘門が攻撃によって決壊、大損害が出ているとの報告が入った。


「攻撃にあっただと!? 潜水艦か!?」

「航空機のようです!」

「そんな馬鹿な! 日本軍の空母がいるのか!?」

「水上レーダーには周囲400マイル(およそ643キロ)には艦影なしとの事です。」


 米海軍の現在の主力艦上爆撃機はSBDドーントレス。これの航続距離は1243キロ(773マイル)で、日本軍の彗星艦爆は2196キロもある。(ただし過荷重)


 日本軍の攻撃特徴はこの足の長さを利用したアウトレンジ戦法で、大鳳は見事やってのけたのだ。

 しかもパナマに配備されていた水上レーダーは旧式で、パナマから1600キロも離れた大鳳を見つける事はできない。


「話には聞いていたが……そんなに足が長いのか……!?」


 ダンカンは驚愕を覚えた。贔屓するわけではないが、想像以上の航続距離の長さは桁違いだ。


「こちらにも3機接近中! 視界に捉えました!!」

「対空戦闘開始!! なんとしてでも止めろ!」


 ダンカンは必死に命令を出す。同時に、米海軍が誇る数十門もの対空火器の弾幕に天山艦攻3機は出迎えられた。

 恐ろしく濃密で、付け入る隙もないが実は攻略法がひとつある。


 空母に限らず、戦艦も駆逐艦も自艦より低い高度を飛ばれると射線がずれてしまい、有効な弾幕がはれないのだ。彰はそれを知っており、搭乗員に徹底的に教えこんだ。

 訓練も行い、結果としてエセックスの弾幕には天山艦攻3機はかすりもしなかった。


 ゆうゆうとペドロ・ミゲル閘門に近づくと魚雷を発射、そのまま離脱していった。

 機銃群は後を追うように撃ちまくるが、恐ろしく早いのかなかなかあたらない。


「あれは……新型機か!? ケイトとは形が違う……!」


 ケイトとは米軍側コードネームで、中島製の九七艦攻の事だ。ちなみに三菱製はメイベルと呼ばれている。機首が長くなり、胴体も太くなっている。そして、主翼はやや小さく見える。


 どれも九七艦攻からの変更や改良から出た天山艦攻の特徴だ。


「My god!」


 ダンカンが叫ぶと同時に、鋼鉄の門に魚雷が突き刺さった。


Fin

最後まで有難うございます。松ちゃんです。


今回は少し改行を意識してみましたが、どうでしょうか?もし前の方が良かったら戻しますが、こっちのほうが読みやすかったらこちらに今後直していきますのでよろしくお願いします。


あと、異常に短かった御前会議後編の加筆修正版を火曜日昼3時に投稿させて頂きます。お手数ですが、そちらもチェックして頂けると嬉しく存じます。これからもよろしくお願いします。


最後に。


紅茶が最近美味しい。

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