4章62話 御前会議 後
天皇陛下がシャベッタァァァァ!!!
内心驚きながらも、平静を保ちながら返答する。
「出来る事とは?」
「朕は物事を深く考えるのが好きでな。そなたの話し方から察するに何か大きなことを企んでいるように思える。だがそなたは一人の海軍将校、勝手な事は出来ないだろう。」
つまり後ろ盾になってくれるということだ。自分としては非常に有り難い申し出だ。陸軍のように好き勝手やるつもりはないから、勿論後ろ盾になってもらうつもりだ。
「かしこまりました。ですが、私が説明申し上げる事は海軍関係者にもまだ話す事は出来ません。なので、この場にいる全員を退室するよう促してもらえますか?」
牟田口が反論しようと身を乗り出したが、天皇陛下が手を上げて制す。
「聞こえたであろう。皆の者、退室し給え。」
「しかし陛下……!」
「退室し給え。」
牟田口の反論に口調を変えて威圧するように言い放つ。牟田口は彰を一睨みしてから部屋を出た。
「彰……」
「ごめんな。でも、今はまだ話すことは出来ない。時が来たら必ず話すから、先に家で待っていてくれ。」
「わかった。」
南雲は頷くと部屋を出ていく。部屋には天皇陛下と彰の2人だけが残っている。
「それで、話とは?」
「まずはこれをご覧下さい。」
彰はポケットからスマホを取り出す。
「単刀直入に言わせて頂きます。私は未来から来ました。このスマートフォンと言う携帯端末機がその証拠になります。実際に使用されてみますか?」
興味津々な天皇にスマートフォンの使い方を簡単に説明しながら実際に操作させる。写真や文字の打ち方等、20分程使っていた。
「未来はこんなにも技術が進歩し、国民の生活も豊かになっている……この国は、滅んではいないのだな……」
天皇も一人の日本人であり、日本の象徴として敬われている存在。日本の未来を心配する気持ちも凄く彰には共感できた。
「私には妹がいましたが、病気で他界しました。まだ13歳です……ですが、彼女からこの世界で連絡がありました。この端末機に対応した電波が無いこの世界で何故連絡が出来たのかわかりませんが、彼女は、妹は米海軍の長官であるアーネスト・キングという人物として転生しています。」
立場は五十六と同じ事を説明すると天皇もまた理解する。
「彼女は病気で動けなかった前世で、その鬱憤を晴らすかのように日本本土上陸作戦を必ず敢行し、日本を滅ぼす気です。その決め手となるのはこの爆弾です。」
彰はリトルボーイと名付られた爆弾と、投下された時に撮影されたキノコ雲の2枚の写真を見せた。
「この原子爆弾という爆弾は1発で広島を壊滅に追い込み、直径5キロ圏内を焼け野原にしました。この時点での死傷者は私の知っている数値ではおよそ7万人に及びます。」
「なっ!?」
たった1発で7万人。以前、観艦式の模擬戦闘演習で見た時の爆弾を遥かに上回る威力である事が容易に想像できた。
「彼女もまた、私と同じように未来の人間です。よって、この原子爆弾を史実以上の威力にする事など簡単に出来るという事になります。この端末機は、様々な情報が載っておりますが、電波が無いので使用出来ません。しかし、この写真のようにもしも保存がされていたら、威力を増大させる為の技術も無いとは言い切れません。」
天皇が脱力するのが見て取れる。瞳は輝きを失い、虚ろになっている。
彰は構わず続けた。
「これを阻止する為に、米本土空爆作戦を計画しています。まだ計画段階ですが、私が案を提出し、設計段階に入っている空母を使えば可能ではあります。」
「空母を使うのか。参考に、どのような空母なのか教えてくれるか?」
「全長333メートル級、幅50メートル級です。」
「大きい……大和よりも大きいな。しかし、それを造る場所はあるのか?」
彰はやっと本題に入れると、少しほっとした。
「この時代にはそんな巨大な造船施設はありません。しかし、大和と武蔵を建造したドックがあります。そこを更に拡張工事によって広げ、そこを利用します。信濃が完成すればそこも広げ、空母の造船に取り掛からせます。よって陛下にはこの拡張工事の開始命令を出して頂きたいのです。」
「なるほど……わかった。陸軍には重要な戦力を沈められたそうだから、そのくらい受け入れよう。他にもあるのか?」
彰は事前に調べていた事を含めて、持参した鞄から地図と書類を取り出した。
「まず鉄ですが、私の記憶には無い鉄鉱が満州地区に沢山あります。これは幸運でした。ここから取れる鉄の6割程をこの暁天型空母の材料に回す命令も出して頂きます。」
そう言って彰は暁天型空母の大まかなスペックと完成予定図が書かれた書類を渡す。
「更に、684万バレルにまで少なくなった石油備蓄量を増加させる為に、未来の中国では大慶と名付られるこの地にて採油作業を行わせる命令も出して頂きます。」
地図で大慶となる地点の大まかな場所をペンで丸く囲む。
「石油もか。して、どのくらいの量があるのだ?」
「はい。未来の世界では最大採油量はおよそ5600万バレル。総埋蔵量は資料によって数値が異なりますが、私の知っている数値は凡そ160億バレル。リットルに直すと2兆5437億9671万8848リットルもあります。これだけの油があれば日本は暫くは全力を出しても問題はありません。」
日本の採油技術はわからなかったが、少なくとも不可能なことではない。彰は少し身体を震わせながらも説明を終える。
「そこまで考えての事か。わかった、すく命令を出そう。」
「有難うございます。私からの意見具申は以上です。」
彰は頭を下げると地図をしまう。
「して大山よ。」
「はっ。」
天皇に呼ばれ作業を止める彰は天皇に身体を向ける。
「教えて貰えないだろうか……日本は、負けたのか? 勝ったのか?」
彰は少し迷ったが、すぐに答えた。
「1945年8月15日、日本は連合国に対し無条件降伏しました。日本の負けです。」
「そうか、負けたのか……」
気まずい空気が流れる。天皇と彰の会話は、これで終わった。
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皇居から南雲宅に戻った彰は出迎えられる。
「お帰り! お疲れ様。」
「ただいま。中々疲れたよ。」
彰は苦笑しながら居間へと入る。
「何を話してたの?」
「まずはこれだ。」
彰は持って来た書類を机の上に並べる。
「これは未来の世界では大慶と名付られる地域の周辺地図だ。ここには前にも話した通り莫大な原油が眠っている。」
「確かに前話してたね。それがどうしたの?」
「来月から採掘作業を開始する事になったんだ。天皇陛下の命令って事でね。」
南雲が度肝を抜かれたように驚く。
「それと、特殊師団も許可してもらった。なんだか独裁者のような気分だけど、そんな事はしないよ。原子爆弾を何とかするための手段だ。こんな事で浮かれてる場合じゃない。」
「そうだね。取り敢えず、目の前のパナマ運河奇襲作戦を成功させなきゃ……」
南雲もまた、真剣な表情になる。
この作戦が上手く行けば、しばらく米軍の動きは鈍くなる。その間に戦力を整えるのが目的だ。
大本営。
情報一課と呼ばれる部署は、主にアメリカの情報を収集する部署だ。
そんな部署に、ある情報が入る。
「なんだこれは……エセックス?」
担当の男はメガネを外す。よく見てみると、パナマとエセックスという文字がいくつか並んでいるのだ。
「新型艦か? だとしたら、あの作戦とかぶるな……」
男はにやりと微笑むとすぐにその書類を上司の元へと持って行った。
fin
お久しぶりです。松ちゃんです。
携帯が3週間程前から調子が悪く、2週間程メンテナンスに出していた為投稿が出来ませんでした。申し訳ありません。
というか、62話が馬鹿みたいに短いです。これが最後の書き貯めしたやつですが、これを書いていた時は相当内容に困った挙句このように短くなってしまったのを思い出しました。
ほんとに申し訳無いです。
次話からはちゃんと書いていきますので、お許し頂ければと思います。
さて、話はいよいよパナマ運河奇襲作戦に差し掛かってまいりました。攻撃艦隊旗艦に選ばれた最新鋭空母大鳳がどのような活躍をしてくれるのか楽しみです。←お前が書くんだがな。
ではまた来週!




